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【小説】アルカナの守り人(31) マザー


真っ先に、反応したのは、ヒカリだった。

「は──、はい! そうです!」

「は──? え──? 『まもりびと』…?」

「──『守り人』というのは、私たち、アルカナの能力者に対する呼び名の一つです。」
 
 ヒカリが、丁寧に教えてくれる。

「──えっ、なんでマザーが、その『守り人』なんて言葉知ってるんだ? しかも、ヒカリが守り人って…? えっ???」

なんか、俺だけ話についていけてない──。

「まったく──、鈍い子だねぇ。こっちは、てっきり、分かっていて来てるんだと思っていたよ…」
 
 マザーは、そういうと、左の手首から、いつも身に付けている籐で編まれた太めのバングルをスルッと外す。そして、こちらによく見えるように、腕を差し出した。

 マザーの手首の内側には、確かに、ヒカリと同じような奇妙なあざがある。これは、NO. III…か。

「──分かっただろ? 私も守り人なんだよ。ちなみにいうと、あの子もね──。」

マザーは、外したバングルを付け直しながら、ミクスに顔を向ける。ミクスは、はぁいと手を振っている。

「私の印は、ちょっと見せにくいところにあるから~、こっちでいいかな~?」

 そういうと、シルバーに輝くカードを手元に出す。
カードの表には、片足を、神聖な泉の中にいれ、大きなカップを左右の手に持ち、中身の液体を丁寧に移し替えている、大きな翼を広げた美しい天使が描かれていた。以前、ヒカリが、能力を見せてくれるときに使っていたカードに似ている──。大きな力が秘められているのを感じさせる、アルカナの能力者が持つカード──。NO.は、XIV──。

「────…。」

──今の俺、相当、間抜けな顔をしていると思う。まさに、絵に描いたような「あんぐり」って顔をしているだろう。ずっと、身近にいた人が、実は、すごい能力を持っていて、しかも、それが、二人…。マザーだけじゃなくて、ミク姉も…──⁉︎
 
 ヒカリが興奮気味に、『私は、No.XVII です!』とか言いながら、首元のあざを見せているのが、目に映る。何かしら、ヨウを助けることに繋がる情報が手に入れば…と来てみれば、そこに同じアルカナの能力者がいたわけだからな、そりゃ、期待値もマックス、テンションも上がるってもんだ。


 それに引き換え、フウタは──ものすごく裏切られた気分に陥っていた。




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