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Phase Angle(PhA)。歩行速度との関連

📖 文献情報 と 抄録和訳

高齢者における歩行速度の低下には下肢筋の質と位相角が寄与している

📕Hirano, Yuji, et al. "Lower limb muscle quality and phase angle contribute to the reduced walking speed among older adults." Geriatrics & Gerontology International (2022). https://doi.org/10.1111/ggi.14423
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✅ 前提知識:Phase Angle, PhAとは?
- 近年,生体電気インピーダンス分析法(以下BIA)は,日常の診療や栄養評価,スポーツなどのさまざまな分野に用いられている
- InBodyなどの機器を用いて、比較的簡便に計測が可能
- このBIAを利用して算出されるPhase angle(以下PhA)は細胞膜の抵抗を表した角度であり,細胞や細胞膜の栄養状態と関係が深く,体細胞量に反映する.
- 健常者やアスリートなどの構造的完成度の高い細胞膜をもった正常細胞では,PhAは高く計測され,老化やがんなどの細胞膜の構造的損傷や細胞密度の低下した障害細胞では,PhAは低く計測される
- PhAは細胞の健常度や全体的な栄養状態を反映することから,各種疾患の予後予測因子や栄養指標として注目されている.
- また,PhAは人体に微弱電流を流し細胞膜の抵抗値を直接測定して算出する実測値であるため,身長や体重だけでなく体液過剰の影響を直接受けない利点がある.そのため,通常の体成分分析には則さない重症度の高い患者や重症心身障害者などの正確な栄養評価が困難な患者にPhAは有用と思われる
📕 吉田索, et al. 外科と代謝・栄養 53.4 (2019): 169-175. >>> doi. https://doi.org/10.11638/jssmn.53.4_169

[背景・目的] この横断的研究は、歩行速度1m/s未満の予測因子を明らかにすることを目的とした。生体インピーダンス分析で解析した位相角、ミニ栄養評価-ショートフォームの回答、アルブミンレベル、脚の筋肉の質、ビタミンDレベルなど、筋肉細胞の健康状態に関連する因子を評価した。

[方法] 研究参加者は、2016年に当センターに開設された「運動器虚弱外来」の外来患者(女性231名、76.5±7.6歳、男性137名、78.0±6.3歳)であった。参加者は、歩行速度1m/sをカットオフ値として2群に分類した。歩行速度を従属変数とし、年齢、脚の筋肉の質、ミニ栄養評価-短文回答、アルブミン値、ビタミンD値、位相角を説明変数として、二項ロジスティック回帰分析を行った。脚の筋肉の質は、生体インピーダンス分析による両下肢の等尺性膝伸展筋力の平均値を両下肢の筋肉量の平均値で割ったものと定義した。

[結果] 女性の歩行速度低下と関連する説明変数は、脚の筋肉の質(P = 0.004、オッズ比:0.57)および位相角(P = 0.017、オッズ比:0.42)であった。また、男性は脚の筋肉の質(P = 0.004、オッズ比:0.43)がより高かった。

[結論] 高齢外来患者において、脚の筋肉の質と下肢の位相角は、低い歩行速度(<1 m/s)と独立して関連していた。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

同じ疾患、類似の年齢、既往歴、受傷前活動量、リハ意欲・・・。
だがしかし、能力向上の軌跡はまったく違ったものになる。
臨床において、そのような事態にしばしば出くわす。
そんなときは、「予後予測って一体なんなの?」と虚しくなったりする。
だが、これは精度の問題だ。まだ精度が不十分なのだ。
と、気を取り直して前に進んできた。

最近、『Phase Angle』という用語が研究論文の中に増えていることには気づいていた。
なんだか難しそうだ、と遠ざけていたが、チャリティの原則に従ってみようと思った。

✅ チャリティの原則とは?
好意的解釈を念頭に置こうというもので、
・相手が正しい事を言っているものとして話を聞く
・相手が不条理な事を述べていたら、まずは自分の解釈の方を変える
といった考え方のこと
🌍 参考サイト >>> site.

この原則を「何か知らないこと・分からないこと・不合理と思ったことを、相手のせいにして終わるのではなく、自分自身に疑いの目を向けたり、自分自身を変えたりしようよ」、という考え方と転用解釈している。
僕たちは、自分が知らないもの → 面白くないものと即断しやすい。
だが、そもそもの前提に立ち返りたい。
勉強とは、知らないものを知り、自分を拡大していく営みではないか?
だとすれば、自分が知らないものこそ、面白そうなものとして、ダイブして、勉強して、血肉にしていくべきではないか。
今回、勇気を出してそれを実践してみた。

勉強してみると、Phase Angleが比較的簡便に計測できる、とても有用そうなバイオマーカであることを知った。
疾患、年齢、既往歴、受傷前活動量、リハ意欲・・・、これらは間接的に身体的回復力と関連を示すものであって、その距離は結構遠い感じがする。
だが、細胞の状態を評価するPhase Angleは、かなり直接に近い身体的回復力の評価になるのではないかと思った。
1km離れたところから望遠鏡で見るより、間近で見たほうが分かりやすく、間違いも少ないのは当然だ。
InBody、75万円ね・・・。
候補に入れておこう笑。

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