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視床下核。すくみ足の責任病巣

📖 文献情報 と 抄録和訳

パーキンソン病患者の視床下核における歩容の符号化の原理

📕Thenaisie, Yohann, et al. "Principles of gait encoding in the subthalamic nucleus of people with Parkinson's disease." Science (2022). https://doi.org/10.1126/scitranslmed.abo1800
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【Full text】medRxiv >>> doi.

[背景・目的] パーキンソン病では視床下核の動態が破綻すると、歩行時の障害が生じる。ここでは、パーキンソン病患者において視床下核が機能的な歩行と機能的でない歩行をどのような原理でコードしているかを明らかにすることを目的とした。

[方法-結果] 我々は、等速性ダイナモチェアを組み込んだニューロロボティックプラットフォームを考案し、良好に制御された条件下で、歩行の主要な構成要素を分解することを可能にした。

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✅ 図1. 両側の視床下核(STN)変調が脚の能動・受動運動を符号化する。STNにおける脚の筋肉の活性化の符号化を、よく制御された条件下で研究するための神経ロボットプラットフォーム。患者は片側膝伸展運動中に快適に座り、最も影響を受けている脚のすねを回転するダイナモメーターに装着する。動作は受動的または随意的に行われる。両側の筋電図とSTN信号が運動角度パラメータと同時に記録される。DBSリードの位置は3D解剖学的再構築により確認する。LFP記録に使用された接触部(最も影響を受けた半球)は黄色でハイライトされている。

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✅ 図2. マルチモーダル運動解析プラットフォーム。拘束のない運動課題中の運動状態と神経状態をモニタリングするための実験セットアップ。外来患者は、身体の主要な関節に19個の慣性センサを埋め込んだ全身スーツを着用した。これにより、ワイヤレスでリアルタイムに運動状態を追跡することが可能となった。さらに、足首(前脛骨筋TA、内側腓腹筋GM、外側腓腹筋LG)、膝(外側広筋VL、半腱様筋ST)、股関節(大腿直筋RF)のアゴニスト筋とアンタゴニスト筋を記録する無線筋電センサー6台を各脚に装着し、全患者に装着してもらった。

このプラットフォームを18名のパーキンソン病患者に使用し、視床下核が下肢筋の活性化の開始、終了、振幅を制御していることを実証した。また、同じ基本原理が、立位と歩行時の脚筋シナジーの符号化を決定していることを明らかにした。この理解を機械学習の枠組みに置き換えると、筋活動、歩行状態、運動活性、歩行のすくみ足(freezing)が解読された。

[結論] これらの結果は、視床下核のダイナミクスが歩行を符号化する重要な原理を明らかにし、パーキンソン病患者の歩行を改善するために、これらの信号で神経補綴システムを操作する可能性を開くものです。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

「パーキンソン病の責任病巣を答えなさい」

そう問われたらなんと答えるだろうか。

「大脳基底核」

そう答える医療者がほぼ全てだと思う。
そう習ってきたから。

✅ パーキンソン病とは?
・パーキンソン病は、動作の緩慢、手足の震えやこわばり、バランス能力の低下などの運動症状と、うつや不眠などの非運動症状を示す進行性の神経難病です。
・日本には15万人以上の患者さんがいますが、高齢になるほど罹患率が高くなるため、今後さらに患者数が増加すると予想されています。
・パーキンソン病は、脳内のドーパミンが不足することにより、大脳基底核と呼ばれる脳領域の神経活動に異常が生じて発症します
🌍 参考サイト >>> site.

でも、技術進歩とともに、見える世界(真実)も変わる。
望遠鏡によって、月の見え方が激変したように。
そして、見える世界が変われば、教科書(常識)も変わる。
天動説から地動説に、パラダイムシフトが起こったように。

今回の研究は、「すくみ足(freezing gait)の責任病巣は、『視床下核』っぽいよ」ということを、あらゆる手段を使って明らかにした。
なんと言っても、Science誌である、信頼には足りすぎる。 #結局権威に弱い
イメージとしては、以下のような感じだ。

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📕参考文献. 石田, 2017. 基底核と小脳の相互連関. CLINICAL NEUROSCIENCE. >>> site.

教科書に載っていることが正しいのではない。
正しいと思われている事柄が、教科書に載っている。
この順番を間違えれば、大変なことになってしまうだろう。
では、今回の研究結果を通じて、パーキンソン病、パーキンソニズムへの僕達の教科書(常識)は、どうあるべきだろう。
まず、脳画像の解析において視床下核への光をもう少し強めてみよう。

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