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短編小説 「行くなよ、少年。書けよ、少年。」

僕は今、学校に行くか、行かないか、迷っている。

「少年、学校が嫌だったら行かなくてもいいんだよ。」こう話してくるのは、お隣の僕より背が低い美人漫画家アルカさんは、それ程有名な漫画家ではないけど漫画家としては食べていけるくらいの収入はあるそうだ。

「学校はね立派な会社に勤めたいなら行くべき場所だよ。でもね、君みたいな少し人とは違う事をやりたい人にとっては、とても窮屈な場所だよ。君はSF小説を書きたいんでしょ?」アルカさんは僕に学校に行く以外の選択肢もある事を教えてくれた。


自己紹介がまだでした。中学三年、ハルトです。僕は将来SF小説作家になるのが目標です。ですが親には小説なんかよりも大学を卒業して、大企業に入れと言われてます高校受験まであと一年ありますが、絶賛不登校中です。

不登校の理由は一言だけで言うのは難しいので長くなりますが話していきます。

僕にとって学校はものすごく窮屈です。小学校はわりかし楽しかったですが、中学生になるといきなりテストの順位が張り出され、担任や校長は高校受験、大学受験や大企業に就職が人生の成功とか言っていて、まるで小説作家や漫画家、声優を目指すのは邪道のように聞こえた。

確かに、小説作家、漫画家、声優などエンタメ系を支えているのは大企業や一般サラリーマンが働いてくれるから、小説作家などは食べていける。

有事の際は小説作家は役に立たない。だけど今は有事でもない、なら小説作家を目指す人が一人や二人くらいいてもいいじゃないか。

そう思い、先生や両親に将来の目標を話したら、ものの見事に完全否定された。何個か書いた小説も見せた、それでも先生も両親も僕を完全否定した。

だけど僕はこうなる事をある程度は予想はしていた。だから、今度はクラスメイトにこの事を話したクラスには仲の良い人もいたから話した、しかしダメだった、周りは現実を見ていたみんな良い高校に良い大学に行く事を目標にしてたからだ。それ以降、徐々に学校には通わなくなった。

特にいじめがあった訳ではない、みんなが受験勉強に必死になって、一人勉強もせずに小説を書いてる僕は少し浮いていたからだ。勉強が嫌いな訳じゃない、ただ、僕には受験勉強よりもやりたい事があった、小説を書きたい、ひたすら小説を書きたいそう思っていた。学校は僕には狭すぎた。

「少年、世界は学校や先生や両親だけじゃないよ、今はインターネットがある。そこで君の小説を評価してくれる人もいるよ。わたしもその一人だよ。」ただ嬉しい。アルカさんは僕の二十作品ある小説を全部読んでくれた。感想もたくさん聞かせてくれる。唯一僕の理解者だ。

「わかってるよ。でも父さんや母さんの気持ちもわかる。小説で食べていけるかわからない。それを心配してるから。」両親の気持ちは中学生の僕でも少しはわかる。

誰だって子供が食べていけるか、わからないような世界で生きては欲しくはない。

安定した場所で長く生きて欲しい、そう思うのが親なんだろう。


「じゃあ、夢は諦めるの?それとも勉強しながら小説を書くの?」決めなきゃいけない、アルカさんも僕を心配してる。中学三年、受験も控えてる、決めないと中途半端になるそれを僕もアルカさんも恐れてる。

「両親が望む場所は小説を書きながらやるのは僕には無理だから勉強を諦める。両親を説得する」両親は僕にエリートになる事を期待してる。それが一番安定した生き方だから。

「いいぞ少年。学校に行くなよ少年、小説、書けよ少年」
アルカさんは応援してくれる。

「学校に行くなよって、大人がそんな事言っていいんでか?」

「いいんだよ!人生なんとかなるもんだよ。そう思えば」
アルカさんはきっとそう生きてきたんだろう。

僕は両親をもう一度説得する事に決めた。もしダメと言われても、何度でも説得する。それでもダメなら家を出て行く。家を出て行ってでも僕は小説を書く。そう決めた。

午後八時だそろそろ両親は帰って来る。
「ガチャ」玄関が開く音が聞こえた。帰ってきたのは母だ。

「ガチャ」三十分して、また玄関が開く音が聞こえた。
「ただいま。」父が帰ってきた。絶対説得する。そう決めた両親のいる場所へ向かった。

「おかえりなさい。」僕は久しぶりにおかえりなさいを言った。二人は無言だった。きっとなにか察したんだ。

「話がある。今後の事で、聞いてくれる。」僕が言うと、二人は椅子に座った。「聞くよ。」母が言った

「いろいろ考えた、自分の事も母さんと父さんが思ってる事も。結論から言うと、小説作家になりたい。小説を書きたい。勉強は諦める。」僕は二人を見て言った。

「わかった。受験はもうしなくていい。」父がそう言って席を立って風呂に向かった。ありがとうを言う時間もなかった。

父がそう言ったから話は済んだと思い、僕も席を立とうとしたら母が「待って。話はまだよ。」そう言ってきた。

「高校は行って欲しい、通信でもなんでもいいから。勉強もハルトのペースでいいから。小説も書いていいから。お願いそれだけわかって。」母は少し目に涙を浮かべ僕に言った。

「ありがとう。」僕は嬉しかった。ただただ嬉しかった。

すぐにアルカさんに言いに行った「アルカさん小説作家目指すよ。母さんと父さんに話したよ、なんとかなったよ。」

「よかったじゃん。応援するぞ少年。」

それから一週間経って学校に行く事にした。父と母が学校に相談してクラスを変えて、はっきり言って学年ドベのクラスになった、そこなら小説を書いていても他の生徒の邪魔にはならないから。

高校は通信制にする事にした。それなら高校には通わなくていいからだ。十八になったら家を出る。そして小説作家を目指すそう決めた。

「おっ、学校行くのか、頑張れよ少年。」アルカさんも応援してくれる。

「ありがとうございます。いってきます。」

「少年、小説楽しみにしてるから、書けよ少年!」

「はい!書きます。いっぱい書きます。いってきます。」



終わり。

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