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映画『アズールとアスマール』

2006年/製作国:フランス/上映時間:99分 ドキュメンタリー作品
原題
 AZUR ET ASMAR
監督 ミッシェル・オスロ



予告編(日本版)

予告編(フランス版)


STORY

 瞳を開け、そして、出かけよう。ジンの妖精を探しに。
 
 幼い頃、アラビア人の乳母から聞いた子守歌を頼りに、ジンの妖精を探すため、遠く海を渡ったアズール。しかし、やっとたどりついた憧れの地は、“青い瞳は 呪われている”とされる国だった!文化も人種も異なるその異国で、盲人のふりをして旅を続けるアズール。それは、瞳の色を隠すためだけでなく、受け入れられない異文化に対し、自ら心を閉ざした証でもあった。やがて、大好きな乳母ジェナヌと、兄弟のように育った乳母の子アスマールに再会。今や裕福な生活を送るアスマールと“呪われた青い瞳”を持つアズールは、対立し合いながら、それぞれジンの妖精を探しに旅立つ。

 少年の成長と、異なる文化の人間同士の対立と融和が描かれる、新しい冒険ファンタジーの誕生。


レビュー

 主に中世のイスラム圏(北アフリカのマグレブ地方。現在のチュニジア、アルジェリア、モロッコあたり)を主要な舞台とする本作には、実在する建築や風景が多数登場します。
 監督のミシェル・オスロはアフリカにて子ども時代を過ごした経験を持つフランス人監督で、そのような経緯がしっかりと生かされているわけです。

 本作はまず「肌の色」「目の色」「言葉」「文化」等という異なるバックボーンを持つ人々の経験する、「反目」「偏見」「差別」「迫害」「疑心暗鬼」等を描いたのち、それらが最終的に「相互理解」「共生」「永久とわの友愛」へと向かう様子を、「2つの国」「2つの言語」「2つの価値観」を対比させながら、美しいアニメーションを用いて描いてゆきます。
 素晴らしいのは、それを子どもから大人までが直感的に理解出来るように描ききり、尚且なおかつ「言葉」ではなく「体験」として観客へと伝えようとしていることです。
 「体験」として伝えるために用意されている様々な仕掛けはどれも見事で、例えば映画の中で話される「アラビア語」は意図的に一切翻訳されません。Blu-ray(ソフト)に至っても、字幕は用意されていません。ですからもしそのセリフを知りたいのであれば、アラビア語を学ぶしかないわけです(もしくは考察サイトを探す等のリアクションが必要となります)。
 これはどうやらオスロ監督の、異文化に接した際のリアルな体験を観客へともたらすための工夫のひとつであるらしく「相手が何を話しているのかわからない」ことによる「不安」、「(相手の言葉が理解出来ない事により生じる)想像」や「ストレス」までをも、リアルな体験として観客へともたらす工夫に違いありません。
 他にも「セリフ」や「視覚効果」等による「対比」により、上質な異国体験(経験)を、全編に渡り観客へともたらし続けます。

 ちなみに中世のヨーロッパ諸国は、キリスト教信仰による「暗黒時代」の真っただ中にあり、天文学、数学、科学、芸術を含む全ての分野において、当時全盛であったイスラム文化がまさっていました。
 また現在、私たちが西洋文化由来のものであると思っているものの多くは、少しさかのぼれば大抵がイスラム文化のものであるということを知ることが出来ます。

 話を戻します。

 この稀有けうで、一切観客にびることのない清廉せいれんなアニメーションの白眉はくびは、個人的には視覚的な美しさではないかと思います。
 そしてその目を見張る色彩や造形のみょうに音楽が寄り添い更なる領域へと昇華することにより、忘れることの無い経験と記憶を、観る者の心へと刻みます。
 
 「鑑賞」というよりも、異国への「旅」といっても過言ではない本作。
 おすすめです。
 ※色彩と造形の美しさをより楽しみたい方は、Blu-rayにて鑑賞のこと

 
 

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