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【経理】作業をラベリングして、業務の全体像を見る。(後編)

こんにちは、きくちきよみと申します。
税理士です。

前回から「経理作業をカテゴリー分けできるようになると、社内スタッフや外部専門家に信頼されやすいので、仕事を進めやすくなる」ということについて書いています。

前回(前編)は、カテゴリー分けができるようになった方が良い理由について書きました。今回(後編)は、具体的な分類・整理方法について書いていきます。


分類の方法、相談先の整理方法。

それでは、どのように分類したら良いのでしょうか。企業の状況や役職によるかもしれませんが、自分の思う分類方法を整理してみます。

①専門家別(法律の種類別)に分類する。

社内の別部署や士業などの外部専門家に質問する場合は、内容ごとに質問する相手が変わりますので、その分類で整理するとわかりやすいでしょう。

例1)給与計算上の社会保険料について、従業員から質問を受けた場合
「労務」の内容ですので、労務の担当者(社内の労務担当者、又は顧問社会保険労務士・給与計算会社など)に相談することになります。

例2)取引先と新しく契約書を締結しようとする場合
「法務」の内容ですので、法務の担当者(社内の法務担当者、又は顧問弁護士、知財が関連すれば弁理士など)に相談することになります。また、お金がからむ契約であれば、締結前に「税務」の担当者(社内の税務担当者、又は顧問税理士)に相談したりするのも必要でしょう。

【補足】外部専門家の業務範囲は明確にしておく。
特にマネージャークラスに求められることですが、各企業において、外部専門家の業務範囲は千差万別です。職場が変わった場合は、各外部専門家の業務範囲を確認しておかないと、落ちてきたボールを誰も拾えなくなります。自分の当たり前は全企業の当たり前ではありません。業務範囲の確認は必須作業ですので、注意が必要です。

②【補足】税金関連で分類に迷いやすいもの

例1)関税の特恵税率
例えば日EU・EPAに基づく特恵税率を受けようとするとき、「"関税" だから "税務" だ!」と税理士としてご相談を頂くことがあります。ただ、関税は税理士が税務代理をすることができない税金で、関税に詳しい税理士はBig4にしかいません。通関業者にご相談頂くか、過去に多くの手続きをしてきた従業員に頼って頂くことになります。

例2)海外子会社の現地税務
「これも税金だから "税務" だ!」とご相談を頂くことがありますが、海外の税務は、各国の現地税理士に任せないと大怪我をします。海外に拠点を置くことを考える場合は、現地の会計事務所を紹介してくれるような日本の税理士と契約した方が良いでしょう。(自社の拠点を海外に置くのではなく、現地代理店に業務を委託するのであれば現地税務は自社の懸念ではなくなります。そのようなことも含めて、税理士に相談しておくのも一考でしょう。)

③業務の流れを整理する。

例えば、社内で勤怠管理をして、外部の給与計算会社に給与計算や社会保険手続きを委託しているケースです。

この場合、社員の一人から「給与明細に記載されている勤怠管理がおかしいです」と言われたときは、社内の勤怠管理担当者に質問をすることになります。これを「"給与" だから給与計算会社へ質問する!」と給与計算会社に連絡すると、「勤怠は貴社で集計頂いています」という回答を得ることになってしまいます。

自分の業務以外であっても、他部署の業務であっても、どのような流れで業務が進んでいるのかを理解しておくと、誰に相談したら良いかが明確になります。

どうしても判断がつかないとき。

考えても調べても分類ができないときや不安になるときは、とりあえず質問できる相手に相談して、分類の方法を教えてもらうしかありません。教えてもらった分類の方法を理解して、次からできるようになったら良いだけです。

ただ、自分がどうして判断がつかないか、何に迷っているかは丁寧に説明した方が良いでしょう。その判断に迷う部分が相手に伝わらないと、相手から適切な回答が得られないからです。

例えば、会社で申請した補助金が入金された後、補助金の事務局から「補助金に係る消費税の返還額報告書」の提出依頼を受けるケースです。

「消費税って書いてあるけれど、自社で申請した補助金の補足書類だし、記載の手引をを見ながら記入すれば提出できそう。でも、税理士さんに記載内容の確認を依頼した方が安心だ。2ページ目の記載項目だけ確認依頼をしよう。」と考えて、そのままの説明を添えてご相談頂くと、税理士としても確認ポイントが明確になります。

ところが「お願いします」とだけ添えて報告書類フォームを送って頂いてしまうと、何を依頼されているのかが相手に伝わらず、やりとりが増えることになります。また、相手に「この方は業務の分類ができていないのかな」と不安を与えてしまうことになります。


作業を分類・整理し、全体を理解する。

基本の内容ですが、非常に重要な内容だと思っています。経理さんが仕事をしていく中で、難しい会計処理ができたり、税務に詳しくなったりするよりも、はるかに重要な内容です。

是非、経理作業を分類・整理できるようになってみてはいかがでしょうか。


ここまでお読み頂きまして、ありがとうございました。