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ととのエッセイ 「船橋にあるユートピア」

2023/8/16 #ととのエッセイ

午前5時。僕は今、朝日を浴び、風を感じながら船橋という名のユートピアへ向け車を走らせている。

ユートピアとは「現実には無い理想の世界」という意味があるらしい。ユートピア、つまり理想郷。なんと素晴らしい響きだろう。

船橋にジートピアという名のサウナがある。ついに今、現実には無いとされるユートピア、いや、ジートピアが目の前に現れた。


いざ、中に入ってみよう。

古代ギリシアのような館内だ。ここは、まさに理想郷だ。高温サウナから水風呂そして外気浴を繰り返す。そしてジェットのついた熱湯からまた水風呂へ。圧倒的に心身が整ってゆくのを感じる。


と、次の瞬間、何か未知の、未確認の、現実には到底存在しないはずの、とてつもなく強いエネルギーを感じた。恐る恐る、僕は振り返ってみる。

すると、アカスリ中のマダムがアカスリしながら、僕を見ていた。そして「アカスリやる?アカスリやる?」とめっちゃウィンクしている。一切の曇り無きまなこで。アカスリを受けているおじさんは、とても気持ちよさそうだった。その瞳は、そのおじさんのアカスリ後の、赤ちゃんのような綺麗な肌同様、輝きに満ちており、僕はむしろ、まさに生身の人間の、尊い生業を、その時に感じた。

僕は今、再び日常の喧騒を浴びながら、帰り道の車中の風を感じている。あれは、本当に現実だったのだろうか?

ユートピアとは、「現実には無い理想の世界」という意味があるらしい。もしかしたら「理想」とは、叶えようとするだけ逃げていき、現実にはあり得ないものだからこそ、良いのかもしれない。

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