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何が問題なのか?

仕事とは、誰かの課題を解決することである

よく耳にする言い回しである。
営業経験が長い私は、この言葉に対する納得感は強い。
新人の頃、『顧客の課題解決をしてこい!』と言われることが多々あった。しかし、私は課題解決の難しさに悩まされていた時期があった。

顧客の希望をかなえようとすると、課題解決が行えないのだ

どういうことなのか?

かつて、家庭教師の営業をしていたときのことだ。
営業の場面ではほとんどの場合、課題どうこうの前に、前提として以下のような希望をもつご家庭がほとんどだった。
それが、

『授業料は月15,000円以下で検討しています』

といった、授業料の希望。
これが大きな障害となる。

家庭教師は集団塾と比べて授業料が割高になるケースが多い。
しかし、比較対象は集団授業を行う塾となるため、授業料についてもおよそ集団塾の授業料を基準に考えている場合が多いのだ。

気持ちは、わかります。

結局、当時の私は『予算の折り合いがつかずに失注となりました』と上司に報告する日々が続いた。

無尽蔵にお金があるなら構わないが、どのご家庭にもそれぞれの生活がある。払えないものは払えないのだから、それを無理やり払ってくださいというのもおかしな話だ。

かといって、15,000円で家庭教師を派遣したところで、学生のバイト教師が週に1回、1時間の授業をする程度にしかならない。
これで成果が出るのであれば、既に成績は爆あがりしているはずであり、そもそも家庭教師の指導に興味をもつこともないだろう。
成果は出ないだろうが、希望の授業料で家庭教師をつけることは可能になる。

そんなことを思いながら、増えない売上と、課題解決できない自分の不甲斐なさに苛まれていたとき、上司からこんな質問をされた。

「そのお母さんは、安い塾を探したいの?子どもを志望校に合格させたいの?」

「え?もちろん、両方だと思いますけど…」

「じゃぁ、それを実現させる方法は、どこかに存在しているの?」

「えっと…現在のお子さんの成績から考えると、私の経験上存在していないと思います。」

「そしたら、存在しない白いカラスを探し続けますって言われたのを理解したうえで、頑張ってくださいって送り出したわけ?」

……ん……"(-""-)"

これは例えるのであれば、「お金は500円しか持っていませんが、フランス料理のフルコースを食べたいです」と言われているに等しい。
確かに出せる費用には限界はあるが、かといって課題を放置していいと言われたわけではなかった。

あれ、親切だと思っていたのに、悪いことをしていたのではないか?

これに気づけたのが大きかった。

営業は、顧客の希望を叶える必要がある。
同時にプロの視点から見た顧客の課題を冷静に分析し、適切な解決策を提示する義務がある。
もちろん、その提案が受け入れられない可能性はある。
しかし、だからといって、課題に真正面から向き合わなくていいということにはならない。

私は、強引な営業は嫌いだ。
しかし、本当のことを言わない営業は、もっと嫌いだ。

課題解決にはプロとしての知識や経験のほかに、相手を思いやる勇気と優しさを必要とする。

希望を最優先にすることなく、きちんと顧客の課題に向き合う提案を行うこと。
あたりまえの話ではあるが、あたりまえだからこそ今一度、自分自身を振り返る機会を設けてほしいと思う。


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