ついに、ドクターストップがかかる│#8
この人生の舵を切れるのは自分だけ
救急車で運ばれた翌日のこと。薬をもらうために主治医のところへ行くと、
「それは大変だったね。でもこの件で限界だって気づいたでしょう? 診断書を出すから、とりあえず3ヶ月間は休みなさい」
と言われ、ドクターストップがかかりました。
心のなかで覚悟はしていたものの、いざとなるとなかなか踏ん切りがつかなくて。頭のなかであれこれ考えながら口ごもっていると、
「いまは疲れすぎているから正常な判断なんてつかないよ。考えるのはやめなさい。ゆっくり過ごしながらいろいろ整理したらいいんじゃない?」
先生は揺れる心を落ち着かせるために、ひとつひとつ丁寧に言葉を積み上げていってくれました。
「あなたは自分が休んだら周りに迷惑がかかるとおもっているでしょう。
それはそうなんだけどさ、でも新人が1人くらい居なくなったところで、痛くもかゆくもないんだよ。
極端な話、企業のトップが突然辞任したって、ちゃんと代わりの人が出てくるでしょう。組織っていうのは、歯車が欠けても回るようにできているんだから。
でもね、あなたの人生を生きられるのは、あなたしかいないの。あなたの代わりは誰も居ないんだよ。
だからちゃんと責任を持って、自分を元気に幸せにしてあげなくちゃ。ね?」
これまで、周りに認めてもらいたくて、「ここに居てもいいんだ」というお墨付きがほしくて
自分のことよりも、他人の都合ばかりを考えていたわたしにとって、そのアドバイスは衝撃的で深く心に残りました。
会社を長期間休む前にやっておくこと
診断書を会社に持っていき、事情を説明すると「すぐにお休みに入ってください」という回答をいただきました。
早くても1〜2週間くらい後になるとおもっていたので、準備ができておらずドタバタでしたが、お休みをいただく前にひとまず以下のことをやりました。
・仕事を引き継ぎ、持っている資料などをすべて預ける
・私物を持ち帰りデスクを綺麗にする
・部署の方々にお詫びのメールを送る、挨拶する
・休職の手続きに必要な書類を書く
・休職中にやること(定期面談や上司への報告の頻度など)を確認しておく
実は診断書を渡す前、上司に「退職させていただきたいです」と相談していたのですが
「労働者の権利なのだから気にせずに休んでください。
もし君が入社式の日から会社に来なかったら、すごく変わってる人だなあと思うけど、そうじゃないでしょ。
きちんと働いて、それで体調が崩れてしまったのだから、ちょっと立ち止まって休めばいいんです。マイペースにね。」
そう言って、休職というかたちを取らせてくださったのでした。
人一倍お忙しい方で、ほとんど接点が無かったのですが、時々かけてくださる言葉の端々からお人柄とあたたかさが伝わってきて。当時の上司にはいまでも心から感謝しています。
真昼の大都会の交差点で、号泣する
こうしてわたしは両手に大荷物を抱えて、会社を出ることになりました。
これから先、自分の人生はどうなってしまうんだろう? という不安や
いろんな方にご迷惑をおかけしてしまった申し訳なさや情け無さ
いろんな感情が溢れ出て、ビジネスマンやセレブな女性たちが行き交う大都会の中心で、声をあげて泣きました。
太陽がまぶしくて、街はこんなにも明るいのに、わたしの心は真っ暗だーー。
いま思い返すと異様な光景ですが(笑)、隣で黙って見守ってくれていた、同期の女の子の優しさもほんとうにありがたかったです。
そして退勤する前にこっそり、数人の先輩が声をかけてくださって。
「わたしも仕事をお休みしていた期間があったから、大丈夫だよ」
「健康が何よりの宝だよ。身体を大切にしてね」
人生で幅広い、奥深い経験をされていらっしゃる方こそ、人の痛みや弱さに寄り添うことができるのだなと学ばせていただきました。
いつか何かの形で必ず恩返しをしようと、心に決めたのでした。
たいへん励みになります!心のなかでスキップをしつつ、チョコとアイスを美味しくいただきます!