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【小説】アルカナの守り人(34) マザー


「──さて、そうと決まれば、当然、おまえたちにも手伝ってもらうよ。」

「はい! もちろんです。」
「ああ──。」

「やってもらいたいのは、薬の材料を集めてくることだ。この薬を作るのに、特に外せない重要な草花を、それぞれ集めてきてもらおうかねぇ。」

「まずは、ヒカリ。──おまえには、『憂いの沼』から『万象の睡蓮』を採ってきてもらおう。これは、時間帯によって色を変える特性を持つ睡蓮だ。しかし、他のものとは、明らかに違う『輝き』を持つものだからね。よく観察して見極めてくるんだよ。」

「はい、マザー。──頑張ります。」

「それから、フウタ。──おまえは、『惑いの木立』の先にある滝の下から、『タイガークロー』を採っておいで。これは、その名の通り、トラ模様が特徴的だから、すぐに分かるだろう。ただし、採取したら、できるだけ早く戻ってくるんだ。とてもエネルギーが強い草なんだが、採取した瞬間から、急激に力が抜けていく。鮮度が命だからね。」 

「──わかった。」

「いいかい──二人とも。最後まで、自分を信じて。──アルカナの能力も、フルに生かしてくるんだ!」

 マザーの言葉に、しっかりと頷くヒカリ。

 しかし、その一方で、フウタは戸惑っていた。さっきから、話はすんなりと進んでいるけどさ、何か、お忘れではありませんか?と──。

「い、いや、マザー。ちょっと待ってよ。ヒカリは、アルカナの能力があるけどさ。俺は──…、」

「ああ、そうだったね。──フウタ、おまえの能力について、聞いていなかったねぇ? で、結局、おまえの能力はどんなもんなんだい? 私的には、NO.0 の『愚者』あたりだと思っているけどね──。」

 さも、当然のように言ってくるマザーに、フウタは、困惑する。
しかし、あまりにも的外れな発言に、若干の笑いが込み上げてくる。

「は?? ──いや、俺には、アルカナの能力なんてないよ? 知ってるだろ──?」

まったく、どういう冗談だよ──。
軽く笑みを浮かべながら、そう答えるフウタだったが──。

「──…えっ? なんだって??」

 真顔で驚き、そのまま固まっているマザーの予想外の反応に、え?──と混乱する。

 マザーは、腑に落ちない顔で、フウタをまじまじと見つめていたが、ハッと我に返ると、「ミクス!」と一声かける。

そして、カウチから立ち上がると、フウタに近づき、ぐいっと胸ぐらを掴んだ。

 「あれだね。きっと、自分で見つけられない場所に、印があるんだろう。どれ、私とミクスに任せな。ちゃんと探してあげるから──…。」

とかなんとか言いながら、服を脱がそうとしてる? ていうか、ミク姉も、なんで楽しそうにしてるんだよ!




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