見出し画像

運動療法と患者教育後のTHA, TKAへの移行率の違い


📖 文献情報 と 抄録和訳

変形性関節症に対する運動療法と患者教育プログラムの成績は、2年以内の人工股関節置換術および人工膝関節置換術と関連

📕Ackerman, Ilana N., et al. "Are outcomes from an exercise therapy and patient education program for osteoarthritis associated with hip and knee replacement within two years? A register-based study of 9,339 patients with osteoarthritis." Arthritis Care & Research 76.6 (2024): 802-812. https://doi.org/10.1002/acr.25303
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar 🌲MORE⤴ >>> Connected Papers
※ Connected Papersとは? >>> note.

[背景・目的] 本研究の目的は、変形性関節症(OA)に対する運動療法と患者教育による短期的転帰が、2年以内の人工股関節置換術または人工膝関節置換術と関連するかどうかを明らかにすることである。

[方法] Good Life with osteoArthritis in Denmark(GLA:D)レジストリの個人レベルのデータをDanish National Patient Registryおよび他の国のレジストリにリンクした。Cox比例ハザードモデルを用いて、プログラムのアウトカム(ベースラインから3ヵ月の変化)と一次的な人工股関節置換術または人工膝関節置換術までの期間との関連を調査した。人工関節置換術を受けなかった患者は、2年後、死亡時、または移住時に打ち切った。

✅ この研究のコホート:GLA:Dプログラムへの参加者
・国際的に最も広く実施されている非外科的OA管理プログラム
・週2回のグループ運動と2回の教育セッション

[結果] 臨床的に股関節OAと診断された2,304例および膝関節OAと診断された7,035例が組み入れられた。このうち、股関節OAの30%、膝関節OAの10%が2年以内に人工関節置換術を受けていた。

この図は、変形性関節症(OA)患者の股関節および膝関節の置換手術の進行状況を、2年間の期間で示している。縦軸は「関節置換手術の確率」を示し、横軸は「日数」を示している。
赤い線は股関節、青い線は膝関節のデータを表している。

プログラム後の股関節関連QOLおよび関節炎自己効力感(疼痛サブスケール)の改善は、人工股関節置換術のハザード低下と関連していた(10単位の改善に対する調整後ハザード比[HR]: それぞれ0.74[95%信頼区間(CI)0.69-0.80]および0.90[95%CI 0.85-0.96]であった)。膝関節痛、膝関節関連QOL、関節炎自己効力感(疼痛サブスケール)の改善は、人工膝関節置換術のハザード低下と関連していた(10単位の改善に対する調整後HR: それぞれ、0.81[95%CI 0.76-0.86]~0.90[95%CI 0.86-0.95]、0.70[95%CI 0.63-0.78]~0.79[95%CI 0.72-0.86]、0.89[95%CI 0.83-0.94])。

[結論] 運動療法と教育後の主要指標の改善の程度は、手術の可能性と有意に関連していた。人工股関節置換術への移行は人工膝関節置換術への移行の3倍であった。この情報は、予想されるプログラムの結果に関する患者と医師の会話の指針となる。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

衝撃的だったのは、THAへの移行率がTKAへの移行率と比較して『3倍』多かったこと。
この理由について、論文中の考察が参考になったので、以下に要約する。

✅要約:変形性膝関節症の患者が変形性股関節症の患者よりも置換術に進む割合が少ない理由:
1. 症状の改善度合い:膝関節症患者は運動療法と教育プログラム後の痛みの強度、関節関連の生活の質、および関節炎自己効力感(特に痛みのサブスケール)において大きな改善を示した。これに対し、股関節症患者の改善度は低かった。この改善度の違いが、手術への移行率に影響を与えている。
2. 初期症状の重さ:プログラム開始前の症状が、股関節症患者の方が膝関節症患者よりも重い傾向があった。重い症状を持つ患者は、より早く手術を必要とする可能性が高い。
3. 治療への反応:膝関節症は初期の非手術的治療に対する反応が良好であることが多いとされるが、股関節症はそうではない場合がある。このため、膝関節症患者は非手術的治療で十分に管理できる場合が多い。
4. 手術の必要性の判断:股関節置換術は手術結果が良好であるため、手術を受ける決断がしやすいとされる一方、膝関節置換術は手術後の結果が不確実なため、手術を先延ばしにする傾向がある。
これらの要因が組み合わさり、変形性膝関節症の患者が変形性股関節症患者よりも置換術への移行が少ないとされる。

薪を割るようにざっくりというならば、「膝OAはリハビリテーションで影響を与えやすく、股OAは影響を与えにくい」という印象をもった。
もちろん、両者ともに効果を出すことをあきらめてはいけないのだが、臨床像のイメージを妥当なものに近づけていくこともまた、重要だと思う。
変形性股関節症、THAと変形性膝関節症、TKAの臨床像の形成に役立つ論文だ。

⬇︎ 関連 note & 𝕏での投稿✨

○●━━━━━━━━━━━・・・‥ ‥ ‥ ‥
良質なリハ医学関連・英論文抄読『アリ:ARI』
こちらから♪

↓↓↓

‥ ‥ ‥ ‥・・・━━━━━━━━━━━●
#️⃣ #理学療法 #臨床研究 #研究 #リハビリテーション #英論文 #文献抄読 #英文抄読 #エビデンス #サイエンス #毎日更新 #最近の学び

この記事が参加している募集