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3651人の野球選手を募り、離断性骨軟骨炎のリスクが明らかに

📖 文献情報 と 抄録和訳

身体機能、上腕骨離断性骨軟骨炎のリスクファクターとなるか否か?

📕Sakata, Jun, et al. "Physical Function, to Be or Not to Be a Risk Factor for Osteochondritis Dissecans of the Humeral Capitellum?." JSES International (2022). https://doi.org/10.1016/j.jseint.2022.07.001
🔗 DOIGoogle Scholar 🌲MORE⤴ >>> Not applicable

✅ 前提知識:離断性骨軟骨炎とは?
- 外側型野球肘である離断性骨軟骨炎とは、軟骨やその下の骨が壊死し、軟骨及び軟骨下骨が剥がれる(遊離体・関節ネズミ)病気。
- この離断性骨軟骨炎が上腕骨小頭部に起こるものを上腕骨小頭離断性骨軟骨炎と呼ぶ。
- 野球選手をはじめその他のスポーツを行う選手にも起こる。
- 発生率は2~3%といわれている。
🌍 参考サイト >>> site.

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[背景・目的] 若年野球選手における上腕骨離断性骨軟骨炎(Osteochondritis dissecans, OCD)の身体的危険因子は、十分に解明されていない。我々は、8~14歳の野球選手における上腕骨被膜離断症の危険因子を明らかにすることを目的とした。

[方法] 2018年12月から2019年12月にかけて、8つの地域野球リーグから若い野球選手を募集した。超音波検査と身体評価を研究期間前と研究期間終了時に実施した。肩の水平内転(horizontal adduction, HA)、股関節内旋(internal rotation, IR)、胸椎後彎角の両側受動可動域(range of motion, ROM)を測定した。OCDの発生を調べるために1年間のフォローアップを予定した。OCDを発症した選手をOCD群,OCDを発症せず,1年間肘の痛みがなかった選手を非発症群に分類し,OCDを発症した選手を非発症群,OCDを発症しなかった選手を非発症群に分類した.選手のベースラインデータ(年齢、性別、野球でのポジション、ローラー指数)は単変量解析で分析された。OCDに関連する危険因子を調べるため、彼らの身体的パラメータを反復測定による二元配置分散分析で分析した。

[結果] 1年間の追跡調査には、合計3651人の野球選手が参加した。このうち71名(1.9%)が上腕骨小頭のOCDを有していた。

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✅ 図. 年齢による帽状腱膜性強迫症の発症率。上腕骨小頭OCDの発症率は初診時の10歳をピークに減少している。

OCD群では、ベースライン時および調査期間終了時に、ベースライン時のRohrer indexが高いことと、非利き手側の股関節IR ROMが小さいことの間に有意な関連が認められた。

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✅ 図. 身体機能変数の経年変化。太線はベースラインと試験終了時の非傷病者の群平均値。点線はOCD群の平均値を示す。

[結論] 利き手でない側の股関節IR ROMの損失は、OCD発症における身体機能に関連する新たに発見された危険因子である。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

まず、ひとこと言わせていただきたい❗️・・・タイトルがオシャレ。

To be, or not to be, that is the question.
生か死かそれが問題だ

ハムレット

これをもじったタイトルなのだろうが、タイトルをおしゃれにするなどという芸当は、よほど論文投稿に慣れた玄人にしかできないことだ。
坂田先生は、原点から程遠い領域にまで学びのリーチを伸ばしている。

そして、本題。
この研究のストレングスポイントの1つは、「少年野球選手を対象とした前向き研究としてはずば抜けた症例数」である。
これのために、発症率がかなり少ないOCDにおいて、多変量解析で最大7つの項目を突っ込むことを可能にした(以下、EPV参照)。

✅ EPV(events per variable)> 10という考え方
・多変量解析において投入できる独立変数の数
・従属変数の2値のうち少ない方のn数 / 独立変数の数 > 10にする必要がある
※ 今回の研究の場合
・OCD者71名、非OCD者3580名
・そのうちの少ない方→71名
・71名の10分の1の数→7.1個の独立変数を投入することができる
📕Peduzzi, Peter, et al. Journal of clinical epidemiology 49.12 (1996): 1373-1379. >>> doi.

その結果、非投球側の股関節内旋可動域は、OCD発症に独立して関連することが明らかとなった。
詳細なバイオメカニクス的な考察は助長になるので、簡略的に示す。

①股関節内旋ROM低下により、骨盤回旋が制限され下肢・体幹で創出されるエネルギー量が低下

吉福のモデル

②Catch up理論により、下肢・体幹でLoss of Powerとなった部分を補填するために上肢の過剰使用(手投げの過剰使用)が推察される

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発症メカニズムとしては、内側型投球障害肘と類似しているように感じた。
だが、それが明らかに分かったことが大事なのだ。
これまで、前人未到の領域だったのだから。
坂田先生、あらゆる点でアバンギャルド。

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