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車椅子シーティング。3種類のクッションと界面圧管理

📖 文献情報 と 抄録和訳

脊髄損傷者における車椅子用クッションの界面圧減少効果:ラピッドレビュー

He, Chen, and Ping Shi. "Interface pressure reduction effects of wheelchair cushions in individuals with spinal cord injury: a rapid review." Disability and Rehabilitation 44.6 (2022): 827-834.

🔗 DOI, PubMed, Google Scholar

✅ 前提知識:3種類のクッション

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🔑 Key points
- 車いす用クッションは、脊髄損傷後の患者が座位で受ける圧力を管理するために日常的に使用されている。
- どの種類の車椅子用クッションが、界面圧管理という点でより優れているかは不明である。
- エアクッションはジェルクッションやフォームクッションよりも一貫して界面圧の低減に効果的であることがわかった。

[背景・目的] 車いす用クッションは脊髄損傷者の座圧管理に日常的に使用されているが、どのような車いす用クッションが座圧管理に優れているかは不明である。本レビューでは、脊髄損傷者の座圧軽減効果について、様々な車いす用クッションを比較することを目的とする。

[方法と結果] MEDLINE、CINAHL、EMBASE、Web of Scienceの各データベースで検索を行った。その結果、合計10件の研究がこのレビューに含まれた。そのうち7つの研究では、エアクッションはゲルクッションよりも界面圧の軽減に優れていることが示された。また、3件の研究では、ジェルクッションがポリウレタンフォームクッションよりも界面圧の低減において優れていると報告されている。測定時間、測定の焦点、測定装置、クッションのカバー、サンプルのばらつき、患者の体位などの変数が、異なる車椅子用クッションの界面圧減少効果の研究間比較を混乱させる可能性がある。

[結論] エアクッションは、ゲルクッションやフォームクッションよりも一貫して界面圧の低減に有効であると報告された。しかし、変動するパラメータ(測定時間、焦点、デバイス)および個人の条件(BMI、体位)は、研究間の比較の妨げになる可能性がある。臨床におけるエビデンスベースの診療を確立するために、一貫したパラメータと個別評価による臨床処方を広める研究が提案されている。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

訪問リハビリは、もっとも広範な知識や判断力が求められる、と思っている。
なぜなら、そこには、セラピスト1人しかいないから。
病院なら、医師に、看護師に、栄養士に、薬剤師に、義肢装具士に、外部委託できる。
だが、訪問リハは、1人だ。
そして、結構あるのが「この車椅子のクッションって、ベストなんですかね?」という質問。
身体機能や動作能力がStayの方にとって、可変的な部分の多くは環境要因になる。

そのとき、いきなり答えを出してはいけない、だろう。
なぜなら、車椅子のクッションの機能は多岐に渡り、それぞれのクッションが一長一短を併せ持つと思われるから。
・界面圧の低減効果
・立ち上がりやすさ
・姿勢への影響
・摩擦
・へたりやすさ
・(懸案事項)価格
・etc...

それぞれのクッションについて、以上のような機能のダイヤグラムが描ければ、以下のようなコミュニケーションが可能になるだろう。

セラピスト:「クッションを変えることで、どんな部分をよくしたいと思っていますか?」
患者:「お尻が疲れるっていうか、痛いっていうか、そこを少しでも良くできれば・・・」
セラピスト:「それでしたら、いま使っているのがポリウレタンのフォームクッションというものなのですが、それよりもジェルクッションが圧分散に優れます。さらに、エアクッションはジェルよりも圧分散に優れますが、少しふわふわする感じなので、動きやすさや立ち上がりやすさにとっては弊害かもしれません。」

鍵穴の形を知り、現在ある限りの鍵についての情報を提供する。
そして、鍵の選択の主権は患者に持ってもらう。
今回の抄読論文は、車椅子クッションの選択の際の重要な情報を提供してくれた。

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