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☆一部無料公開キャンペーン☆【ビジネス書籍】「社員が自主的に育つスゴい仕組み」

こんにちは。末永イノベーション経営の広報です!
今回は、Twitterフォロワー様100人達成記念として、弊社代表 末永春秀の書籍<一部無料公開>の第1弾になります!

『社員が自主的に育つスゴい仕組み』―末永 春秀
出版社:幻冬舎メディアコンサルティング
発売日:2015年10月27日
☆Amazon 11月「企業革新分野」1位 「マネジメント・人材管理分野」2位    紀伊国屋書店(全店)ビジネス書ランキング 1位(12月29日~1月4日)

本書は、経営層・マネジメント層に向けた「社員育成の仕組みづくり」について解説しております。
人材育成は、経営者にとって最も重要な課題の一つです。
多くの企業では社員が期待通りに育っていないことが現実にあります。
厚生労働省の調査によると、人材育成の成果が出ていると思う経営者はわずか”2割”ほど。
これほどまで企業の人事育成が進まない理由としては、
人事育成を託された現場に、それを遂行できるまでの”余裕”がないこと。

「時間が足りない」「担当する人が足りない」「日々の作業で限界」・・・
そんな現場の育成環境が厳しいなか、現場の教育負担を最小限にして、社員が自主的に成長していくような仕組みをつくることはできないものでしょうか?

著者である弊社代表(末永春秀)は、これまで約30年間で、人材育成・人事制度改革・経営幹部育成に重点を置いたコンサルティングで、企業のほか、医療法人・会計事務所・法律事務所など約250社の経営改善を実現してきました。
その経験から断言できるのは、社員が「自主的に育つ仕組み」をつくることはそれほど難しくないということです。
以下2つのポイントを押さえることで、社員のモチベーションの向上、長期間のOJTがなくとも育っていきます。

1.長期的な”人材育成のグランドデザイン”を社員と共有すること。
2.社員の主体性を促すような”未来志向型の人事考課”を設定すること。

本書の流れとしては、「人が育たない組織」の経営者が持つ15の共通点をあげ、現行の「旧来型指導」と「儀式的人事考課」では、優秀な人材もつぶしてしまう危険性を喚起。
解決策として、企業理念を現場レベルに落とし込んだ人材像を策定することで、自主的に社員が育つ道筋ができることを示しております。
さらに社員の主体性を促す「未来型・人事考課」の組み立て方を実例を交えて紹介。
”どのような業種”でも効果を発揮する社員育成の仕組みづくりについて、具体的に解説します。
「経営理念を浸透させるのはどうしたらいいのか?」
「効果的な人事面接とはどういうものか?」など
事例もふんだんに盛り込んでおります。

経営者の方は勿論のこと、新たに部下をマネジメントすることが求められる方、人事担当の方、今後のキャリアパスにおいて管理職を目指す方々など
ビジネスに携わるあらゆる方にとって役立つ一冊
となっております。

まず第1章では、人が育たない組織によくある「経営者のケース」をあげます。


ー 第1章「人が育たない組織」の経営者が持つ15の共通点 ー

「何をやっても社員が育たない」と嘆く経営者

「部下が伸びない」「人材が育たない」と嘆く中小・中堅企業の経営者は少なくありません。本当は大企業も実情は同じなのですが、従業員の数が少なく、少数精鋭で業績を伸ばしていくことが必要な中小・中堅企業においては、大企業以上に、早期に、人材を育成し、実力をつけさせ、さらには、いち早くいいリーダーに育ってくれることが必要なことは言うまでもありません。
そこで多くの経営者が、役員や管理職にハッパをかけ、声を枯らすほどに話をし、研修もし、社員とのコミュニケーションに時間をつくっています。「わが社は人材育成に力を入れている」と宣言する経営者も少なくありません。嘘ではなく、実際に必死です。

しかし、人材を育成するというのは、遠い道のりを歩き続けるようなもので、決して簡単なことではありません。人材をいかに育成するかという前向きのノウハウを学び、それを実践することはもちろん大切ですが、実はその前にやるべきことがあるのです。
それは、現状において、人材が伸びない理由を探るという作業です。人材育成の上での阻害要因を明確にし、できるだけ、その要因を取り除くことです。

経営者自身が気づかない人材育成の落とし穴

実は一番の問題は、人材育成に熱心に取り組んでいる経営者自身の言動にある場合が多いのです。
会社の業績を何とか維持し向上させたいと必死になるあまり、あるいは人材育成についての確かな考え方や方法がなく、はたまた知らず知らずに自分の感情を押しつけてしまっている⋯⋯。その結果、人材を育成するどころか、場合によっては社員のモチベーションを阻害し、むしろ人材を萎縮させてしまっていることもあるのです。

ここではまず、経営者自身が気づいていない、人材育成の落とし穴を15のパターンに分けてご紹介しましょう。

「人が育たない組織」の経営者が持つ15の共通点

1.経営理念の重要性を強調するが自ら実践する姿勢がない

経営理念は、その企業の社会における存在意義を示したものであり、全従業員が何のために仕事をするかを方向づける、とても大切な拠り所です。その理念を具現化するためのフィロソフィ、仕事像や人材像、クレドなどをつくって、組織に浸透させる努力をしている企業も少なくありません。
しかし、朝礼や会議で唱和していても、単に声を出しているだけに終わっているケースもあります。また、その経営理念が額に入っているだけで、お飾りとなっている企業も多いのです。

現実の場面ではその経営理念が顧みられることはなく、結果として、理念とはかけ離れた判断が行われている。そうした会社は少なくありません。仕事の現場で活きていないのです。経営理念が書かれたカードなどを持っているかどうか、暗記しているかどうかが問題ではありません。その理念を理解して、実際の仕事に、その時々の判断に、それこそ清掃から意思決定に至るまで、業務の隅々に活かしているかどうかが問題なのです。
たとえば経営理念に「顧客満足」とあるだけでは、何が顧客満足にあたるかは社員それぞれです。さらに、「それは当たり前だ」と思ってしまえば、あえて顧客満足を気にすることもなくなるでしょう。顧客満足についてのバラバラの理解が仕事の品質の差を生み出します。理念を掲げただけでは、現場で活かしきることはできないのです。

経営理念が形骸化してしまう最大の理由は、経営者が、経営理念を自分への誓いとして率先垂範する姿勢に欠けていることです。社員にとって、経営者の行動を見てなるほどと思うような実践がないのです。もちろん、経営陣にも徹底していませんし、経営理念を価値判断の基準にするような体系も整えられていません。結果として、社員も理念は上辺だけと考えています。当然、社員は仕事を形式的にこなすだけにとどまるので、仕事を通じて人が育つことが難しくなってしまいます。

2.人材育成を抽象的に語るだけで指針も仕組みもつくっていない

多くの企業には、その企業にとっての人材育成の定義がありません。何をどうすることが人材育成かが抽象的に語られるだけでは、人材育成の共通理解も実践もできないままです。人材育成は、一人ではできませんから組織で行うには基本的な定義が必要です。
あるいは、簡単な方針だけあっても、具体的な実践の仕組みがなければ、組織的な人材育成はやはり難しいでしょう。
企業における優れた人材とは、「経営理念を現場で具現化する人」といえるでしょう。育成とは、その人の可能性を信じ、できないことをできるように不断に発展させていくことです。その人の持つ課題を、将来に向けて改善する方向に向かわせることなのです。

そうした人材を育成したいという気持ちがあっても、実践的な仕組みや方法論がつくり込まれていなければ、実際に理想通りに人材が育つことはありません。それこそ、社員をOJTと称して現場に放り出し、「仕事を任せて勝手に育ってもらう」という事態になりかねません。
ごく一部の非常に優秀な社員は、それでも力を発揮してくれるかもしれません。しかし、一人ひとり能力の異なる社員を、幅広く育てることなどできるはずもありません。
リーダーの掛け声だけで動く組織は稀です。社員が育ち成熟した企業ならばあり得ますが、たいていの企業では難しいと言わざるを得ません。

3.ついつい感情的に叱るだけでフォローもせず、を繰り返している

仕事に熱心になるあまり、頭ではいけないとわかっていても、ついつい感情的になってしまうという経営者は多いのではないでしょうか。場合によっては、ガラス窓が震えるくらい叱らなければならないこともあるでしょう。しかし社員から見て、単純に、すぐ感情的になる人だと受け止められてしまえば、社員は上司を支える気持ちにはなりません。
仮に、上司の一人が感情的になって叱っても、それを他の人がフォローするという連携が必要です。父と母のような、職場での役割分担は社員の育成のために非常に重要です。そういった目的意識もなく、一時の感情に任せて叱責していると、その社員には叱責の本当の意味が伝わらず成長に結びつくことはありません。

ついつい部下を感情的に強く叱ってしまう、そんな経営者は決して怠惰ではありません。むしろ自己啓発意欲が高く、仕事に真面目に向き合っている人です。いくつになっても学習意欲が高く、勉強を怠りません。どんな部下よりも勉強しています。経験ももちろんあります。

ですから、自分の考えに絶対の自信を持っています。そして、ついつい部下に対して「これが大切なんだぞ、わかるか?」と畳み掛けてしまうことがあります。社員教育の大切な一面ではありますが、それが過ぎると本人も知らず知らずのうちに『イエスマン』を求めてしまう結果になりかねません。「意見があったら何でも言え!」と言うわりには、意見を受け入れないというオーラを出してしまっているのです。
経営者から「わかるか?」と言われて、部下は「わかりません」などと絶対に言えないので、皆、「わかるか?」と言われたら、「わかります」と答えます。その実、ちっともわかってはいない。少なくとも納得はしていない。肚(はら)落ちはしていないのです。だから、実行しないのです。

対話でも、レポートでも、はっきりとした自分の考えの肯定を求める。そうでないと満足できない。不安をぬぐえない。肯定を求めることが必要な社員の成長段階があるのも事実です。
やむにやまれぬ気持ちもわかります。しかし、上司がかぶせるだけでは社員の主体性は伸びません。しかも、経営者に苦言直言できる人は誰も育たなくなりますから、経営者の判断が鈍ったときには、そのまま会社の存亡が危ぶまれるような事態にもつながりかねません。
また、そうした組織のあり方は部下へ部下へと不思議なほどに伝播するものです。上司は部下に、度を超えてかぶせてしまって部下の主体性を阻害する。そんな組織文化が根づいてしまいます。

4.人材教育に継続性がなく、その場しのぎが続いている

経営者はやる気に燃えて人材教育の施策を打ち立てるのですが、すぐに気が変わり、別のことをやるように言い出す。その方針が変わるたびごとに、部下はそのやり方についていかないといけない。しかし、社員は結局、その教育のやり方はいずれ変わると思っているので教育を受けていても半信半疑。そんなふうに、継続性のない、言ってみれば哲学のない教育では人は育ちません。人材教育をやり始めたら愚直に継続することが、社員の持続心を養うことにもなるのです。

たとえば、朝礼が良いと聞けば朝礼をやるが続かない、社長勉強会が必要だと学ぶとすぐ実行するが続かない、読書感想文を毎月一つは出させると決めるが管理者から出さないようになる、などです。続けたら人が育つというのではなく、やると決めたことを継続してやり続けることが経営理念で言う顧客満足へのこだわりや仕事の品質をつくりきる努力につながっていくのです。

5.自己改善の姿勢がなく他責になっている

人を育てることは、トップや幹部が、まず自分で自分の行動を客観視し、改善できるようになるところから始まります。ある程度の役職になれば、今さらと思うかもしれませんが、自分のあり方をいくつになっても問い続けていくことが重要です。自己改善、つまり自分が自分の言動の問題点に気づき、改善していくことで、人を見る眼も変化します。部下である人材の問題点ばかり見ていて、自分の中に人を責める気持ちが根強くあることに気づきます。自分自身にも改善すべき課題があることに気づけば、他の人間の多様性と可能性を発見することにもつながります。そして人を受け入れることができるようになり、育てることもできるようになります。

経営者が自己改善から始めないと、人材育成の課題も部下のせいにするだけで終わってしまいます。もちろん、部下にも原因はありますが、部下だけのせいにして部下が育つなら何の苦労もありません。

6.社員への接し方が好き嫌いや相性に左右されていて公平さがない

社員一人ひとりに上司がどんな思いを持っているかということは、本人は隠しているつもりでも、社員からは必ずといっていいほど見抜かれています。それほど、社員は自分が上司やまわりの社員から、どう見られているか、どう関心を持たれているか気にしているものです。
当然、上司がすべての社員に公平に接することは大前提ですが、仕事とはいえ人と人との関係です。現実的にはそれほど容易ではありません。無意識のうちに不公平な接し方を繰り返していると、部下との信頼関係は崩壊してしまいます。

好き嫌いは、相性の問題もあるでしょう。自分に忠実そうかどうかといった、第一印象も大きいでしょう。
また、できる社員はいつでも優秀で、できない社員は何事においても劣っている、といった先入観を持つ経営者が多いことも、大きな問題です。
ある程度は仕方がないことですが、どうしてもできる社員にばかり目がいってしまい、できない社員を見放しています。見放すつもりはなかったとしても、結局はそうなってしまっているという経営者や上司は、規模の大小を問わず多いようです。

その結果、できる社員は経営者とのコミュニケーションの機会が多く、よりやりがいのある、成長機会となる仕事のチャンスも多く与えられる。できる社員は経営者からも上司からも可愛がられる。ところが、できない社員は仕事のチャンスも結果的に少なく、どんどんコミュニケーションの機会も減っていく。そうなれば成長するチャンスも少なくなっていくわけですから、ますますできる社員とできない社員の差が開いてしまいます。

できない社員は、そう簡単にできる社員にはなりませんが、それでも辛抱強く育てることが必要です。その底力が、本物の育成力です。それができる社員にも良い影響を与えます。できる社員は、自分ができることを鼻にかけ、裏で組織や上司の悪口を言って方針とは真反対ということも多く、組織的には問題社員で、信頼が置けないことも見受けられます。しかし、このできる社員を期待される人材に育てていく上で、できない社員をあきらめずに育てる努力は、育成の心を教えるモデルになります。また、できる社員にできない社員を育てるように仕向けることも大事な育成過程です。
自分がする仕事に自信はあっても、育てることは全く別のことと気づくことに価値があります。できない、できる、があるのは事実ですが、やはり公平に育てることが王道です。

人を育てるということは、「できないことを、できるようにすること」です。できない社員を放置しているようでは、社員が育つはずもありません。粘り強く粘り強く育てることが必要です。

7.なぜその仕事をするかの目的を示せず、ただこなすだけの仕事になっている

仕事の目的が明確でなく、社員はただ指示されたことをやり続けるだけになっているということが多くはないでしょうか。日々の仕事について、すべて目的を説明する時間はないでしょう。しかし、要所では、なぜ自分たちはこの仕事をするのか、この仕事をすることでお客様や社会にどのように貢献できるかを示す必要があります。仕事に貴賤も上下もありません。仕事の基本的な部分は、往々にして決まったことの繰り返しが多いものです。その仕事に、時々、仕事の意味や、それが人の役に立っていることを感じる機会があれば嬉しいものです。平凡な仕事にこそ大義が必要です。

創意工夫も、そうした目的意識から生まれるものです。そこを重視しなければ、自発的に考える人材は育ちません。

8.愛情の注ぎ方がわからないので心が通じない

恵まれた環境で育ってきた人は、人を好きなようにうまく動かし、何かをしてもらうことが上手です。しかし、自分から人に愛情を注ぐということができないことが多いものです。上司から上手に育てられた人が、同じように部下を育てることは案外にできないのです。人を育てることは、育ってほしいという願いが基本ですが、それをどう行動にすればよいのかがわからなければ、育ってほしいという思いすら相手に伝わりません。それができる人は、今までかけていただいた愛情に感謝している人です。

労いの言葉をかけても形式的になる、あるいは、どこで言葉をかけていいかタイミングがつかめない、立派なことを言っても言葉に誠がないということでは心は通じ合いません。また、本当の愛情は、ときには非情でもあります。
非情にさえなってでも人を育てるということが必要ですが、その非情にもなりきれません。愛情の注ぎ方のノウハウがあるわけではありませんが、人に言葉をかけ働きかけ、人を育てるという経験から学んでいかないと、人に愛情を注いでいるつもりでも自己満足で終わってしまいます。
心が通じ合えないということは育成では致命的です。人材育成は「育ってほしい」という愛情の持続です。どんなに深い愛情や情熱を持っていても、それを伝えることができなければ、人を育てることはできないものです。

9.自分は、尖って尖って、ここまできたのに幹部、社員が尖るのは嫌う

個性的な経営者は、尖った感度と尖った行動で市場を切り拓いてきたはずなのに、まわりに尖った人材がいると疎ましくなるもののようです。

特に創業経営者はそうですが、業績のいい会社の経営者には個性的な人が多いですし、能力が非常に高い人が多い。それは間違いありません。若い頃は尖って、尖って、自分の発想やアイデアが正しいと信じて、市場開拓に邁進してきた人たちです。そしてゼロから今の会社を築き上げてきたわけです。
そうした経営者たちは、自社の幹部や社員にも尖った能力や行動を求めます。
「ときには稟議は後回しでも、やる必要があると思ったらやれ!報告は後でいい!」などと、口では言うのです。決して、そのときは嘘ではないからやっかいです。時を逃さないことの大切さを知っていて、自分もそうしてきたからこその言葉です。

ところが、その才能が目立ってくると、つまりは今の自分よりも尖ってきたと感じると、その存在が疎ましくなることすらあるのです。自分を差し置いて、社員が尖ってきて、自分がコントロールできなくなるのを嫌うわけです。
ですから、そう感じると、今度は何とかして押さえつけたくなる。部下の(いい意味での)暴走を、どこかで止めてしまうものです。

組織が大きくなり、自分も年を取ってくると、今度は経営者が尖ることもリスクになります。ですから、いつの間にか尖ることをやめてしまいます。それはある程度は仕方のないことで、むしろ賢い選択でしょう。
ある創業経営者が自分の後継者に残した「私がしたようにするな、私が言うようにせよ」という家訓も有名です。

しかし、本当に一切尖ることをやめてしまった組織は変革ができません。
企業成長の段階にもよりますが、再び、尖ること、企むことを奨励することが大切な時期がやってきます。そこで抑え込んでしまえば、組織はそのうち衰退してしまいます。

10.コミュニケーションが極めて少ない、あってもムダな長話やすれ違いで対話にならない

とにかく、コミュニケーションの機会が乏しい。ざっくばらんに食事をすることもなく、またお茶を飲みながら気楽に話すこともない。それどころか、対話や会話の機会すらない。あったとしても、話が長すぎて、部下にしてみれば、ただ話を聞く、それどころか説教される会になってしまう⋯⋯。
つまり、ほとんどコミュニケーションの機会がなく、時々あると思うと、説教と指示の伝達だけで、意見も聞いてくれない ー
そのようなコミュニケーションでは、社員は萎縮してしまい、自主性を発揮することはできないですし、健全に育つこともままなりません。

多くの経営者の最大の特徴にして欠点は、とにかく自分がしゃべりすぎるということです。伝えよう、伝えようという思いが強すぎて、いくらコミュニケーションの機会をつくっても、ほとんどの時間を費やして、自説をとうとうと語ってしまう。あるいは叱責に費やしてしまう。経営者の意味のない長話と社員の自主性の成長は反比例します。

それは仕方ないことかというと、そうではありません。上に立つ人は、とにかくマメにコミュニケーションを取る、しかも、自分が話すよりも部下の意見を聞く姿勢が重要です。そうでなければ、イエスマンしか生まれません。部下は、上司に自分の意見を言えたことに価値を見出すのです。単純に話が長いか短いかではなく、ここを理解していただきたいのです。

ただ実際に、智恵のある経営者は、あまり長話をしません。よく傾聴力の重要性が言われますが、本当に聴くことに心血を注ぎます。聴く力というよりも、そういう方は聴き出す力があります。言うなれば、質問を通じて相手から引き出す力です。聴かれたほうは、自分で判断しなければいけない。ですから考える力、考えて判断する力が養われて育つのです。

人材が育っている会社の経営者に質問したことがあります。
「従業員を、どうやって育てていらっしゃるのですか?」
「私は判断しないのです」
「誰に判断をさせるのですか?」
「本人に判断させます。私はひたすら聞くだけです。『そうしたら、どうなるの?』『こうなります』『ならなかったらどうするの』と徹底的に問いかけます」
答えは言わない。ひたすら聞くのです。徹頭徹尾そうする。
この根気が育成のコツです。判断基準だけを教えても判断が下せるようにはなりません。実際にどう判断するかを体験させて、良い結果に導くエネルギーと真心が重要です。「教える」教育には限界があります。

こんな社長もいます。現在では全国でも注目される中堅企業に成長された社長です。企業体質を改革し業績を伸ばし尊敬する経営をしていらっしゃいます。その社長の話は思いが深いです。
たとえば、決算賞与を全社員に支給する。そのときに、管理職が集まります。そこでまず、社長の挨拶があります。
「よく頑張った、ありがとう!」
これで終わりです。つまりは思いが伝わるかどうかが一番大事なことなのです。

ところが多くの経営者は不安なので、いくら言ってもまだ足りないと思ってしまうようです。そして、自分の発言に対して部下が黙って聞いているだけでも不安、うなずいてくれないと不安。何も言われないと、さらに不安なのです。コミュニケーションに自信を持った経営こそが経営の品質です。

ここで挙げた二人の社長の例は稀なものです。これが理想だとは言いません。それぞれのやり方があると思います。しかし、いずれにしても経営者が、あるいは面接で上司がしゃべってばかりの会社は社員が伸びません。考え、判断する力が養われないからです。

11.自分に甘くまわりに厳しいので信頼されない

人はまず自分を律するリーダーを敬うものです。自分自身に甘い人が、いくら社員に厳しいことを言っても、本気で従う人はいません。表面的には言うことを聞いても、心では離反しているものです。
そうなってしまえば、もちろん信頼関係などなく、会社や上司、経営者に対するロイヤルティも育ちません。その状況では、安心して将来を描くこともできないでしょう。一部の反骨精神のたくましい社員は別ですが、多くの社員はうまく育つことができません。リーダーが自分に甘ければ、反面教師で社員の自主性は養われてもいいように思いますが、現実には、むしろ多くの社員の成長が停滞してしまうものです。自分たち自身にも甘くなってしまい、律する気持ちがなくなってしまうからだと思います。

悪貨が良貨をじわじわと駆逐してしまうのです。
経営者は社員と遅くまで飲んでも、翌朝は誰よりも早く出社して涼しい顔で仕事をしている。だからこそ社員も遅刻しないのです。誰よりもよく本を読んでいる経営者がいます。いつ読んでいるかわからないようですが、睡眠時間を削ってでも読んでいるに決まっています。そして、読んだ本が次々に幹部や社員に勧められる。一万円の高い本でも、惜しげもなく幹部全員に渡します。
「なかなかそこまでしませんよね」
「安いもんだよ。幹部みんなが同じ問題意識になるのだから。会議は、そこから始められるもの」。
そんな心構えなのです。
トップの行動見本こそが上司と部下の信頼の絆です。尊敬する経営者は、みんな陰に陽にこのような人として素晴らしい行動見本があります。この信頼は、企業経営が厳しい局面に向かったときに必ず活きてきます。

12.人事面接が、過去の追及ばかりで未来志向が全くない

これは非常に多いケースです。今は人事制度の中に面接が組み込まれていない組織のほうがむしろ少ないぐらいですが、その内容はどのようなものでしょうか。
単に、目標の未達や、能力の足りないところについて伝え、後はひたすら説教をする場になっていないでしょうか。
面接の場に限らず、部下に考課結果を総括して伝えることをフィードバックといいますが、これでは人はやる気にならず、本当に改善すべき点もわからず、モチベーションは下がるばかりです。
未来に向けて、ではどうしていくべきなのか、その方向性やポイント、方法論などを上司と部下が一緒になって考えていく、そうした要点を踏まえない面接ばかりやっている組織では、人は育ちません。面接は社員とのコミュニケーションをとる絶好の機会にも関わらず、余裕のない上司が行うと、部下に対する成果の追及に終始してしまうのです。面接は、実は、やればやるほど問題が出て硬直化しているケースが多いです。大企業と違い上司が異動することの少ない企業では悩ましい問題です。

そうした面接の実態、人材育成の現場を経営者が知らないということが、ことのほか多いのは事実です。経営者は、あるべき姿をいつも語りますが、社員の面接の実態は知らない。面接の実態が経営者の耳にまで届いていないために、社員が経営者の言っていることに矛盾を感じていてもなにも改善されないまま、これが実像です。

13.得意・不得意こそ人の個性であることを理解できていない

社員の個性をうまく活かした組織ほど、活力があって柔軟な組織です。
その個性とは、見方によっては、つまり金太郎飴のような画一的な人材を好む組織や経営者においては、過不足や不揃いと見えてしまいがちです。
均一的な人材の集合は、命令を忠実に守って行動することを求められる組織ならばいでしよう。しかし、不確かで変化の激しいビジネス環境にさらされる今日、そのような適応力の弱い組織が生き残るのは難しくなってしまいます。

人は認められてこそ成長します。不得意なことであっても仕事では「不得意だからやらない」といった態度は通用しません。その不得意な点を克服させて仕事で役立つようにしていくには不得意の内容にもよりますが、ある段階までは育成によって解決できます。
たとえば、営業が不得意だとします。成果が出ない。営業が苦手というよりも、一方的なリーダーのやり方に苦手意識があって営業が不得意なままで終わっている、などということがあります。自分が不得意な分野でも努力はしていることに、上司が敬意を持ってくれているとわかれば、社員のモチベーションは大きく変わります。自分が認められていないという感覚が、不得意を不得意なままで終わらせています。不得意をどうしたらできるようになるかをともに考える姿勢が重要です。どうしてもできるようにならないこともありますが、できないことをできるようにするための前提となる考え方です。社員の得意不得意についての接し方こそリーダーシップの幅です。

14.人材教育にじっくり取り組む辛抱強さがない

人を育てるとは、「流れている川に絵具で絵を描くようなもの」と言われるくらいに、やっても、やっても、果てしないことなのです。そのことを理解せず、研修や施策を少し取り入れただけで「人が育たない」と嘆いている経営者が多い。本来は、辛抱強く、繰り返し、繰り返しの実践が積み重なって育っていくものなのです。

教育や育成では、基本が何より大事だとよく言われます。「守・破・離」という原則が重要です。つまり、まずは基本を徹底的に体得させ、型を覚え、それを守る。その型を破り自分のものにしていく、自分らしい型をつくっていくのはその後のことです。

まず大切なのは、一にも二にも基本です。ですから時間がかかる。しかし、この段階をうまく越えれば、後は早いのです。うまく越えていかなければ、やってもやっても、それこそ流れる川の絵と同じです。

できる社員とできない社員と言いましたが、そこを分ける最大の違いも実は基本の体得加減だと思っています。
経験上言えることですが、できない社員は、仕事の基本のうちの何かが欠けているものです。そのため、できない社員に仕事上の基本を地道に教えられるかどうかが、実は最も大切な教育なのです。
新入社員で、すでにできる社員というのは何かのきっかけでそれまでに基本が身についているのです。それは親のお陰かもしれませんし、学校で身についたのかもしれません。できない社員には多分、そのきっかけがなかったのです。
そうした基本の上に、入社後に、その業界、会社における仕事の基本がさらに付け加えられていきます。その際に、初期段階の基本が身についているかどうかで、その後の基本がすんなり身につくかどうかも決まってくるようです。

その初期段階の基本の程度が如実に現れるのが、ビジネスマナーといわれるものです。つまり挨拶、名刺交換、メールの返信などです。スタートとなる基本はそういうものです。
その上で、多くの基本がその段階、段階に応じて必要になります。社員としての基本が身についても、管理職になるためには、今度は管理職の基本を身につける必要があります。幹部の基本、役員の基本、会社におけるキャリアアップには、そんなふうに繰り返し、繰り返し「基本の修得」が必要になります。ところが、新入社員だけでなく、入社後の社員も管理職も、役員も、その部分がずれていることが少なくないのです。その時々の役割に応じた基本を指導してもらえることは役職が上になるほど少なくなります。それだけに、これをしっかりできる組織は優れた上司を育てる組織といえます。

たとえば、私の会社にもさまざまな飛び込み営業が来ます。新入社員の飛び込みも多いですが、大企業の社員ほど正々堂々としている。名刺交換をするのも基本ができている場合が多い。中小企業の社員の多くは、申し訳なさそうに入ってきて、名刺交換の基本もできていない。当然、成績も違ってくるでしょう。そんな一面もあります。ここに、新入社員を育てている力の差が見えてくる気がします。
そうした基本は、当然で、誰でも知っているものだと思われるかもしれませんが、結構、できていない人が多いのです。どんな小さな企業でもやろうと思えばできることであり、大企業だからできるということではありません。

15.人間観が乏しくて魅力がなく、「この人のために」という人望がない

人間観とは、人をどう捉えるかということであって、人材育成の根幹でもあります。この人間観は、その人が意欲的に学び、内省し、多くのことを経験し、自分の言動を謙虚に反省することで変わっていくものです。

師を持つ人は、その師の人間観に惹かれるものです。逆に言えば、いくつになっても、人間観の幼い人間に、人はついていこうとは思いません。人間観が成長していない人間にありがちなのは、自己中心的な考えが目立ち、自己防衛を優先するために、他責思考が強いというものです。そうした人が上にいれば、誰であってもハシゴを外される危険を感じます。その人のために必死に働こうとは思いません。成長しようとも思わなくなるのです。

人間観が乏しいとは、人材の持つ可能性の多様さを心から信じられるかどうかです。可能性は、実際に仕事しながら育んでいくものですが、人材の可能性を見出していくのは容易なことではありません。現在活躍している人は、どこかで誰かに可能性を見出された人です。私もそうです。その可能性を見出せる人というのは、人間に対する見方が大きく、そして人の善悪を知って超えている人であるように思います。また、自分自身も失敗や挫折を乗り越え、そして主体的に学んできた人です。人間の魂と、良心で葛藤してきた人です。
経営は、実に細かいことの積み重ねと気配りの連続の中で成り立っています。同時に、人に任せないことには成長は望めません。この任せることを本当にできる人とできない人がいます。任せられない人は、どこまでいっても任せられないものです。任せたいと思ってはいるのですが、任せきれない。ここが人間観です。

主体性が発揮された姿は、本当に微笑ましく感動するものです。実に人間らしさを感じます。これが、働くということの意味です。
経営者としてすべてを知るわけにもいかない、ましてすべてを握るわけにもいかない、しかし責任は取らなければいけない。だからこそ、信じて任せていく。人間観を高めれば、時間はかかっても主体性が発揮されます。

人間観が育っていないときは、人材について大きな葛藤を持っています。主体的な意見がほしいが、それを甘さとしか受け取れない。自身の答えを押し出す前に、その甘さと闘う辛抱が必要です。この分岐点を「任せて任せず」で越えていかなければなりません。
どうしても自分のイメージ通りの行動を求めるので、そのイメージに適合しない場合は、心の中で葛藤を繰り返しています。主体性がなくなると自分で判断しなくなりますし、できなくなります。さらに、その判断しない現象にも苛立ちます。結果として、すべてにお伺いを立ててしか行動しなくなります。そんな負のサイクルに入り込まないようにしていただきたいものです。

やはり俯瞰的な人間観がないと人材を観る目が狭くなって可能性を見出しきれないと思います。やはり、育てつつ、振り返りつつ、行いつつ人間観を高めていくのです。

人材を育てられない経営者

経営者にとっては、現場に自分が介入しないほうがいいだろうと思っていたり、その時間もない、規模が大きいので物理的に難しい、といった問題があるのも事実です。

実は人材育成を阻む一番の問題は、経営者が会社の実態、人材育成や人事考課、面接の実態を知らないことにあります。
自分は自分の言動も、会社の実態も実は正確にはわかっていないのだと気づくことが、人を育てる会社へと改善する、実は最も重要なスターティングポイントになるのです。


本書では、この後の第2章より具体的な「人事デザイン・解決方法」の提示となります。

引き続き、「Twitterフォロワー様数の目標達成キャンペーン」を準備しておりますので、ぜひ皆さまフォローの程よろしくお願いいたします。

▼ Twitter:@suenaga_keiei
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