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何者かになりたい男が作家としてデビューすることになった話②

①:https://note.com/sumeragihiyoko/n/n9f2e26ec8f78

まずはじめに。
エッセイ更新日が月末なのは、書籍化に伴う作業を色々とこなしているというのもあるのですが、より良い作品を作るために勉強というか、修行している最中だからです。
流石に作品作りが優先だからね! 「遅いぞ!」という方がいたら申し訳ない!
許して!
『エルデンリング』買うのも我慢してるから!


ということで前回からの続き。

12年ぶりの大賞受賞作ということと、あの『涼宮ハルヒ』シリーズと同じ賞ということで、スニーカー大賞のことを漠然と「すごい賞!」としか思っていなかったのですが、編集長から重い事実を突きつけられます。

長「12年ぶりの大賞受賞ということは、スニーカー文庫としてもかなり重い決断なんですよね」
ひ「はい……」
長「スニーカー文庫にとっての『ハルヒ』がどんなものか、分かるよね?」
ひ「はい…………」

編集長、めっちゃプレッシャー掛けてくる。
このときから編集長のことは心の中で「プレッシャー魔神」って呼ぶようになりました。

でも編集長の言葉は、「スニーカー文庫」という巨大な看板を背負うことの意味を端的に表していました。
僕の失敗がスニーカー文庫の失敗に繋がる。
失敗できない。単なる成功ではダメだ。目指すは大大大大大成功のみ!

再び葛藤しましたよ、ええ!

しかも編集長、さらにプレッシャーを掛けてくる。

長「正直、現時点での完成度だけなら『異端少女』より上の作品はあったんですよね」
ひ「そうなんですか……」

さっきから心を折ろうとしてきてんの!?
こっちは無職やぞ!
無職は関係ないか。関係ないです。

でも褒めてもくれる。うれちい。

長「でもすめらぎさんの作品には可能性を感じた。作品自体の可能性もだし、スニーカー文庫のこれからの可能性も」
ひ「可能性ですか……」
長「うん」

可能性に期待。
つまり今から伸びなければいけないということ。
当然、他の受賞者たちも書籍化するまでに成長するでしょう。それを遥かに凌ぐ伸びを見せなければ、大賞受賞者には相応しくない!

そしてスニーカー文庫の新しい道を世に示さねばならない!
これからのスニーカー文庫は、ヤバい女の子がヒロインの作品だらけになるぞ、と!(そういうことではない)

うおお、やってやるぜ!!

長「それでも大賞受賞を引き受ける覚悟がありますか?」
ひ「はい!」

って勢いよく返事したのは嘘です!
見栄張って捏造すれば「格好いいすめらぎひよこ」になれたのかもしれませんが、めっちゃごにょごにょしました! えへへ!

ひ「はい……って言っても軽々しく聞こえるというか、その……本気ではあるんですけど……」

こんな感じです!

他の受賞者たちとともに『これからのスニーカー文庫を担う』という大事業に挑戦するという訳です。
嫌なことから逃げまくってた社会経験ゼロの甘ったれ無職ボーイがですよ!?

やる気はもちろんありました。
でも大きな責任を背負って何かを成し遂げられるかは未知数なんですよ。

でもここまで期待されて逃げたら、それこそもう変われないと思いました。
何回葛藤してんだよって話ですが、僕は格好良くない人間なのでこんな感じです。
追い詰められてから尻叩いて、なんとか踏ん張ってます!

でも最終的にはちゃんと返事しましたよ!

ひ「やります! やってみせます!」
長「その言葉が聞きたかった! あなたを大賞受賞者と認めます!」

前回書きましたけど、この電話でのやり取りはトイレで行われました。ごめんなさい、編集長。


その後、僕を担当してくれる編集者から連絡がありました。
リモートで顔合わせがしたいということと、『異端少女らは異世界にて』の世界観や主要キャラの設定を事前に見せてくれないか、ということでした。

世界観もキャラ設定も自信がありました。ぽっと出てぽっと死ぬ悪役の過去(本編では全然描かれない)まで考えてましたから。

いそいそとまとめて提出!

んで、顔合わせ!

僕を担当してくれる編集者さんは、編集長から「うちのエース」「僕より忙しい」と紹介されていたので、身構えていました。
が、モニターに映し出されたのは生まれたての小鹿でした。

僕と同じ、やる気には満ち溢れているけど、重責を前に武者震いしてるのかビビってるのかよく分からない状態の人です。
生まれたての小鹿と生まれたての小鹿が邂逅した瞬間でした。

そんなこんなでミーティング開始。
なんとこのミーティング、5時間続きました。
開始時刻が夕方の5時、終了時刻は夜の10時過ぎ……!
とにかく熱量がすごい人だった!


まずは普通に自己紹介しました。僕の自己紹介だけでなく、担当さんの自己紹介も。

その合間合間に訳の分からん会話を挟む。

担「僕はブチャラティで、あなたはジョルノ・ジョバァーナなんです」
ひ「僕が、ジョルノ……!?」

作家としてやっていく「覚悟」があるかという話が発端だったんですが、その前に『ジョジョ』シリーズでどれが好きかという話で盛り上がったことも発端だったんでしょう。
ブチャラティやジョルノが登場するジョジョ5部といえば特に、確固たる「覚悟」を持っている人物が多いですよね。5部好きです。
多分そんな感じで、唐突にこんな流れになりました。

ブチャ「そうです! あなたは黄金に輝く新人なんです!! そしてそんな貴方を僕が導きます!!」
ジョルノ「黄金……体験……!?」

なんなんやこの会話は。
マジで変な人でした。

こうして僕はジョルノ・ジョバァーナになりました。よろしくお願いします。
でも『ジョジョ』で一番好きなスタンドはギアッチョの「ホワイトアルバム」です。


自己紹介が終わってからは、事前に提出した設定集に対する談義でした。こっからが熱い!

結構自信があったんですけどね、疑問点や改善点が次から次へと出るわ出るわ……!
頭の中では分かってるけど言語化出来てないっていうのも多かったんですが、話を聞いていると自分の癖というか、傾向が見えてきました。

一貫性が足りていなかったり、設定の根拠が弱かったりなどが主ですね。本当に根っこの根っこ部分まで作り込まないといけない。それこそ、そのキャラの人生を考えなければいけないレベルで。そういうところが足りていませんでした。

その設定を本編で描写するしないに関わらず、しっかりとした芯があればそれが描写の細部に表れる、ということです。
僕も描写しない部分まで考えてたんですけど、その比じゃないくらい解像度を上げなければならなかった。

自分の弱点を理解していくのは結構こたえましたね……。幸い、致命傷で済みましたけど。
ちょっと自信を持ってた自分が情けなく思えました。

でも逆に「こんなにも伸び代があるのか!」って燃えた。
これ以上面白い作品作れないだろうと情熱を注いだ作品が、さらに面白くなる可能性を秘めているということですからね。
自分がこれからどれだけ成長出来るのか、想像するだけでワクワクしました。

ここをどうにか出来るか否かで、僕のスタンドが「ゴールド・エクスペリエンス」から「ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム」に成長出来るかどうかが分かれているんです(『ジョジョ』知らない方、置いてけぼりでごめんなさい)。

相当有意義な5時間でした。疲れたけどね!


そして今後の予定を決めてミーティングも終わろうかという頃、衝撃的な一言がブチャラティから飛び出す。

担「じゃあ、そろそろ終わりましょうか」
ひ「そうですね〜、もう5時間経ってますし」
担「それじゃ、次回は○日ということでお願いします。いやぁ、今日すめらぎさんとお話できて本当、楽しかったですよ。でもまだ大賞『候補』ですからね、これから頑張ってください!
ひ「はい!」

………………はい?

……候補?

まだ大賞「候補」なの……!?

おのれプレッシャー魔神!!! まだ候補やないかい!!!

ひ「まだ『候補』なんですか!?」
担「そうですよ。大賞受賞するためには、このライターの火を消さずに24時間持ってもらいます」
ひ「ポルポの入団試験じゃないっすか……。スニーカー文庫ってパッショーネだったんですね」

この人ジョジョネタやりたいだけやな……。

ひ「あの、具体的には何をすれば……」
担「それは秘密です(ニチャア)」

試されてるううううううううううううううううッ――!

でもまあ、今の実力ではなく伸びしろに期待されてるので当然といえば当然。
つまり、これから本当に成長出来るか否かを問われているということ!

やることは決まってます。
いい作品を作るための土台作り、設定の掘り下げです!
ここで担当さんを唸らせ、文句なしの大賞受賞者になってやる!!
それが黄金に輝くためのワシの『覚悟』じゃ!!!


なお後に明かされたのですが、大賞受賞の基準は設定作りだけじゃなかったです。めっちゃ色々な部分を見られてました。
あなおそろしや……。


次回:料理は美味しいのに客がいない料理屋 に続く

https://note.com/sumeragihiyoko/n/n7d0b9d6d0036

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