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【経理】理解できないことを「わからない」と言うことについて。

こんにちは、きくちきよみと申します。
税理士です。

(先週末から夏風邪で寝込んでおり、本日やっと仕事に復帰しました。まだ喉の痛みが治っておらず、困ったものです。)

今日は、「理解できないことを『わからない』と言える人や知らないことを『知らない』と言える人は周囲の力を借りられるので、業務で結果が出やすい」ということについて書きます。


会話の中で「わからない」がゼロだと、かえって不安になる。

あくまで自分の経験上のことではありますが、契約初年度のお客様や新任の経理担当者の方とお話をしている中で、「〇〇についてはよく理解していないです」「それは知らないです」「〇〇ってどういう意味ですか」「〇〇は経験したことがないです」と言われることは、よくあります。

経理さんの業務上の知識や経験は、千差万別だからです。また、単に表現の違い(法律用語をそのまま覚えていることもあれば、わかりやすい言葉に変換して覚えていることもある)のために、うまく伝わっていないだけのこともあります。

いずれにせよ、会社のご担当の方が「わからない」「知らない」「経験したことがない」ということは説明してご理解頂ければ良いだけなので、全く問題はありません。

逆に、初めてお伝えする内容に対して全く疑問を頂かない場合、かえって不安になります。"理解できないこと" "知らないこと" "経験したことがないこと" を放置しておくと、後になって大きなトラブルになってしまうことが多いからです。

過去のトラブルの経験上、やりとりの中で気づくこともあります。例えば「この方は、監査法人対応を実際には経験したことがないけれど『経験したことがない』と言えないだけだな」と気づくことがあります。この場合、事前に「関与初年度なので、今年度だけはこちらで監査法人対応をさせて頂けますか」とお願いする形式をとり、実際にやりとりの方法を見せることによって、知って頂くこともあります。

ただ、「知らない」「わからない」という事実を巧妙に隠そうとされてしまうと、そのことに気づけずに事前フォローができないこともあり、年度決算時にトラブルに発展してしまうこともあります。

個人的な感想ですが、知識・経験が豊富な経理さんほど、わからないことは「わからない」、知らないことは「知らない」、と端的に言ってくださるように感じています。(もちろん、「わからない」「知らない」ことは全くない、というようなレベルの方もいらっしゃいますが、それはごく少数の限られた方だけだと思います。)


「わかりません」と言いたくない気持ち。

経理の方は、とても勉強熱心な方が多いと思います。そのため、自分が知らないことは無くそうとするでしょうし、理解できないことも無くそうとするでしょう。

賛否はあるとは思いますが、「『わからない』と言いたくないから、必死に勉強する」という姿勢は、一つのモチベーションの形だと思います。これはこれで悪くないと思いますし、このような側面は誰にでもあると思います。

また、年齢を重ねたり、ポジションが上がったりすると、軽い気持ちで「わかりません」と言うことが怖くなる気持ちもよくわかります。

この他、わからないことをその場で「わからない」とは言わずに、「後で調べた方が、相手に迷惑をかけずに済む」と思ってしまうことも多いと思います。特に、大人数が参加した打合せの時などは、自分ひとりの「わからない」で打合せを止めるわけにはいきませんので、このような場合は後で対応することはやむを得ないと思います。


知識として知っていることと、経験として知っていることは、違うのか?

「わからない」「知らない」ことがあったとき、これを調べて知っているだけで問題ないのでしょうか。

個人的な意見を申し上げると、実際には、経理業務では「知識として知っていること」と「経験として知っていること」の違いだけで、大きく影響が出ることはないと思っています。どちらかというと、経理スタッフそれぞれの資質が影響すると思います。

例えば、経理知識・経験が豊富な経理スタッフAさんが、知らなかった新しい情報を調べて理解した場合、Aさんは、実際にその情報をうまく活用することができたとします。それが初回の経験であっても、結果が出ます。

一方、経理知識・経験が浅い経理スタッフBさんが、知らなかった新しい情報を調べて理解したとしても、Bさんは次の機会のその情報をうまく活用できないことがあります。それを活用するための基礎がないからです。

そのため、Aさんには「これを読んで理解しておいてください」で充分ですが、Bさんには同じように対応してもうまくいくとは限りません。経理部内で同様の情報を共有していても「なぜかうまくいかない」という場合は、各スタッフの資質の違いが原因かもしれません

自分の想像力だけでは、結果が出ない。

前項で書いたAさんとBさんの違いですが、実際にAさんの動きを見ていくと、結果を出せる理由は元々の知識や経験だけではありません。

例えば、取引先にも関連するような変更があった場合、Aさんは事前に取引先と打合せをし、意見交換をしたりします。また、顧問税理士に対しても、「〇〇は初めてなので、このような表を〇月〇日までに作成しようと思っていますが、意見をもらえますか」と相談したりします。

このような動き方ができるのも、「元々の知識や経験」がベースになっているのはもちろんです。ただ、同じように経験年数を重ねても、この動き方ができる方と、そうでない方がいらっしゃいます。

経理の仕事で大事なことは、ルールを理解してルールに沿いつつも臨機応変に運用していくことだと思いますが、この「臨機応変に運用できるか」は、各スタッフの「想像力」にかかっていると思います。具体的には、最悪の事態も含めてどこまで想像できるかということですが、自分の想像力だけでは及ばない場合は、他のスタッフや顧問税理士など、周囲の力も借りて仕事を進めることも重要でしょう。


わからないことは「わからない」と言い、周囲の力を借りる。

知らないことやわからないことを無駄に隠すことなく伝えれば、周囲の力は借りやすく、良い結果につながりやすいと思います。

周囲の想像力を借り、より良い業務に生かしてみてはいかがでしょうか。


ここまでお読み頂きまして、ありがとうございました。