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日本老年医学会による、遠隔医療利用のステートメント

📖 文献情報 と 抄録和訳

日本老年医学会「老年医療における遠隔医療利用のためのステートメント 対面診療の補完としての遠隔診療」

📕The Japan Geriatrics Society Geriatric Medical Practice Committee , Nomura, K, Ebihara, S, Ikebata, Y, et al. Japan Geriatrics Society “Statement for the use of telemedicine in geriatric care: Telemedicine as a complement to in-person medical practice”: Geriatric Medical Practice Committee consensus statement. Geriatr. Gerontol. Int. 2022; 22: 913– 916. https://doi.org/10.1111/ggi.14490
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[ステートメント概要の図]

[概要] 遠隔医療は、病院へのアクセスが限られた患者の治療方法から、2019年のパンデミック時には、緊急性のない症状の治療方法として必要なものに変化した。遠隔診療には、オンライン診療の特性を生かした「ハイブリッド診療」と「ゲートウェイ診療」という2つのスタイルがあり、近い将来、重要になる可能性がある。

■ ハイブリッド診療とは?
・患者と主治医が対面診療を行い、同時に遠隔医療で専門医の診察を受けるもので、全体として地域医療のレベルアップと治療可能な疾患の拡大につながる。

■ ゲートウェイ診療とは?
・遠隔診療の一種で、対面診療を拒否・拒否される患者さんが医師の診察を受けるために利用されるもの。
・遠隔診療により、医師は病気の重症度を判断し、患者をトリアージすることができ、不必要な往診や緊急入院、感染の拡大を減らすことができる。
・また、遠隔医療は対面診療に比べ負担が少なく、他の医療従事者との連携も容易になる。

しかし、確定診断や患者さんの病歴を包括的に把握する必要がある場合には、遠隔医療は最適とは言えない。また、患者さんが遠隔医療機器を使いこなせるかどうかや、偶発的な治療や不正のリスクなど、様々な制約がある。遠隔医療を利用することで、新しいオンラインの包括的な老年医学評価ツールや技術が開発されるかもしれない。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

いよいよ、遠隔医療が本格的な実用に向けて動き出している。
日本老年医学会がその利用ステートメントを発表した、というのは重大なことではないか。
今回のステートメントを読んでいて感じたこと。
それは遠隔医療にもたくさんの目的があって、大きくは『医療行為』としての遠隔医療と、『サービス』としての遠隔医療という2つの潮流に分かれそうだということ。

■ 『医療行為』としての遠隔医療
・これまでの医療の代替補完としての遠隔医療
・提供されるサービスは、国に認められた保守的なものが多くなるだろう
・例. 評価、診断、運動介入の一部など
・報酬体系;医療保険が適応になってくるのかもしれない

■ 『サービス』としての遠隔医療
・新規サービスとしての遠隔医療
・利用者、顧客に直接選択されるか否かが問われる萌芽的、挑戦的なものが多くなるだろう
・例. 予防的事業、退院後フォローアップ、行動変容、患者/介護者教育など
・報酬体系:Direct to Consumer (D2C)、利用者と事業者の直接的なやりとり、保険外サービス

今回のステートメントを読んで、僕が『あっ!』となったポイントは次の一文だった。

『医師が診療の第一義的な責任を負うこと』

医療保険内で遠隔医療を行うとなれば、もちろん、そこには医師による処方が必要となる。
入浴評価や家屋調査の実施に、医師の指示/処方が必要であるように。
そうなってくると、上記『サービス』としての遠隔医療で例示したような内容は行いにくくなる。
なぜなら、挑戦的な事業は、多くが理解されない状態から始めなけれならないからだ。
でも、始めてみなければ、それが有用なものかどうか、その真偽は晒されない。
だから、必要なものは、おそらく『サービス』としての遠隔医療を行えるプラットフォームだ。
医療保険でやる機構とは、全く別個の体系を構築し、そこでいろんな冒険をしてみる。
そんな、挑戦的な集団が求められつつあるのかもしれない。

独立とは自分にて自分の身を支配し他によりすがる心なきを言う。
みずから物事の理非を弁別して処置を誤ることなき者は、他人の智恵によらざる独立なり。
みずから心身を労して私立の活計をなす者は、他人の財によらざる独立なり。

福沢諭吉 学問のすゝめ

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