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強い経理のつくりかた

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強い経理があれば長寿企業になるわけではないけれど、長寿企業には必ず強い経理があります。強い経理になるために経理部員に何ができるのか、考えていきたいと思います。
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#長寿企業

【経理】作業をラベリングして、業務の全体像を見る。(後編)

こんにちは、きくちきよみと申します。 税理士です。 前回から「経理作業をカテゴリー分けできるようになると、社内スタッフや外部専門家に信頼されやすいので、仕事を進めやすくなる」ということについて書いています。 前回(前編)は、カテゴリー分けができるようになった方が良い理由について書きました。今回(後編)は、具体的な分類・整理方法について書いていきます。 分類の方法、相談先の整理方法。それでは、どのように分類したら良いのでしょうか。企業の状況や役職によるかもしれませんが、自

【経理】作業をラベリングして、業務の全体像を見る。(前編)

こんにちは、きくちきよみと申します。 税理士です。 今日は、「経理作業をカテゴリー分けできるようになると、社内スタッフや外部専門家に信頼されやすいので、仕事を進めやすくなる」ということについて書きます。 書いているうちに長くなってしまいましたので、2回に分けて書きます。 今回は前編です。 「それは〇〇さんに相談すると良いですよ」とよく言われませんか?①適切でない相手に質問・相談してしまう場合 新人経理さんによくあることですが、質問をした相手に「それは〇〇さんに相談する

【強い経理】まずは、月次決算を適正化することから始める。

こんにちは、きくちきよみと申します。 税理士です。 今日は「"強い経理" をつくるには、まずは月次決算を適正化することから始めよう」ということについて書きます。 ↓↓↓ 本マガジンにおける「強い経理」の定義 どの企業の月次決算も、やることは同じ。多くの企業で月次決算に取り組んでいたり、これから取り組もうとしていたりすると思います。ただし、「大きな間違いのない月次決算を毎月実施できている。経営者、親会社、税理士・会計士に指摘されるような経理処理も全くない。」と胸を張って言

【経理】努力の方向性がわからず、"資格迷子" になる前に。

こんにちは、きくちきよみと申します。 税理士です。 企業の経理業務をする中で「努力の方向性がわからないので、とりあえず資格を取得しよう」と考えてしまうことはよくあるでしょう。 今日は「経理業務の中でどう努力したらわからないとき、考えてみても良いこと」について書きます。悩んでいる方の何かの参考になりましたら幸いです。 考えてみても良いポイント3点。人によって違うと思いますが、努力の方向性がわからないとき、考えてみても良いと思うポイントを挙げてみます。 ①資格迷子になって

【経理】企業は、見えない問題にはお金を使わない。~不正防止の話~

こんにちは、きくちきよみと申します。 税理士です。 税理士業務や経理業務とは直接関係ありませんが、業務上、企業の不正調査を担当することがあります。 その中で、「帳簿・書類・証憑の電子化は、不正防止に有益かもしれない」と感じることがありましたので、今日はそのことについて書きます。 電子化すると、すべての証憑に簡単にアクセスできる。ペーペーレス化や電子帳簿保存法の影響もあり、会計帳簿・経理書類・経理証憑を電子化する企業も多いと思います。電子化していると、経理書類・経理証憑は

【経理】理解できないことを「わからない」と言うことについて。

こんにちは、きくちきよみと申します。 税理士です。 (先週末から夏風邪で寝込んでおり、本日やっと仕事に復帰しました。まだ喉の痛みが治っておらず、困ったものです。) 今日は、「理解できないことを『わからない』と言える人や知らないことを『知らない』と言える人は周囲の力を借りられるので、業務で結果が出やすい」ということについて書きます。 会話の中で「わからない」がゼロだと、かえって不安になる。あくまで自分の経験上のことではありますが、契約初年度のお客様や新任の経理担当者の方と

【新人経理向け】実務では "しいくりくりしい" は使わない。~売上原価の話~

こんにちは、きくちきよみと申します。 税理士です。 先日、経理職が初めてというお客様に「学習簿記と実務経理で違うことはありますか?」というご質問を受けました。 自分が経理を始めたときに「簿記の勉強中に知っていたら良かったのに」と思ったことはいろいろありましたが、その中のひとつが「売上原価の仕訳」でした。今日は「売上原価の仕訳と在庫棚卸について、新人経理さんによく聞かれる質問」について書きます。 学習簿記の「しいくりくりしい」は、実務では一生使わない。簿記3級・2級の学習

【経理】急な大改革は "揺り戻し" を起こす。最初から「強い経理」を。

こんにちは、きくちきよみと申します。 税理士です。 「強い経理を手に入れて長寿企業になるために、経理は何ができるのか」をテーマに、2023年末からこのマガジンを書いています。 今日は「急な大改革は "揺り戻し" を起こすので、ひとつずつ着実に改革を進めるか、事業開始時から『強い経理』を目指して企業経営を進めた方が良い」ということについて書きます。 急な大改革は、「強い経理」に向かない。本マガジンにおける「強い経理」の定義については、下記で記事にしています。 「強い経理

【雑談】経理人材の採用に関して、よく受ける質問。

こんにちは、きくちきよみと申します。 税理士です。 顧問税理士として、企業の方から経理人材の採用に関してのご質問を受けることがあります。あくまで自分の経験上ではありますが、よく受けるご質問について、思うことを書いていきたいと思います。 なお、基本的には中小企業の経理人材についてのご質問ですので、経理部の総数は1~5名程度の前提です。実際のご質問はより具体的・個別的ですが、特定を避けるために一般化した表現で記載しています。 注:自分は人事コンサルではありませんので、単に「

【経理】事実関係を、徹底調査するには?

こんにちは、きくちきよみと申します。 税理士です。 経理の仕事の中で、何かミスやトラブルがあった際にその原因や事実関係を詳細に調査することは、企業にとって非常に重要です。 今日は「事実関係を徹底調査するには、何に注意したら良いか」ということについて書きます。 口頭ヒアリングは、非常に重要。事実関係の調査において「詳細を口頭でヒアリングする」ということは非常に重要です。 よく「文書だけで回答を求め、回答してもらう」というケースがありますが、口頭ヒアリングなしに結論を出そ

【経理】英語でレポーティングしたいとき、会計ソフトに何を選ぶか?

こんにちは、きくちきよみと申します。 税理士です。 「会計ソフトは何が良いか?」というのは、税理士としてよく受ける質問です。機能・性能を見て会計ソフトを選ぶのであればウェブ検索して探すので充分ですが、非常にニッチな要望もあります。 その中の一つ「小規模な日本企業が英語でレポーティングしたいときは、会計ソフトに何を選ぶか」についてまとめてみます。 注:下記の前提にも記載しましたが、報告通貨が「円」以外の場合や、外貨帳簿が必要な場合は、専用のソフトを利用することをお勧めしま

【経理】失敗の経験は、共有する。

こんにちは、きくちきよみと申します。 税理士です。 今日は「無駄な失敗などひとつもないので、業務上の失敗経験は共有したら良いと思う」ということについて書きます。 業務上の失敗経験は、すぐに共有する。経理・会計・税務の仕事に長く関わる中で「ミスをしてしまった」「危うくミスをしそうになった」という経験がない人は、いないと思います。 以前の記事でも書きましたが、他の人のミスの歴史を知ることは、その防止策・対処法を学ぶことだと考えています。 自分自身のミスや自分のチームのミス

【経理】"財務会計" は、経営者の意思を明確に示す。

こんにちは、きくちきよみと申します。 税理士です。 中小企業では優先順位が低くなりがちな "財務会計" ですが、最近特に「中小企業も、もっと "財務会計" にこだわったら良いのでは」と考えることが多くなりました。 今日は、「会計処理や決算書は、経営者の考え方を示す」ということについて書きます。 "財務会計" とは。財務会計とは、端的に言えば「会社の決算書を作るための会計」です。 金融機関や投資家など、誰がその決算書を見てもその企業の財政状態・経営成績を把握できるように

【経理】経理業務を、標準化するには。

こんにちは、きくちきよみと申します。 税理士です。 今日は、「経理業務の標準化」に取り組む方法について書きます。 「経理業務の標準化」に取り組むタイミングとは?経理のような管理部の仕事は業務の属人化が嫌われる仕事で、特に、IPOを目指したり、より企業を成長させようとしたりするタイミングで、業務の標準化が求められることになります。 この「業務の標準化」ですが、公認会計士・武田雄治氏の著書の中では、「マクドナルド化」と表現されています。各スタッフは職人である必要はなく、誰が