かわい翠泉

星よみセラピスト、星よみライター。 普段は、ホロスコープ、タロット・オラクル、カラーカ…

かわい翠泉

星よみセラピスト、星よみライター。 普段は、ホロスコープ、タロット・オラクル、カラーカードを用いてセラピーセッションを行っています。 アメブロにて、毎日の星よみもアップ中。https://ameblo.jp/suisen-k

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【小説】アルカナの守り人(1〜7)

【小説】アルカナの守り人 をまとめています。 一気に読みたい方はこちらからお願いします。                  <1.フウタ> 朝からテレビのニュースは同じ事を繰り返してる。  最近流行っている奇病のニュースだ。犠牲者の多くは、なぜか幼い子供たち。  その奇病にかかると、体温がどんどん下がり始めるらしい。免疫力が下がり、最後は冬の鉛色の空の色になって死んでいく。原因も発生場所も不明。とにかく謎の多い奇病だった。フウタは、そんなニュースを上の空で聞いていた

    • 【小説】アルカナの守り人(27~36)

      <3.マザー>  孤児院の建物は、赤いレンガと石壁を組み合わせて建てられたものだった。赤色は緑色と補色の関係にあるので、遠くから歩いてくる時、この建物は、周りの緑の中でよく映えていた。ところが、実際、目の前に立つと、なぜか周り緑に溶け込んで見えるから不思議だ。塀と同じく所々から植物が生えているせいなのかな…と、フウタは思う。  木製の大きな両扉には、美しい木彫りが施されている。上部には、こぼれ落ちそうな花々とそれを包み込む葉。下部には、両ひざをつき、祈りを捧げる少女が、向

      • 【小説】アルカナの守り人(36) マザー

        マザーの部屋を出て、正面入口にあるロビーへ戻り、そこから逆方向に伸びる廊下を進んでいくと、大きな扉に突き当たる。  そういえば、ここの扉は、いつも鍵がかかっていて、中に入れなかったんだよなぁ。どうにか入ってやろうと、何度かチャレンジしてみたことはあるんだけど…。その度に、マザーに見つかって、こっぴどく叱られたんだよな──。    マザーが、扉の鍵を開けて、中へと入っていく。初めて入ったその扉の先には、螺旋状の階段があり、下へ下へと続いている。部屋ではなかったことに驚きつつ、

        • 【小説】アルカナの守り人(35) マザー

          「ちょ、ちょちょちょちょっと、何してんだよ! やめろ、服を脱がすな! 印なんて、ないよ! どこにもないって!」  フウタは、二人の手を夢中で引き剥がすと、乱れた服を整えながら、慌てて、数歩後ろに下がる。 ここには、ヒカリもいるっていうのに、何してくれてんだ、この二人は! 「まさか──、本当に能力が顕現してないっていうのかい?」 「そうだって、言ってるだろ。俺にアルカナの能力はないし、探したって、印もないって!」 「ふーむ。──おかしいねぇ。そんなはずはないんだが…─

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        【小説】アルカナの守り人(1〜7)

          【小説】アルカナの守り人(34) マザー

          「──さて、そうと決まれば、当然、おまえたちにも手伝ってもらうよ。」 「はい! もちろんです。」 「ああ──。」 「やってもらいたいのは、薬の材料を集めてくることだ。この薬を作るのに、特に外せない重要な草花を、それぞれ集めてきてもらおうかねぇ。」 「まずは、ヒカリ。──おまえには、『憂いの沼』から『万象の睡蓮』を採ってきてもらおう。これは、時間帯によって色を変える特性を持つ睡蓮だ。しかし、他のものとは、明らかに違う『輝き』を持つものだからね。よく観察して見極めてくるんだ

          【小説】アルカナの守り人(34) マザー

          【小説】アルカナの守り人(33) マザー

          「──ふーむ、なるほどねぇ。流行りの病に、まさか、アルカナの能力が絡んでいたとはね──。」 「はい…。──あ、あの…、何かご存知ではないでしょうか? ヨウを…、太陽のアルカナを持つ弟を助ける方法を…。例えば、この古本に書かれているメッセージはどうですか? 以前、聞いたことがあるといったことは──?」  そう言って、ヒカリは、持参した古本を広げて、例のメッセージが表れたページを開く。 スペス リベルタティス ラティティア    (自由と希望が喜びをもたらす──)  マザ

          【小説】アルカナの守り人(33) マザー

          【小説】アルカナの守り人(32) マザー

          「──なんで、そんな大事なこと隠してたんだよ。 今まで、そんな話…、全然言ってくれなかったじゃないか──。」  心なしか、責める口調になってしまう。これじゃまるで、拗ねてるただの子供だ。落ち着け、俺──と思うものの、一人だけ蚊帳の外のようなこの状況。納得できねぇ!   「何、言ってんだい、おまえは…。確かに、これまで、はっきりと能力の話はしたことないよ。でも、私たちが能力を使っているのは、目の前で見てきていただろうに──。こっちは、隠してなんか、いやしないよ。」 「そうよ

          【小説】アルカナの守り人(32) マザー

          【小説】アルカナの守り人(31) マザー

          真っ先に、反応したのは、ヒカリだった。 「は──、はい! そうです!」 「は──? え──? 『まもりびと』…?」 「──『守り人』というのは、私たち、アルカナの能力者に対する呼び名の一つです。」    ヒカリが、丁寧に教えてくれる。 「──えっ、なんでマザーが、その『守り人』なんて言葉知ってるんだ? しかも、ヒカリが守り人って…? えっ???」 なんか、俺だけ話についていけてない──。 「まったく──、鈍い子だねぇ。こっちは、てっきり、分かっていて来てるんだと思

          【小説】アルカナの守り人(31) マザー

          【小説】アルカナの守り人(30) マザー

          「なんだい、ミクス! いきなり、話の腰を折るんじゃないよ!」 「──だって、私も、フウタに同じことされたのよ~。私だって、そんな『お話』するの、とっても楽しみにしていたのに! マザーばっかり楽しむなんて、そんなのずるいわ。──もう、本当に、フウタは意地悪。やっと女の子を連れて来たんだから、ちょっとは、楽しませて──って。あ~、こほん──。」    フウタのジト目に気づいたミクスが、慌てて、口をつぐむ。 「まったく─。おまえがそう、揶揄う気満々だから、フウタもここに連れてき

          【小説】アルカナの守り人(30) マザー

          【小説】アルカナの守り人(29) マザー

           「──おや、やっときたのかい? 随分と、顔を出すのが遅かったじゃないかい?」   部屋の中ほどまで進んだとき、そんな声が聞こえて、フウタは、苦笑する。 「──なんだよ、俺が来てるって、気づいてたのかよ」  声がした方向に目をやると、大きな窓を背景に、のんびりとカウチでくつろぐ女性がいる。柔らかそうな辛子色の髪を無造作に一つに編み込み、着心地の良さそうな、ゆるりとしたワンピースに身を包んでいる女性──、いつものように、暖かな笑みを浮かべているマザーがそこにいた。 「いや

          【小説】アルカナの守り人(29) マザー

          【小説】アルカナの守り人(28) マザー

           いくつかの扉の前を通りすぎ、廊下の一番奥まで来ると、フウタは立ち止まった。   一番奥の部屋──、マザーの部屋の扉は、常に大きく開かれている。 いつでも、好きに出入りしていいよ──、いつでも、歓迎するよ──。 ここに戻ってくるたびに、そう言われているようで、フウタは安心し、嬉しく思う。長い間、大切に使われてきたことが分かるテーブルやソファ、アンティークの品の良さそうな花瓶やランプ。 相変わらずの見慣れた景色に、ふっと笑みが溢れる。 「ここが、マザーの部屋だよ。」  

          【小説】アルカナの守り人(28) マザー

          【小説】アルカナの守り人(27) マザー

           孤児院の建物は、赤いレンガと石壁を組み合わせて建てられたものだった。赤色は緑色と補色の関係にあるので、遠くから歩いてくる時、この建物は、周りの緑の中でよく映えていた。ところが、実際、目の前に立つと、なぜか周り緑に溶け込んで見えるから不思議だ。塀と同じく所々から植物が生えているせいなのかな…と、フウタは思う。  木製の大きな両扉には、美しい木彫りが施されている。上部には、こぼれ落ちそうな花々とそれを包み込む葉。下部には、両ひざをつき、祈りを捧げる少女が、向かい合っている。中

          【小説】アルカナの守り人(27) マザー

          【小説】アルカナの守り人(19〜26)

                        <幕間>  風で木々が揺らめいている。時折、その木々の隙間から光が差し込み、ちらちらと顔を照らしてくる。  フウタは、眩しそうに目を細めながら、空を見上げた。上空では、鳥たちが忙しなく飛び回り、視界から消えては現れるを繰り返している。フウタは、大きく深呼吸をした。人工的な光源に「造られた風」だとしても、植物は、問題なく育っている。お陰で、ここはいつでも空気がうまいんだ。フウタは、思いっきり伸びをすると、再び、大きく息を吸い込んだ。  ここは、S

          【小説】アルカナの守り人(19〜26)

          【小説】アルカナの守り人(26) 幕間

          「うふふ。とりあえず、一件落着で良かったわ〜。──それじゃぁ、みんな〜、いつものように、食堂までカヂクの実を運んでね。 悪いけど、ザイルたちの分もお願い〜」  ミクスは、残った子供たちに指示を出すと、カヂクの実の山の前にしゃがみこむ。慣れた手つきで、小さなカゴの中にその実を振り分けていく。 子供たちも一人ずつカゴを受け取ると、列をなして、仲良く建物の方へと歩いていった。ここにはいつもの日常があった。 この景色は、あの頃と変わらないんだな──とフウタは思う。 「──それで

          【小説】アルカナの守り人(26) 幕間

          【小説】アルカナの守り人(25) 幕間

          「──っ! やめろよっ── 実が…、実が勿体無いだろっ。」 ──慌てたように、ザイルが止める。 「え── ? ああ、でも、この実を割ったら、きれいな黄金色が──」 「そんなの見なくていいよっ。──なんだよ、お前。余計なことをしやがって──。」 「──うん? 余計なことって?」 「な、なんでもないよ。──とにかく、実を割るのはダメだからなっ。」  ザイルの必死な抵抗に、フウタは、「やっぱりなぁ。」と予感を確信に変えていく。思わず、口元が緩みそうになるが、ここは、心底

          【小説】アルカナの守り人(25) 幕間

          【小説】アルカナの守り人(24) 幕間

          「──ったく、そんなことより、なんか揉めてるんじゃないのか?」 「えっ──。あ、そうね。まぁ、いつものことなんだけど〜。フウタなら、察しがついているでしょ〜。」  ミクスは、現状を思い出したが、焦る様子もなく、のんびりとフウタに問いかける。 「まぁな──。」  フウタは、ちらっと、子供たち、そして、カヂクの実の山を見ながら答える。 「──カヂクの実の収穫を手伝いながら、どっちがより多く獲れるかを競ってたってことだろ。それで、勝った方は…、相手のおやつを頂戴できるって

          【小説】アルカナの守り人(24) 幕間