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回復期リハ病棟スタッフの疾患/病態の用語認知度


📖 文献情報 と 抄録和訳

リハビリテーション医療スタッフにおける機能障害と筋肉の健康に関する用語の認知度調査

📕Hori, Kota, and Yoshihiro Yoshimura. "Survey of Awareness of Terminology Related to Functional Impairment and Muscle Health Among Rehabilitation Healthcare Staff." Annals of Geriatric Medicine and Research (2024). https://doi.org/10.4235/agmr.24.0029
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[背景・目的] 高齢者のリハビリテーションでは、機能的および栄養的な障害がしばしば問題となる。栄養リハビリテーションは虚弱、栄養失調、サルコペニアに対する重要な対策として注目されており、リハビリテーションと栄養ケアの組み合わせが身体機能や日常生活活動の改善に寄与する。しかし、機能障害を表す用語は医療従事者によって十分に認識されておらず、その認識度を調査することが本研究の目的である。

[方法] 回復期病棟のスタッフを対象に、機能障害を表す用語の認識度を調査するためのアンケートを実施した。調査はGoogle Formsを使用し、匿名性を保持した上で、「よく知っている」から「全く知らない」までの5段階で回答を求めた。対象となった用語には、サルコペニア、フレイル、ロコモティブシンドローム、廃用症候群、カヘキシア(悪液質)、PICSが含まれた。

[結果] 有効回答196件のうち、サルコペニア、フレイル、ロコモティブシンドローム、廃用症候群の認識度はそれぞれ83.8%、76.1%、70.6%、94.9%であった。一方、カヘキシアとPICSの認識度はそれぞれ28.9%および9.6%にとどまった。医師はすべての用語に対して高い認識度を示し、理学療法士はPICS以外の用語で平均以上の認識度を示した。

[考察・結論] ロコモティブ症候群、サルコペニア、フレイル、廃用症候群に関する認識度が高い一方で、カヘキシアやPICSに対する認識度は低いことが明らかになった。これは、回復期病棟での対象患者の特性や、特定の用語が直面する病態との関連性によるものと考えられる。特にPICSについては、ICU外での認識が極めて低く、認識向上と協力体制の構築が必要であると結論づけられる。また、この調査は単一施設で実施されたものであり、全国的な状況を完全に代表するものではないことに留意する必要がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

言葉の定義は大事だ。
思った以上に、大事だ。
それを示す、1つの逸話がある。

子路(孔子の弟子)が言った。
「衛の君が、先生をお迎えして政治を為すなら、先生はまず何を第一にしますか」
先生(孔子)がおっしゃった。
「必ずや名を正さんか(まず必ず物の名前を正すことから始めるだろう)」

孔子は、物の名前の定義が人によって異なっていると、話をしても、お互いに考えている内容が食い違ってしまい、結果、政治がうまくいかないということを説いた。
医療においても、『サルコペニア』、と名称を言われたときに、違った内容を思い描いていては、その話が食い違ってしまう。
そのため、サルコペニアという言葉に対する定義を共有しておくことが、診療、研究をより効果的にするために重要である。

その意味合いにおいて、今回の回復期病棟スタッフの疾患/病態の用語に対する認知度を明らかにしたアンケート研究は、とても重要な研究のように思える。
特に、カヘキシア(悪液質)、PICSという疾患/病態の用語については認知度が低く、この用語に関する認識の共有から話を始めた方が良いのかもしれない。
この研究は一病院での調査であるため、他の病院での認知度も知りたいところである。

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