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大腿骨近位部骨折。解剖学, 分類, 治療法のレビュー


📖 文献情報 と 抄録和訳

大腿骨近位部骨折における骨接合術、半関節形成術、人工股関節全置換術:知っておくべきこと

📕Ridha, Mohamed, et al. "Osteosynthesis, hemiarthroplasty, total hip arthroplasty in hip fractures: All I need to know." Injury 55.3 (2024): 111377. https://doi.org/10.1016/j.injury.2024.111377
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[レビュー概要] 本総説では、大腿骨近位部骨折に関する現代文献を、疫学、分類システム、治療選択肢に焦点を当て、特にTHAによる転帰に重点を置いて、叙述的に統合する。

■ 大腿骨近位部, 部位の定義
・大腿骨近位部骨折は、大腿骨軸に沿った解剖学的位置に基づいて分類される。
・最初の診断段階は、骨折部位を正確に特定するために極めて重要であり、その後、最も適切な治療法の選択につながる。
・議論を容易にするため、これらの骨折は大腿骨頭・頚部を包含する関節内骨折と、大腿骨転子部骨折、および転子下骨折を含む関節外骨折に大別することができる。

■ ガ−デン(garden)分類
・1961年にイギリスの整形外科医Robert Gardenによって導入されたGarden分類システムは、大腿骨頸部骨折を分類するための既存の枠組みを基礎としている。
・Gardenは、術後12ヵ月間にわたり80人の患者を対象とした縦断的追跡研究を行った(📕Garden, 1961 >>> doi.)。
・興味深いことに、Garden氏の観察によると、Type IとType IIに分類される骨折の癒合率は100%であった。
・逆に、Type IIIとType IVの骨折は、それぞれ93%と57%という低い癒合率を示した。
・この癒合率の乖離は、各骨折タイプに関連する血管障害の程度が異なること、特にType IV骨折で観察される有意な血液供給障害に起因すると思われる(📕Kazley, 2018 >>> doi.)。

■ Pauwels分類
・Pauwels氏は、骨折の傾斜角度に注目し、角度によって30°未満(タイプI)、30~50°(タイプII)、50°以上(タイプIII)の3つのタイプに分類している。
・Pauwelsの分類のⅡ,Ⅲになると圧迫力が減少し剪断力が増加するため,骨頭壊死が起こりやすい.
・Pauwelsシステムの観察者間一致率は約55%と推定されており、その信頼性と限界に関する懸念が存在する。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

名称が与えられて初めて、それが実際に存在していることに人間は気づくものなのだ。
そうして、世界の新しい一部分が誕生してくる。

ニーチェ 『悦ばしき知識』

名前とは、不思議なものだ。
名付けのプロセスは、「その人が、そのものが、その経験が、その現象(中身)」があって、とある「名前」がつけられる。
その順番は、逆ではあり得ない。 #そうですよね
だが、いったん名前がつけられると、堀の中を水がどちらにも移動できるように、「中身」と「名前」が双方向の関係性になってしまうのだ。

そして、そこにこそ!、名付けの重要性がある。
一旦明確に「中身」を囲ってしまえば、ファイナルファンタジーの召喚獣のように、その「名前」が、その存在・中身を一瞬で、呼び起こしてくれるようになる。
それによって、ある人が血の滲むような努力の末、数年かけて名づけた中身を、誰でも一瞬で召喚できるようになるし、今までぼやっと通り過ぎていたものが、一個の明瞭な存在となって、そこから新しいストーリーが生まれたりする。

今回の抄読論文は、大腿骨近位部骨折に関連する言葉の定義や分類を知ることに大いに役立つ。
例えば僕の場合、横骨折、斜骨折など骨折線の入り方に関して、対応する分類方法がぼんやりしていた。
そこに『Pauwels分類』との出会いがあった。
今後、骨折線の入り方の角度について考えるとき、Pauwels分類がハイライトされるだろうし、逆にPauwels分類を明確に知ったからこそ、大腿骨近位部骨折の画像を見たときに、骨折線の入り方について確認するようになるだろう。
中身に対応する名前を明確に知り、名前から中身を召喚できるようになりたい。

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