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【経理】英語でレポーティングしたいとき、会計ソフトに何を選ぶか?

こんにちは、きくちきよみと申します。
税理士です。

「会計ソフトは何が良いか?」というのは、税理士としてよく受ける質問です。機能・性能を見て会計ソフトを選ぶのであればウェブ検索して探すので充分ですが、非常にニッチな要望もあります。

その中の一つ「小規模な日本企業が英語でレポーティングしたいときは、会計ソフトに何を選ぶか」についてまとめてみます。

注:下記の前提にも記載しましたが、報告通貨が「円」以外の場合や、外貨帳簿が必要な場合は、専用のソフトを利用することをお勧めします。


小規模企業が英語でレポーティングしたいとき。

日本の小規模企業であっても「英語でレポーティングしたい」というのは、意外に多い要望です。

例えば、下記のような企業の場合です。
・毎月、海外親会社にレポーティングすることになっている。
・日本企業だが、経営陣の第一言語は英語である。

ところが、標準で「英語表示」される海外の会計ソフトを利用しようとすると、日本で税務申告しようとする日本企業では不都合なことが起こりやすいです。

特に、日本の消費税は「会計処理に紐付く」ように処理することが前提となっています。日本の税制に対応していない海外の会計ソフトを利用すると、年度決算時に膨大な手数と時間を割いてしまうことにつながります。

私の知る限りではありますが、「英語表示」に標準対応した安価な日本の会計ソフトはありません。

そのため、「日本の既存の会計ソフトをうまく利用して、表示だけ英語にできるようにする」工夫が必要になります。

「日本の小規模企業が英語でレポーティングする」会計ソフト3選。

※選定の前提

<選定の前提>
・小規模な日本企業(原価計算、プロジェクト会計等は除外)
・会計ソフト導入にはあまり予算が割けない
・クラウドソフトが望ましい
・Excel加工作業はできるだけ少なくしたい
・報告通貨は「円」
・外貨帳簿は不要(又は、Excel補助簿で充分な範囲)

<今回の選定範囲からは除外したもの>
・外貨帳簿が必要な場合
・報告通貨が円以外の場合
・海外子会社との連結決算が必要な場合
※このようなケースでは、外貨・多言語に対応した専門ソフトを利用することをお勧めしております。

①弥生会計 デスクトップアプリ版

こちらは昔ながらの「中小企業会計ソフト」の定番です。

もちろん、日本語対応がベースですので、勘定科目は英語表記に変更する必要があります。言語切替機能はありませんので、ここは手作業で勘定科目の表記自体を変更します。

例:「現金」→「Cash」

なぜこのソフトを最初に挙げたかというと、弥生会計のデスクトップアプリ版は、試算表上の集計科目も表記変更ができるからです。他のソフトでこの作業ができるものは見たことがありません。弥生会計のクラウド版でもできません。

例:「流動資産」→「Current assets」

そのため、試算表をExcel出力すると、数値に関連する部分は表示変更をする必要がありません。出力した状態で提出できます。

<メリット>
・勘定科目、集計科目すべての表記を英語に変更できる。
・導入コスト及び利用コストが安い。

<デメリット>
・クラウドでない。(弥生ドライブを利用すればデータをクラウド共有できるが、誰かがデータを開いていると、他の人は同一データを開けない。)
・勘定科目コード設定ができないので、指定のレポーティングパッケージがあるときは変換作業時に工夫が必要。


②マネーフォワードクラウド or freee

現在、「クラウド会計ソフトと言えば?」と言われたときに、必ず挙がるのがこの2つでしょう。

何と言ってもクラウドであるため、常に最新のデータを随時確認することができます。銀行や法人カードの利用明細などの連携もでき、入力作業に手間がかかりません。

一方、「常に最新のデータを確認できてしまう」ので、「経理さんが誤った入力をしてまだチェック・修正が完了していない」時点でも、権限があるユーザーは帳簿にアクセスできてしまいます

結果的に誤った数値を経営者が見てしまい、現場が混乱するということがしばしば起こります。(中小企業でこのトラブルが絶えないので、月次が締まっていないときはアカウントの閲覧制限ができるなど、ソフト側でこの対策ができるようになると嬉しいです。)

また、弥生会計とは異なり、集計科目の表示は変更できないため、日本語表記のままです。正式な英語レポートにするには、Excel出力した上で、一部加工が必要です。

<メリット>
・クラウドである。
・勘定科目の表記を英語に変更できる。
・導入コスト及び利用コストが安い。

<デメリット>
・集計科目の表記は日本語のまま。
・月次決算が締まっていなくても、帳簿情報が見えてしまう。
・勘定科目コード設定ができないので、指定のレポーティングパッケージがあるときは変換作業時に工夫が必要。


③奉行クラウド

コスト的には少し割高になりますが、こちらも昔ながらの定番ソフトのクラウド版です。

定番ソフトの中で唯一、「勘定科目コード」の設定ができるため、Excel上での作業が非常に便利です。
(例:vlookupの利用など)

例えば海外親会社からの指定レポートがある場合は、この勘定科目コードをkeyとして表示変換作業をすると、レポートが作成しやすくなります。

このソフトは集計科目の表記変更ができませんが、指定レポートに変換する場合は、そもそも会計ソフト内で英語表記に変更する必要がありませんので、あまり気にする必要はないかもしれません。

<メリット>
・勘定科目コード設定ができるので、指定のレポーティングパッケージがあるときは変換作業が非常に楽になる。
・クラウドである。
・勘定科目の表記を英語に変更できる。

<デメリット>
・上記①、②に比較し、導入コスト及び利用コストが割高である。
・集計科目の表記は日本語のまま。
・月次決算が締まっていなくても、帳簿情報が見えてしまう。


ちょっとした工夫で。

今回は、「既存の会計ソフトを少し工夫して、英語レポーティングに対応する」をテーマに書いてみました。

会計ソフト選定のヒントになりましたら幸いです。

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ここまでお読み頂きまして、ありがとうございました。