Maxの何割で投げれば、肘関節負荷を5割にできる?
📖 文献情報 と 抄録和訳
野球投球時の定量的部分外反ストレスが球速と主観的ピッチエフォートに与える影響
[背景・目的] 肘関節の過大な負荷は投手障害肘を引き起こすことが多く、競技再開にはリハビリテーションが必要となることが一般的。しかし、肘関節外反過負荷による投球肘損傷に対して、肘関節外反ストレスに基づく部分負荷リハビリテーションに関する情報は乏しい。本研究の目的は、投球時の定量的な肘関節の部分的外反負荷が球速や主観的な投球努力にどのような影響を与えるかを明らかにすることであった。
[方法] 野球部男子投手46名が本研究に参加した。各選手は肘にウェアラブルデバイスを装着し、投球パラメーターを収集した。球速はレーダーガンを用いて測定した。各選手に5球の速球を全力で投げるよう指示し、各肘関節の外反ストレス(内反トルク)を測定した。そして、5回の投球の平均ストレス(100%の外反ストレス)をもとに、75%と50%のストレスを算出した(それぞれ75%と50%の外反ストレス)。各投手は、目標とする肘関節ストレスでの投球回数が5回になるまで投球を続けた。各選手は、各タイプの部分外反ストレス投球を終えた後、主観的な投球努力について質問された。一元配置分散分析または二元配置分散分析のいずれかを用いて統計的に評価された。
[結果] 球速は,75%および50%の外反ストレスでそれぞれ72%(95%信頼区間[CI],69%~75%)および58%(95%CI,55%~61%)であった(P < 0.001).主観的投球努力度は,75%および50%の外反ストレスでの投球時に,それぞれ41%(95%CI,38%-44%)および19%(95%CI,16%-22%)であった(P < 0.001).
[結論] 投手が50%の部分的な外反ストレスで投球したい場合は、主観的な投球努力量を最大値の20%未満で投げるように指導することが望ましいかもしれない。これらの結果から、臨床医やコーチは、より安全な投球復帰プログラムを実施し、肘への過度な負担を防ぐことができると考えられる。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
例えば、投球障害肘のオペ後の現場復帰を目指す選手がいたとする。
その中で、現在は5割の負荷を肘関節に加える時期だとしよう。
そのとき、選手にどのような指導、声かけをするだろうか。
これが、大いに間違っている可能性がある。
主観的な努力度で41%は、肘関節ストレスの75%に当たることが明らかになった。
つまり、Maxの50%で投げると、過負荷になっている可能性が高いということ。
肘関節負荷5割を目指すなら、Maxの20%で投げるくらいが相当する。
この研究は、研究室だけの結果になりやすい動作解析の結果を、スポーツ現場に実際応用することを目指した研究だと思う。
肘関節負荷〇〇Nmでも、現場には関係ないのだ。
それよりも、『Maxの○%』で投げればいいかが分かることの方が、随分役に立つ。
僕だって、こういう研究がしたいのだ。
そう思わされた、なんとも実際的な研究だった。
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