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〈吉本隆明とミシェル・フーコーの世界認識のその後〉~その2

 まず、現在の世界思想の到達点から〈世界〉というイメージについての検討や今後の課題について言及してみる。

 世界という概念は、一つの全体性のことである。例えば世界という概念をいま〈現存する国家〉という切り口から眺めてみる。

 現在の世界に存在する国家の数は、196ヵ国を数える。この196の国家は、その1で述べたように下記にあげた〔a~d〕までのイメージとしての歴史的地層の何処か、またはその併存状態にある、と言ってよい。また、おそらく明治以降1960年代くらいまでの日本社会のように外面は近代的だが、社会の内実にアジア的な遺性を、すなわち地域社会や小集団や各家の内部に複数の地層の特性(近代的、アジア的)を斑に残しているような国家も存在する。さらにこのイメージ地層論からみると現在、その行く末について最も興味深い国は、中華人民共和国(中国)であろう。何故なら中国は幾つかの少数民族の地域社会や北京、また上海、香港、広州など、a~dまでの様々な地層の地域社会をあわせ持つ国家と言えるからである。そういう意味で中国は、国家の表看板に腐敗し硬直した社会主義官僚組織をいただきながらも、その中身は最も〈国際社会〉=〈現在の具体的な世界イメージ〉に相似的な社会像と言えるであろう。ただこれは、現在の国連を世界の統制機関とする社会イメージが、私たちにとってより良い未来社会をもたらす社会イメージとは程遠いのと同じくらいに期待が持てないことは、言うまでもない。もし現在の世界の中で、そういう民衆にとっての少しでも良質な未来社会への可能性を持った幾つかましな諸地域をあげるなら、欧米先進社会や日本社会がその一つと言ってよいのかもしれない。もちろん、そのように言えるのは、様々な農業生産物の供給地域や石油や鉱業生産物や木材など、その他の自然採取の材の資源供給地域に住む民衆たちの貧困や彼らの居住区の自然環境破壊や収奪というマイナス価値の反転イメージとしてのプラス価値イメージとして現出しているにすぎない。この歴史的とも言える地球規模の負担を解消するには、前述した先進社会諸国からこれらの世界のマイナス価値を積み重ねてきたアジア、アフリカ、中東、南米諸国への〔無償の贈与〕を生活者たちへの生活の質的向上に資するようなシステムを構築して投入するしかない、と考えられる。一方、プラス価値イメージとして現出した前述の先進社会諸国では、生産が消費を生み出すのではなく、逆に人口増加による大規模な消費が生産を促すという、社会成長エンジン動力の逆転をもたらしている。

 現在の世界理念の経済的側面への展望的な考察は、今後、これら贈与と消費概念という、二つの主要な要素を柱として構築される必要があるだろう。

〔a.狩猟、採集、放牧などを基幹産業とするアフリカ的な地層

b.特に稲作や麦作を基幹産業とする農耕社会であるアジア的な地層

c.各種工業生産を基幹産業とする近代的な地層

d.運輸、データ通信、ハイテク技術による種々の大小にわたる社会システム構築などを基幹産業とする現在的な地層

に大きく分類が可能である。〕
        (この項つづく)




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