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ボール回転数を上げる投球動作ストラテジーとは?

📖 文献情報 と 抄録和訳

特異値分解に基づく野球投球における上肢によるボール回転数の制御機構について

📕Shibata, Shohei, et al. "Control Mechanism of Ball Spin Rate by the Upper Limb in Baseball Pitching Based on Singular Value Decomposition." Journal of Biomechanics (2023): 111603. https://doi.org/10.1016/j.jbiomech.2023.111603
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※ Connected Papersとは? >>> note.

✅ 前提知識:ボール回転数と投球動作の “ノビ” について
・体感では、「思ったより伸びてくる、球速以上に速く感じる」とか「浮き上がってるように見える」という感じでしょうか。
・最近数字での評価も相まって、「回転数が多い」ボールなんて言われることが多いように感じます。
※回転数のみがフィーチャーされることが多いのですが、回転量と同じくらい大事な要素として「回転軸」があります。

[背景・目的] 本研究は、速球投球時のボール回転数が相乗的な関節トルクによって制御されるメカニズムを検討することを目的とする。

[方法] 参加者は野球選手7名(6名大学投手、1名独立リーグプロ)である。指、手首、肘、肩の運動量とキネティクスを逆動力学法を用いて算出した。関節トルクの相乗関係は、特異値分解を用いて計算した。また,各参加者の関節トルクの空間パターンの類似性をコサイン類似度を用いて評価した.

[結果]
■ 3つのトルク制御戦略
(1) 2人の投手は肩内旋トルクを主体とする相乗的なトルク制御
(2) 2人の投手は肘伸展トルクを主体とする相乗的なトルク制御
(3) 3人の投手は肩水平内転トルクを主体とする相乗的なトルク制御

■ トルク制御戦略とボール回転数
・特に、球速に対するスピンレート(spin rate relative to the ball velocity, SPV)が高い投手では、肩内旋型のトルクコントロールが行われていた。
・一方、SPVが低い投手は、肩水平内転型のトルク制御が行われていた。

📕図の引用論文
Kaizu et al. JPTS 30.2 (2018): 223-230. >>> doi.

[結論] SPVが高い投手は、ボール回転数を上げるために、階層的な制御により、ボール回転数と同じ方向の肩内旋トルクを実行していると考えられる。これらの結果から、SPVが高い投手と低い投手では、異なる運動パターンを示すことが示唆された。投手やコーチは、速球を投げる際に、指だけでなく、肩関節にも注目する必要がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

火の玉ストレート。
球速には表れない投手の実力。
思ったよりも手元で伸びてくるストレート。

そこには、野球のロマンがある。
その実態が分かりきっていないところにも。
そして、これまでのボール回転数に関する研究は『ミクロ』だったと言わざるを得ない。
つまり、ボール回転数とボール回転軸、ノビやキレとの関連といったボール自体で終止する研究。
それでは、直接的に投球動作をどうすればいいのかが不明である。
身体の使い方との関連があったとして、ボール回転数と指の摩擦、リリース位置といった、ややコントロールしにくい部分との関連の調査。

今回の研究は、方法はかなり難解(に見える)だが、結論としては分かりやすい投球動作戦略とボール回転数との関連を明らかにした。
肩の内外旋を動員することが、ボール回転数増大に貢献するかもしれない。
つまり、手投げ(肘伸展優位)→全身を用いた投球動作へ。
さらに、肩を動員するといっても水平内転優位ではなく、内旋優位に。
方法は、これから具体的に考えていきたい。

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