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脳出血の瞬間。そこで起こっていること

📖 文献情報 と 抄録和訳

自然発症の脳内出血の形成機構.解剖学的標本に基づく検討

📕Rzepliński, Radosław, et al. "Mechanism of Spontaneous Intracerebral Hemorrhage Formation: An Anatomical Specimens-Based Study." Stroke (2022): 10-1161. https://doi.org/10.1161/STROKEAHA.122.040143
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[背景・目的] 自然発症の脳出血は,様々な危険因子や予後因子の解明が進んでいるにもかかわらず,非常に高い罹患率と死亡率を伴い,治療法は主に支持的である.しかし,初期の血腫拡大の病態生理については,臨床データが十分でなく,また適切な動物モデルもないため,その理解は限られている.

[方法-結果] 大脳基底核の解剖学的標本40個に造影剤を注入し、マイクロCTスキャナーで撮影し、放射線検査、直接検査、組織検査の結果を解析した。その結果9例において,マイクロCT検査および組織学的検査により,脳内血腫に類似した造影剤の滲出が認められた.人工血腫は破裂した穿通枝とその血管周囲腔に沿って近位・遠位に広がり,隣接する神経組織から枝を剥離し,組織の破壊と二次的な血管外への浸潤を引き起こした.さらに造影剤の一部が未破裂穿孔部の血管周囲に飛び出し、さらなる滲出部位を作り、人工血腫の拡大を悪化させた。しかし、クモ膜下への血腫拡大は認められなかった。

[結論] 脳底部神経節血腫は,最初は血管周囲に広がり,神経組織から枝を切り離し,二次的な出血を引き起こすと考えられる.また,近傍の穿通枝の血管周囲腔に飛翔することもある.血腫の発生と形成のメカニズムは、神経組織の損傷の程度、時間と空間における増殖の変動、二次出血部位の形成、外科的介入の有用性の限界を説明するものである。このモデルは再現性が高く、人工血腫の範囲を容易に制御でき、穿通動脈の破裂部位を特定することができる。また、このモデルの作成には、マイクロコンピュータ断層撮影装置以外に、特殊で高価な装置を必要としない。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

〇〇は、子どもの頃、ラジオを解体して遊んでいた。そして次いで組み上げてつくって売った。
〇〇は、子どもの頃、パソコンを解体して遊んでいた。そして次いで組み上げてつくって売った。

こんな話、聞いたことあるだろう。
天才は、しばしば、結果として機能を提供する機器を解体する。
そこで起こっていることを、その目で見て、仕組みを考え、体得する。
そのあと、それをつくることができる様になる。

Scrap and Build。
ブラックボックスになっている全体の壁をぶち破り、その中に没入して、何がどうなっていて、その機能を果たしているのかを知る。
そうすることではじめて、その機械を修理したり、組み上げたり、できる様になる。
リハビリテーションとは、思いきっていえば、そのような仕事ではないか?
そのためには、脳出血と聞いて、ただ、脳に血腫がある姿しか頭に思い描けないとしたら、そこに対して何ができるだろう。
今回の研究は、かなり詳細な脳出血後のイメージを提供してくれた。

例えば、神経の枝が引き剥がされる様にして距離をあけるならば、その距離の大きさによって伝達の可能性が変わりそうだ。
血腫の吸収に伴い、その距離が変化し、次第に近づいてきたときに、どこかのポイントから神経伝達が可能になるのかもしれない。
その経時的な流れの中で、適するリハビリテーションの内容も、変わるかもしれない。
そこで何が起こっているかを知れば、そこに何をすればいいかが分かる。
それは、覚えることではなく、考えることだと思う。

学んで思わざるは即ち罔し 思うて学ばざれば殆し
(学んでも考えなければ、[ものごとは]はっきりしない。考えても学ばなければ、[独断におちいって]危険である)

孔子 『論語』

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