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【小説】アルカナの守り人(35) マザー


「ちょ、ちょちょちょちょっと、何してんだよ! やめろ、服を脱がすな! 印なんて、ないよ! どこにもないって!」

 フウタは、二人の手を夢中で引き剥がすと、乱れた服を整えながら、慌てて、数歩後ろに下がる。

ここには、ヒカリもいるっていうのに、何してくれてんだ、この二人は!


「まさか──、本当に能力が顕現してないっていうのかい?」

「そうだって、言ってるだろ。俺にアルカナの能力はないし、探したって、印もないって!」

「ふーむ。──おかしいねぇ。そんなはずはないんだが…──。」

 マザーは、独り言のようにそう呟くと、考え込んでしまった。マザーの中では、何かしらの確証のようなものがあったんだろうけど、こればかりは仕方ない。ないものはないんだから。

 マザーも結局は、同じ結論に至ったのだろう。ふぅとため息をつくと、

「それじゃ、おまえには、これを渡しておくよ。何かあったときに、対処する力はあった方がいいだろうからね。」

 手首から、身につけていた籐のバングルを外し、フウタに手渡す。

「これには、私の『育む力』が込められているからね。まぁ、使う機会はないだろうが、お守り代わりに持っていればいいさ。」

「ああ、ありがとう、マザー。」

 さらに、

──あっ、それなら…

 そんな声が聞こえて、振り返ると、ヒカリが、首元のネックレスを軽く握りながら、何か唱えている。そして、淡い光を醸し出しているネックレスを、首元から外すとフウタに差し出した。

「これも、持っていってください。私の癒しの力を込めました。」

「おお─、助かるよ。ヒカリ。」

「──うむ。このくらいサポートがあれば大丈夫だとは思うが…。後で、もう一つ、送ることにするかねぇ。間に合うように祈っといてくれ。」

 マザーは、ニヤリと笑うと、「さ、こっちだよ。」と、二人についてくるように促した。




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