標準的な姿勢は、神話である
📖 文献情報 と 抄録和訳
標準的な姿勢は神話である:スコーピングレビュー
[背景・目的] Kendallのマニュアルに記載されている標準姿勢は、姿勢評価に一般的に使用されている。しかし、その使用を裏付ける文献的参照は示されていない。目的:その姿勢の設計に関するオリジナルのソースと手順を特定し、そのテーマに関する現在の文献と比較すること。
[方法] PRISMA Extension for Scoping Reviewsの推奨事項に従い、「standing posture(立位)」、「plum line(垂直線)」、「gravity line(重力線)」という用語を用いてPubMedとScopusを検索した。病理学のない成人の姿勢について言及した英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語の文献が対象となった。
[結果] 最終的な分析には、6つの記事と3冊の本が含まれた。筋肉のサポートなしに静的な二足歩行を維持するという非現実的な目的で実施された19世紀初頭の研究では、解剖学上のいくつかの誤解を含みながら、ケンドールのマニュアルで説明されているのと同じ姿勢が特定された。
■ Giovanni Alfonso Borelliの神話
■ Kendall マニュアル:標準的な姿勢
■ Kendallの標準的な姿勢への疑問を呈する研究
・Kendallのマニュアルに記述されている「理想的なアラインメント」は、実際の重心線、快適な姿勢、年齢、性別、人種による自然な姿勢の補正とは一致しなかった。
・Kendallの標準姿勢への疑問:表からは、標準姿勢の使用が複数の研究で批判されていることがわかる。特に、「重力線」や「理想的な姿勢」が、加齢や身体的補償によって実際には変化することが示されている。
・姿勢異常の高い発生率:Griegel-Morrisらの研究では、多くの健康な成人で前方頭位や肩前方位といった姿勢異常が確認されており、これが「異常」とされる基準そのものに疑問を呈している。
[結論] 姿勢の欠陥を特定するためにこの基準を用いることは、現在の証拠では裏付けられておらず、特に高齢者では多数の偽陽性を生じる可能性があります。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
標準値をつくることは、ある意味正解をつくることに近い。
それは、時に目標値にもなり、時に異常値の定義ともなりうる。
そして、たとえば正常範囲を超えた部分を異常値した場合、『あなたは異常姿勢です』というレッテルを貼られることになるのだ。
今回の抄読研究は、姿勢において『標準的な姿勢とされているものが、本当にそうなのですか?』という部分を検証した。
その結果としては、多くの研究において、健常者の姿勢が現在標準的な姿勢とされているKendallマニュアルの定義からズレていることを示し、特に加齢によってそのズレは大きくなった。
これは、この人々が異常なのだろうか、それともその人々を異常とする標準がズレているのだろうか・・・?
ここは、様々なディスカッションが存在しうる領域のように思われる、ますます勉強していきたい。
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