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【経理】急な大改革は "揺り戻し" を起こす。最初から「強い経理」を。

こんにちは、きくちきよみと申します。
税理士です。

「強い経理を手に入れて長寿企業になるために、経理は何ができるのか」をテーマに、2023年末からこのマガジンを書いています。

今日は「急な大改革は "揺り戻し" を起こすので、ひとつずつ着実に改革を進めるか、事業開始時から『強い経理』を目指して企業経営を進めた方が良い」ということについて書きます。


急な大改革は、「強い経理」に向かない。

本マガジンにおける「強い経理」の定義については、下記で記事にしています。

「強い経理」を目指して社内の改革に取り組もうとするとき、ひとつずつ、着実に改革を進めるのはとても良いと思います。ところが、急激に社内改革を進めようとしてしまうと、"揺り戻し" が起こることになります。

何かを変えようとするとき、社長・従業員全員が「何かを変えることに全く抵抗がない」という企業であれば良いのですが、そのようなことはあり得ません。

例えば、社内の承認フローをすべて電子化しようと計画した際に、充分な準備期間をとらず、かつ、徹底した社内検討をすることなく運用を始めてしまうケースです。この際、改革に納得せず、「変えたくない」「変えるとミスが生じるかもしれない」と考える方が、変更後のルールに反して「支払請求書を印刷して手元でファイリングしようとする」などの運用を、誰の断りもなく始めてしまったりします。

その結果、同一の支払書類が2つ存在することになり、誤って二重払いをしてしまう、というミスが発生したりします。

改善しようとして急に進めた改革に対する "揺り戻し" が原因となり、社内の混乱を招いたり、取引先の信用を失ったりするなどのトラブルがあります。時には、修復不可能と思えるほどまでに影響が出てしまうこともあります。

経営者の気が乗らない改革は、選択してはいけない。

過去にいろいろなご相談を受けましたが、うまくいかない例に共通する要素の一つに「経営者の気が乗らない改革は、決してうまくいかない」ということがあります。

経理・経営改革を進めようとするとき、どうしても想定外のトラブルや調整事項が発生します。そこで判断を経営者に仰いだとき、経営者自身が本当に意欲的である場合は、適切な判断(=その改革の本来の趣旨に合った判断、改革の趣旨に合わなくてもその企業にとって重要な理由がある判断)を下します

ところが、経営者自身が本当は乗り気でない場合は、適切でない判断(=その改革の本来の趣旨に沿っていない判断、改革に逆行する判断、企業にとって重要な理由がない判断)を下してしまいます

適切ではない判断をしたときにその経営者の方に話を伺うと、「この作業に何の意味があるのかわからない」という "そもそも論" から始まることが多いです。

改革のご相談を受けてから、様々な外部専門家も含めて提案などをし、最終的には社内で充分に時間をかけてご検討・決定頂いたはずの改革です。それでも、肝心の経営者が納得していないため、実際のプロジェクト進行時に "ちゃぶ台返し" が起きてしまうのです。

これから改革を進めようとする企業の担当の方は、「どのような内容であっても(※)、経営者が乗り気でない改革は進めてはいけない」ということを念頭において頂きたいと思います。

※改革すべき前提として、不正や法律違反の事実や恐れがある場合は、しかるべき機関や外部専門家に相談しましょう。


いちど失敗すると、その後の改革すべてに「NO」が出る。

いちど大改革を進めた後にその計画がとん挫した場合、多くのケースにおいて、その後のすべての改革に「NO」が出ます。例えば、「少なくとも売掛金の管理だけは変えた方がよいのではないか」「月次決算の早期化だけでも」という限定した提案すら全く通らなくなります。

いちど失敗したという経験から、そのような改革に拒絶感が生じてしまうからです。

それどころか、悪化するケースもあります。
・経理部の話を営業部が聞かなくなり、売掛金の回収遅延が増えた。
・以前よりも月次決算の完了日が遅くなり、経営判断が難しくなった。
・社員間の対立、部門間の対立が増えた。社内の意見交換が減った。

これらの影響は大きく、企業活動が阻害される要因になります。また、企業内の士気が落ち、疲弊する原因にもなります。

最初から「強い経理」に取り組めば、大改革は不要。

ゆっくり改革を進めればこのような "揺り戻し" は起きにくくなりますが、そもそも、事業開始時から「強い経理」を目指して企業経営を進めていれば、改革自体が要りません。

法律の改正などで改革が必要となる場合であっても、それほどの「大改革」にはなりません。最初から「強い経理」を目指している企業にとっては、その改革は単なる「変更」「対応」です。

特にIPOを目指していたり、全国・海外展開を目指したりしていなくても、企業経営を進める中では、大なり小なり、どの企業にも「不測の事態」が訪れます。その不測の事態にも動じず、最善の対応を心掛けられるのは、「強い経理」がある企業だけだと思います。

是非、早い段階から少しずつ、「強い経理」を目指してみてはいかがでしょうか。

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ここまでお読み頂きまして、ありがとうございました。