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いくつになってもやりたいことを諦めない人のお話 【ドラマ・映画紹介】

最近ハマって見たのが、70過ぎたおじいさんが、若き日の夢だったバレエに挑戦するというNETFLIXのドラマである。

夢を叶えられないままこの世を去った友人をきっかけに、バレエをゼロから始めたおじいさん、シム・ドクチュルと、才能はあるが少々複雑な過去を抱え伸び悩んでいる青年イ・チェロクの、交流の物語だ。

主人公のドクチュルは、人は良さそうだけど、レオタード着て踊ってるところはちょっと想像しにくい、見た目は勤め人を終えた極々普通のおじいさんである。

70から始めたら中々大変だろうな、とドラマを見ていくとドクチュルはただバレエが習いたいだけではないと言う。

舞台に上がりたい。舞台で高く飛びたい。

ドクチュルはそう語る。

自分のためにただ楽しく踊ることは、そんなに難しくはない。

でも、舞台の上で美しく踊りたければ、話は変わってくる。

私自身、クラシック・バレエはやったことがないが、バレエの要素が比較的多いジャズダンスを少しやっていたので、片足をあげたポーズやターン1つできるようなるだけでもどれだけ大変か身をもって知っている。

バレエ等のダンサーはあまりマッチョなイメージがないかもしれないが、爪先立ちのような不安定な姿勢は体幹と下半身の筋肉がないとグラグラしてしまう。ジャンプやターンもピタッと止まれない。体を自在に操るには見た目から想像されるよりもずっと多くの筋肉が必要だ。なので筋トレ必須。

持久力も必要だ。日頃運動していなければ最初はレッスンについていくのもやっとだ。通っていたスクールは入門クラスでも1レッスン90分だった。

柔軟性も重要なので毎日必ずストレッチ。

踊るための肉体にチューニングするのは時間がかかるし、基本の動作を会得するのだって一朝一夜では身につかない。でもこれがないと一定レベルのパフォーマンスは披露できない。

舞台に上がるには、時にその権利を競うこともある。オーディションというやつだ。当然敗れることもある。

晴れて舞台に上がれることになり、振り付けを覚える段階に入れば、来る日も来る日も鍛錬を重ね、自分の目指す踊りは何か、表現したいものは何かを問い続ける。

思ったように踊れない自分とも向き合い続ける。スタジオの鏡越しの自分の動きはなんだかモッサリしている。あの人みたいに踊れない。言われた振り付けができないこともある。歯を食いしばって何回も同じ動作を繰り返す。

泣きたい日もあれば、心折れそうな日もある。残された時間を見て不安を覚えることもある。不安を取り除きたい?なくなるまで練習するしかない。

そうやって全てを終えて舞台の袖に捌けるまで、情熱を失わずに邁進し続けなければならない。

アマチュアであってもこれができなければ舞台には上がれない。

それを、他に運動やスポーツをやっていたわけでもない、経験値ゼロの70歳がやろうというのだ。

このドラマ、「老いとの闘い」と言えばいいのだろうか、これが結構シビアに描かれる。

過ぎ去って取り戻せない時間、あと残されている時間。
あと10年早く始めていれば。ドクチュルの言葉が切なく響く。

しかし、それでもやるというのだ。

70から始めたバレエはどこに行き着くのか。

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ドクチュルは、自分の体以外は順調だったのかというと、そういうわけでもない。

ドラマを3話ぐらいまで見たところでふと思い出したのは10年ほど前にみたこちらの映画だ。

そこまでシビアなものは見たくない、韓国ドラマは長い、という方にはもう少し気楽に見れるものとしてお勧めしたい。

2008年公開のスイスの映画、「マルタのやさしい刺繍」

こちらはおばあちゃんの物語で、長く連れ添った夫を亡くし、意気消沈していた80歳のマルタが、自分のランジェリーショップを持つというかつての夢を思い出し、奮起するというストーリーだ。

ドラマはバレエを全くやっていなかったのに対し、マルタは若い頃縫製をやっており、ランジェリーを作る技術は元々持っているので、新しい挑戦というより、一度やめたことへの再挑戦だ。

また、映画で語られる夢は「ランジェリーショップを持ちたい」=「ビジネスを始めたい」ということなので、どちらかというと起業ストーリーという感じがする。

ただ、若い頃に周囲に反対されて夢を諦めたこと、歳をとってもなお反対する家族がいること、やりたいことに対して白い目を向けるものがいるのはどちらにも共通している。

面白いのが、情熱を持って真剣に取り組んでいると、反対していたものも含めて、周りもそのポジティブなエネルギーに動かされていくこと

70歳でバレエを始めたドクチュルも、80歳で下着作りに再挑戦するマルタも、最初はそんなの無理だよ、と軽くあしらわれる。爺さんがパツパツのレオタードやタイツで踊るのは見苦しいとか、婆さんがある日突然ブラやパンティーをいそいそと縫い始めて気が触れたに違いないとか散々言われる。

でも、一生懸命取り組み続けていると、周りもだんだん変わってくる。

夢を応援したいとサポート方法を考えだす人、諦めた夢に再挑戦する勇気を貰えた人、自分も新しいことにチャンレンジしてみる人。

あるいは、自分も夢中になれることを見つけたいと今までの生き方を振り返る人。

主人公の夢へのアクションという一雫が、静かに、でも着実に、段々と大きなエネルギーになって、それに触れたそれぞれの人生もポジティブな方へと向かっていく。

水紋のように広がって、やがては見ている観客にまで届き、見終わる頃には小さなことでもいいから、何か始めたくなる。

人生、一度しかないのなら、やりたことをやらなければ。

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最後に、ナビレラ最終話のエンドロールで表示された大事なメッセージがなぜかNETFILXの日本語字幕で訳されていなかったので紹介したい。

このドラマが一貫して伝えたかったことだと思うので、これから見ようという人は、ぜひこの言葉を胸に最終話を見届けて欲しい。

지금도 늣지 읺았습니다.
일흔의 덕출이 그랬듯, 당신도 할 수있습니다.

今からでも遅くありません。
70のドクチュルがそうだったように、あなたにもできます。
                          -ナビレラ最終話-






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