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【小説】アルカナの守り人(28) マザー


 いくつかの扉の前を通りすぎ、廊下の一番奥まで来ると、フウタは立ち止まった。
 

一番奥の部屋──、マザーの部屋の扉は、常に大きく開かれている。
いつでも、好きに出入りしていいよ──、いつでも、歓迎するよ──。

ここに戻ってくるたびに、そう言われているようで、フウタは安心し、嬉しく思う。長い間、大切に使われてきたことが分かるテーブルやソファ、アンティークの品の良さそうな花瓶やランプ。
相変わらずの見慣れた景色に、ふっと笑みが溢れる。

「ここが、マザーの部屋だよ。」

 フウタは、右手の親指を軽く振りながら、ここ、ここ!と指し示す。

「────。」

 ヒカリは、こくりと頷くも、声を出さなかった。顔が強張っているので、少し、緊張しているようだ。
 
 初対面の相手に会う前って考えたら、よくある反応とも言えるけど、ヒカリの場合は、ヨウに関しての手がかりを期待しているはずだからな。期待と不安が入り混じって、緊張してきたんだろう──。
 
 フウタは、その緊張をほぐすように、ヒカリの背中を軽くポンっと叩く。
 
「──さぁて、マザーは元気かなぁ?」

 そして、お気楽な声を出しながら、部屋の中に入っていった────。




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