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性別を考慮せよ。 効果装飾因子としての性別

📖 文献情報 と 抄録和訳

研究における性・ジェンダー報告の水準を高めるために

📕Raising the bar on sex and gender reporting in research. Nat Med 28, 1099 (2022). https://doi.org/10.1038/s41591-022-01860-w
🔗 DOI, PubMed 🌲MORE⤴ >>> Connected Papers (Heidari, 2016)
✅ 前提知識:SAGERガイドラインとは?
■ SAGERガイドラインとは?
- SAGERガイドラインは、研究計画、データ分析、結果、および所見の解釈における性別および性別情報の報告のための包括的な手順。
- これらは主に著者が原稿を準備する際のガイドとして設計されているが、編集プロセスの不可欠な部分として、編集者が性別と性別の評価をすべての原稿に統合するのにも役立つ。
- 2016年、 SAGERガイドラインがOpen Access BMC Research Integrity and PeerReviewJournalにSexandGender Equity in Research: SAGERガイドラインの理論的根拠と推奨される使用法というタイトルで 公開された。
🌍 参考サイト >>> site.
📕 Heidari, et al. Research integrity and peer review (2016): 1-9. >>> doi

[Editorial概要]
- Nature Medicineでは、この6月から、著者は研究デザインにおいて性やジェンダーがどのように考慮されたのか、詳細を提供するよう促されることになる
- 具体的には、SAGERガイドラインの中から選択した項目について、より明確に、積極的に著者に報告するよう、ガイダンスと実践を更新している。
- さらに、Nature Medicineは、Nature Communications、Nature Cancer、Nature Metabolismとともに、2022年6月から試験的にこの指針をより強く適用することをテストする予定。
- 2013年にネイチャー誌の報告チェックリストを通じて導入されたネイチャー誌の取り組みの分析では、ネイチャー誌の研究の52%で性別が報告されているのに対し、非ネイチャー誌の研究では36%であることがわかった

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

「性差医療」という言葉がある。

✅ 性差医療とは?
- 性差医療とは、男女の様々な差異により発生する疾患や病態の差異を念頭において行う医療である。
- また、これらの差異を研究する学問は性差医学と呼ばれる。
- これまでの医学は成人男性を標準として、病態とその推移、診断方法、治療方法などを確立してきた。しかし近年では、同じ疾患に対する危険因子でも寄与度に男女差がある場合があること、同じ医薬品でも効果に男女差がある場合があることなどが明らかになりつつある。
- 原因として男女のホルモンバランスの違い(生物学的要因)や生活習慣の違い(社会文化的要因)などが挙げられているが、いずれにしても男性を基準として作成した診断方法や治療方法をそのまま女性に適用した場合、最良の医療とはならない可能性がある。
- 性差医療とは、これらにおける男女差を研究し、医療に反映させようという行いである。
🌍 参考サイト >>> site.

男女平等という旗印のもと、社会的には次第に平等に近づいていている印象がある。
しかしながら、身体構造の面では、やはり違いはあるようだ。
そして、男女の身体構造の違いは、リハビリテーション分野においても「第3の因子」として作用する。
第3の因子とは、PECO(PICO)を構成する主要な要素であるE(I)とOのそれぞれに関係性を持つ因子、あるいはE(I)とOの関係性自体に影響する(あるいは受ける)因子を指す。
小難しく述べたが、リハ効果や疾患リスクといったアウトカムに影響を及ぼす「予後因子」として働くということ(詳細は以下noteにまとめてあるので参照)。

性別が予後因子として働く代表的な領域をエビデンスと共に列挙してみる。

疼痛感受性
- 健康な男女に同じ疼痛刺激を加え、脳内のどの領域が活性化するかを調査した実験では、男女共に同じ領域が活性化することが報告されている。そして、痛みを感じている間は不活性化する領域が「女性にのみ存在する」ことが報告されている。
📕Berkley, et al. American Journal of Physiology-Regulatory, Integrative and Comparative Physiology 291.2 (2006): R241-R244. >>> doi.

リハアウトカム(ADL)
- この研究の目的は、性差と、脳卒中リハビリテーション後の個々の機能的自立度評価の結果に対する社会生活状況の影響を調査すること
- 社会人口統計学的および臨床的要因を調整した後、女性は18の機能的自立度評価項目のうち14について監督レベルに達する確率が高かった。
- 男性は、18の機能的自立度評価項目のうち2つで監督レベルに達する確率が高かった。
📕 Hay, Catherine Cooper, et al. American journal of physical medicine & rehabilitation 99.1 (2020): 48. >>> doi.

骨折リスク
- フィンランドにおける1972~2018年のすべての入院患者の退院記録に基づき骨折リスクを調査
- 1972年、女性は男性に比べて股関節骨折の平均リスクが約1.7倍高かった。現在では、男女間の相対リスクは1.2に減少している。
- 【★】骨折リスクの男女格差は減少している可能性がある
📕 Pekonen, S-R., et al. Osteoporosis International (2021): 1-9. >>> doi.

筋トレの効果
- 高齢者のレジスタンストレーニングへの適応に性差が見られるかどうかを明らかにすることを目的としたメタアナリシス
- レジスタンストレーニング後、高齢男性は高齢女性よりも上半身および下半身の絶対的な筋力が増加する。
- 高齢の女性は、高齢の男性よりも相対的な下半身の筋力が増加する。
- 高齢の男性は、高齢の女性よりも絶対的な筋肉サイズが大きくなる。
📕 Jones, M.D., et al. Sports Med 51, 503–517 (2021). >>> doi.

男性と女性。
平等に扱われるべき両者。
だが、同じ身体ではない。
社会的には平等、身体的には格差強調。
そこにギャップを感じてしまうが、やはり後者は真実を見るために重要。
が、そこを強調しすぎると前者にまで影響が及ぶ気もする。
なんとも、難しい議題なり。

男性だけの世界観は本当のものじゃない。
女性だけの世界観もほんとうものもとはいえない。
この男と女の世界観がぶつかり合って、
そこで初めてほんとうの世界観が生まれるんだ。

岡本太郎 「愛する言葉」より

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