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学校に行かないという選択。「続・僕はきっと旅に出る。」

急に、長男がひとり旅に出ることになった。その経緯はこちら。


「愛知と大分に行きたい。」

なぜ、愛知かというと、この日のトークイベントをしてくださった狩猟登山家の服部文祥さんと、写真家の石川竜一さんが「国際芸術祭あいち2022」に出展されるものを、直に観たいと。開催日程は、まだ少し先である。

なるほど。

で、なぜ、大分?と思ってパンフレットを開きながら話を聞くと、トークイベントに参加していたアーティストの方のガイドとして、開催される1泊2日のトレッキングツアーに参加したいというのだ。

へぇ~!・・・と思って日程を見てみると

・・・え?9日後?????

・・・急だねぇ。

だが、いつものことだ。

我が家で、大抵のことは、急に展開していく。今までもそうだったな、と思うので、私も、夫も、これくらいでは驚かない。

「行けるか、調べてみようか?自分でお小遣いからツアー代を出してでも行きたいならいいと思うよ。明日までに、本当に行きたいか考えてみて。日にちが迫ってるからね。」

そこから、夫は大分までの飛行機のルートを、私はトレッキングツアーの詳細を調べた。〈おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に方式〉の分業である。

新千歳空港から大分空港までは直行便がなく、羽田空港もしくは、成田空港で乗り継ぎが必要になるとのこと。地下鉄の乗り継ぎも今日が初めてだった長男。いきなり次は、飛行機の乗り継ぎである。

さらに、ツアーの集合・解散時刻からすると、参加当日に出発するのでは、集合時間に間に合わず、帰りもツアー解散後からでは、新千歳空港までの航空便がないことがわかった。

ツアーに参加するには、前後一泊ずつしなければならない。

あまりにも急であり、夫は仕事、私が同行するとなると、必然的に二男と末娘も一緒になる。大移動である。なかなか厳しい。

「行くなら、ひとりで、だな。」と夫が呟いた。

初めての一人旅。
初めての九州。
初めての飛行機の乗り継ぎ。
さらに、ひとりで前後に宿泊。
そして、一泊二日のトレッキングツアーにひとりで参加するわけである。

これだけ、心配・不安になる要素が満載なように思える事柄だが、私は思った。

た、楽しそう!!!!!!
いいな!ひとり旅!!!!

私は、長男をまったく心配していなかった。

さて、どこからどうアプローチをするか。

まず、一番大事なのは、長男の意思確認である。あらゆることを自分ひとりでクリアしつつ、大分まで行ってみたいのか。そこまでして行きたいわけではないのか。

あっさり、「ひとりでも行きたい。乗り継ぎもなんとかなると思う。ツアー前日と終わった日もひとりで泊まれる。日にちも迫ってるから、ダメだと思ってたけど、行っていいの?!」とのこと。やる気である。

何度も言うが、長男のことは、まったく心配していない。申し訳なくなるくらい、心配していない。彼なら、なんとかできると思っているから。どちらかというと、受け入れ先の方への確認が手間取るかな、と感じていた。

申し込みフォームの詳細には、参加資格は、「小学生~」となっていたので、頭ごなしに、参加不可、ではないだろう。

ツアー内容を確認すると、初日のツアーの終りが遅く、ホテルに戻るのが22時、翌日も6時半に出発、というものだった。食事は、ガイドしてくださるアーティストのオススメのお店で食べるのだそうだ。楽しそうである。

しかし、22時を小学生には遅い時間、と捉えるのも仕方ないだろう。小学生からの参加を認めているのは、記載はなくとも、〈保護者同伴〉が前提なのだろうな、と思ったが、まず、直接話してみないと詳細はわからない。

早速、ツアーに12歳の子がひとりで参加できるかを、企画した社団法人に確認するため、電話を入れることにした。

担当の方とお話すると、「小学生の参加も可能」ただし、「夜遅くなること、料理屋さんのような場所で外食をすること」「お酒などは提供されないので、それは子どもにも影響はないだろう」「小学生の参加が、法的にダメではない」とのことだった。ツアーの内容を理解して申し込みしてくれればダメとは言えない、という回答だった。歓迎ではないが、ダメとも言えない、という雰囲気だ。

「わかりました。夜遅くなること、ツアー中や、外食の際などに他の参加者の方に迷惑をかけることがなければ、問題ないということでしょうか。」と繰り返すと、「そうですね。そこを了承していただければ、法的にはダメとは言えないです。」と。

乱暴な言い方かもしれないが、この際、法律はどうでもいい。長男が、参加できればいいのだ。

よし!次!

次は、前泊・後泊できる宿を探すことである。集合場所が空港であったので、〈空港までアクセスが簡単な宿〉且つ、〈12歳の子どもをひとりで泊めてくれる宿〉である。空港までアクセスが良い宿はたくさんあるあかもしれないが、子どもだけで泊めてくれる宿がたくさんあるとは思えない。

「ダメなら、キャンプするよ。」と、長男。

いきなり見知らぬ土地でソロキャンやる気ですか。ソロキャンも実行したら、それも初めてのこと。初めて三昧だ。

残念ながら?空港近くの野営場はまだオフシーズンで閉まっているようだった。

なんにしても今の所、子どもをひとりで送り出そうと思える日本の環境は、ありがたい。これは、本当にあたりまえではないと、世界の様々な情勢を耳にするたびに感じる。

ゲストハウスであれば、〈子どものひとり旅〉などにも理解があるかもと思い、ゲストハウスに照準を合わせて調べた。

すると・・・あった!空港から徒歩6分のゲストハウス!

ダメ元で、問い合わせをしてみる。

・トレッキングツアーに参加すること、直行便がないので、ツアーの前後に宿泊の必要があること。
・12歳の小学生がひとりで宿泊可能か?ということ。

何かあったら宿では責任が負えないから、とか言われることもあるだろうと思いつつ、連絡をする。電話番号が載っておらず、メールで連絡をしたので、返信を待つ。返信が来るのが気になり、なんども確認してしまう。

すると、

「息子さんのひとり旅、応援します!いいですね!」とのこと。

八割方、断わられる覚悟をしていたので、あまりにも、あっさりと受け入れていただけて驚いた。

食事は付かない宿なので、自分で調達しなくてはならないが、空港にも食事ができる場所はあるだろうし、コンビニでもスーパーでも何か調達できるだろう。

食事の事を伝えると、長男は、「・・・外食が続くの辛いな。」と一言。

・・・あなたは、おかかえシェフがいるどこぞの国の王子ですか。


こうして、企画先、宿泊先の確認は取れた。あとは、航空券をおさえ、ツアーに申し込みをするだけである。


私は、念の為、ツアーガイドを担当するアーティストの方にも連絡していた。いただいたパンフレットを見て、大分のツアーに参加したいと言っています。もし、参加できることになりましたら、よろしくお願いします、というようなことを。

すると、アーティストの方から返信があった。

「参加したいと言ってくれてると聞いて驚き、嬉しいです。
念の為、主催者に連絡したら、ひとりでの参加は、年齢的に難しいと言われてしまいました。残念です。」

と、書かれていた。

私が確認したのは、〈旅行を企画した会社〉で、アーティストの方が確認してくださったのは、〈ガイドツアーを企画した主催団体〉と、互いの確認先が違っていたのだ。

その連絡を受けて、「旅行会社に確認し、その際にやりとりしたことも伝えた。しかし、企画側が〈難しい〉と言っている現状も、理解しました。とても残念です。」ということを返信した。

企画した主催団体に連絡してみようかとも思ったが、アーティストの方がわざわざ直接連絡してくれたのだから、それ以上ゴリ押しするやり方は好ましくないと思えた。何より、ガイドをするアーティストの方が板挟みになっては申し訳ないと思った。

せっかく、宿もOKをくれたし、旅行会社もやや渋々ではあったものの、ダメとは言わなかった。よし!と思ったところだったので、とても残念だった。

しかし、長男は、「え?ダメなの?」と言うものの、諦めた様子はない。淡々と大分の情報を調べ、「前の日は、美術館に行こうかな。あと、水族館もあるんだよね。」と調べたり、大分に生息している生き物のことを調べている。

なんだろう、この諦めない感じは。

その後、再びメールフォルダを開くと、アーティストの方から返信が来ていた。


「ツアーに参加出来ないのは、残念ですが、今、自分は沖縄に在住しているので、良かったら、沖縄に来ませんか。沖縄であれば、札幌から直行便もありますし。」

と書かれていた。

「一度電話でお話しませんか。」

メールはそう締めくくられていた。

続く。



学校に行かない選択をしたこどもたちのさらなる選択肢のため&サポートしてくれた方も私たちも、めぐりめぐって、お互いが幸せになる遣い方したいと思います!