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【経理】経理業務を、標準化するには。

こんにちは、きくちきよみと申します。
税理士です。

今日は、「経理業務の標準化」に取り組む方法について書きます。


「経理業務の標準化」に取り組むタイミングとは?

経理のような管理部の仕事は業務の属人化が嫌われる仕事で、特に、IPOを目指したり、より企業を成長させようとしたりするタイミングで、業務の標準化が求められることになります。

この「業務の標準化」ですが、公認会計士・武田雄治氏の著書の中では、「マクドナルド化」と表現されています。各スタッフは職人である必要はなく、誰がやっても同じように作業ができることが重要だということです。

今まで月次決算作業が緩かった中小企業が「決算早期化」に取り組むとき、この「経理業務の標準化」は最初で最大の難関になります。

経理業務の標準化が進まない要因は?

もし、自社で取り組んでいる業務標準化がうまく進んでいない場合には、まずは原因の特定をした方が良いでしょう。自分の経験の中だけですが、中小企業でよく見る阻害要因は、下記のようなものが挙げられます。

(注:個人の見解であり、上記に引用した武田先生の著作の内容とは関係がありませんので、ご了承頂けますと幸いです。)

①マニュアル・ルール不足

初期段階で起こるトラブルの原因の多くは、マニュアルやルールの不足です。

まずは「スタッフが一人急に仕事を休んでも、これを見れば他のスタッフが作業できる」というレベルの最低限のルールブックが必要です。

②マニュアル・ルール過剰

上記①とは反対に、「マニュアルが多すぎて更新が間に合わない」「マニュアルが膨大過ぎて、見ないで作業をするスタッフが増える」「マニュアル内の表現を誤って理解して、結果的にミスをする」というトラブルもあります。

これはマニュアル作成上の工夫だけでは対応は難しいので、経理スタッフの採用基準の変更や内部研修等の対応が必要でしょう。

③経理人材の採用ミス(=「自社にとって優秀な経理スタッフ」の定義が不明確)

例えば「マニュアルを守らないスタッフが多すぎる」と嘆きながら、その一方で「マニュアルにこだわらず、自主的に仕事を進められるスタッフを採用する」というようなチグハグな対応をするケースは、意外に多いです。

現場のトラブルで改善したいことがあるのであれば、それに合った採用方針であるべきでしょう。

大人数を受け入れられる大企業の経理部ではいろいろな人材がいても大丈夫かもしれませんが、一人の影響力が大きい中小企業では、採用ミスが致命傷になりかねません。

④「標準化レベル」設定の検討不足

業務標準化に取り組むとき、「"30年以上のベテラン" と "経理1年目の新人" のどちらに合わせた標準化なのか?」「具体的にどのように標準化するか?」という部分の判断が必要です。

当然ながら、標準化という意味からいえば "経理1年目の新人" に合わせるべきなのですが、マニュアルの作成レベルを初心者に合わせてしまうと、上記②のようなマニュアル過剰の状況に陥ってしまいます。

例えば、マニュアルは最小限のボリュームに抑え、補足が必要な部分は新人研修・定期研修で説明するなどの対応も考えられます。

なお、私見ですが、どれほど業務標準化を進めても新人とベテランがすべての業務を同様の品質で遂行できることは稀だと思います。業務標準化の対象・対象外の具体的内容や、求められるサービス品質の設定と明示が必要でしょう。

完全な標準化にこだわり過ぎて、本来は評価すべき優秀な人材を軽んじたり、逆にそのような人材に無理なフォローをさせたりするようなことだけは避けたいものです。


⑤内部のコミュニケーション不足(=他のスタッフの「言葉の定義」への理解が浅い)

永遠の課題ですが「前日の業務を別の人が引継いだときの伝達ミス」や「今月だけの特別な変更項目に対応できない」というようなトラブルは、どうしても生じてしまいます。

今は「電話・口頭伝達は禁止」「チャットツールで記録を残す」など、連絡事項はテキストで伝えるような対応が多いと思いますが、テキストで伝えても、それでもミスが生じることは多いです。

「他人の言葉の定義は、自分とは違う」からです。

人はそれぞれ違う人生を生きていて歴史が違うので、同じように経理経験を重ねていても、同じ言葉の定義が全く違うことがあります。

無理に話す時間を作るべきということではありませんが、定期的な研修等により、口頭でお互いの「言葉の定義のすり合わせ」をする機会は必要かと考えます。

番外編:自社に合った会計システムの選定を。

ボリュームがある内容なので本件は別の機会に書きたいと思っていますが、「自社に合った会計システム(※ERPを含む)」を採用していないために、標準化が全く進まない例を見ることがあります。

会計システムに投資できる資金は限られてしまうのは当然ですが、目指す企業の在り方や現在のフェーズ、また、現在の経理人材の特性も考慮しながら、適切な会計システムの導入が必要だと思います。

経理部だけでは、どうにもならない。

「経理業務の標準化」について取り組むときに、経理部だけでなんとかしようと、無理が生じやすいと思います。

会社全体で取り組み、より良い結果を目指してみてはいかがでしょうか。

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ここまでお読み頂きまして、ありがとうございました。