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スターリングの法則。拡張解釈可能性の検討

📖 文献情報 と 抄録和訳

心臓の効率とスターリングの法則

📕Han, June‐Chiew, et al. "Cardiac efficiency and starling's law of the heart." The Journal of Physiology (2022). https://doi.org/10.1113/JP283632
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🔑 Key points
🔹Ernest Starlingは、1914年に心筋の力学的特性として、心筋の長さに応じて収縮力が増加することを説明する「心臓の法則」を定式化した。
🔹その後、1927年に、心臓の酸素消費量も筋繊維の長さの関数であることを示したが、心臓の効率が同じ依存性を持つかどうかについては不明なままであった。
🔹それから1世紀が経ち、心臓の効率に影響を与える要因について、前負荷と後負荷の異なる効果も含めて、この分野では理解が深まってきた。このことは、心拍効率の長さ依存性という難問を解明する好機となった。
🔹我々は、メカノエナジーの枠組みを用いて生理学的に実現可能な負荷条件をシミュレートすることにより、心拍効率が初期の筋長とともに増加することを見いだした。
🔹この発見は、より広範な生理学的重要性を持ち、スターリングの心臓の法則の根底にある細胞基盤は、エネルギー的に有利なプロセスであり、効率の増加をもたらすということである。

[背景・目的] スターリングによる「心臓の法則」の定式化では、「収縮の(力学的)エネルギーは、どのように測定されようと、筋繊維の長さの関数である」と述べている。スターリングは後に、「単離された心臓の酸素消費量は...その拡張期容積によって、したがってその筋繊維の初期の長さによって決定される」とも述べている。この表現が、Starlingの心臓の法則を拡張し、収縮の効率を考慮する動機となった。

[方法] 本研究では、前負荷と後負荷の範囲で力-長さループを行うラット単心室海綿体の熱出力を調べることにより、力学的効率とクロスブリッジ効率の両方を評価した。前負荷と後負荷を組み合わせることで、収縮末期ゾーンと熱力ゾーンのモデル化フレームワークを用いて、生理学的に実現可能な負荷条件を再現し、症例のシミュレーションを行うことができた。

[結果] 検討したすべてのケースで、仕事量とエントロピー変化の両方が、初期の筋長とともに増加することがわかった。したがって、機械的効率の向上をもたらすには、前者が後者よりも増加するしかない。一方、クロスブリッジ効率は、筋短縮の程度が前荷重によって大きく変化する場合、初期筋長とともに増加した。このことから、心筋収縮の効率は、初期筋長および前負荷の増加に伴って増加することがわかった。

[結論] これらの結果の意味するところは、Starlingの心臓の法則の細胞的基礎となる長さ依存の活性化機構は、心筋収縮の効率を高めるエネルギー的に有利な過程であるということである。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

正直、研究方法については、難解な部分もありよくわかっていない。
だが、Starlingの法則についての拡大解釈が可能であることが証明されたことは理解できた。

「Starlingの法則とは、心筋の初期筋長が大きいほど心拍効率が良くなることですよね?」

と言われたときに、多分僕は「はい。」と答えていた。
だが、この論文を読んで、Starlingの法則が単一の心筋についての「長さ-聴力」に限定された理論であって、それが心臓全体の機能や心筋の収縮効率に影響するかは別物であることを知った。
その部分は、オプションとしての拡大解釈可能性を検討した、たくさんの文献が支えているらしい。

言葉の定義とは、重要だ。
Starlingの法則と聞いて、ある人は「単一の心筋の「長さ-聴力」ことだ」と妥当な解釈をし、ある人は「心臓全体のことだ」と拡大解釈していたとしたら、たとえ同じ話をしていたとしても、その後の話が二人にとってまったく路線の異なる会話になってしまう。
特に、学術体系としての医学界において、この誤解釈は重大だ。
なぜなら、それらの知識はつねに「文字」で伝えられるから。
その文字について、異なる解釈が存在してしまったら、その言葉からの構成物である論文が、1つの価値を提供しなくなってしまう。

今回、スターリングの法則について学ぶとともに、改めて言葉の定義について、敏感になろうと思った。

正しい言葉とほぼ正しい言葉の間には、稲妻と蛍火ほどの違いがある
マーク・トウェイン

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