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電通の発表から読み解く広告費の推移と媒体の変化

愚問愚答(ぐもんぐとう)
→ くだらない内容の質問とその答えで、程度の低い問答。

自分自身を賢いとか力があると思っているわけではないが、それでもレベルが低いなと感じる場面も多くあるのもまた事実だ。

それは、こちらが話をしているときに相手の態度を見たり、質問されたときに感じることだ。

とりわけ、クリエイティブな仕事が多いことから、そこの違和感については敏感な方だと思う。

ストーリーは特に大切な時代だ。

CMという言葉でイメージするもの

企業のCMは他の人よりも多く見ることを意識している。

通常、CMになると煩わしいと感じて飛ばしたいと思う人が多いと思うが、私の場合はいつの頃からか、割としっかり見るようにしている。

その意図は、どういうCMが最近の流行りなのか、どういった企業がCMを流す余裕があるのかといった指標を自分なりの感覚の軸を意識するためだ。

CMというと、まだまだテレビCMを主軸に考える人も多いが、もはやネット広告の方が主流だといってもいい。

2022年2月24日に電通が2021年の日本の広告費について発表をしている。

2021年のインターネット広告費が2兆7,052億円(前年比121.4%)となり、マスコミ4媒体の広告費を上回ったという内容だ。

マスコミ4媒体とは、テレビ、新聞、ラジオ、雑誌のことで、2兆4,538億円(前年比108.9%)だった。

ネット広告の好調で、国内の総広告費全体も6兆7,998億円(同110.4%)の2桁成長を記録している。

日本の広告費をセグメント別にすると、3つに分類される。

  • マスコミ4媒体(テレビ、新聞、ラジオ、雑誌):36.1%

  • インターネット広告:39.8%

  • プロモーションメディア:24.1%

2021年の比率も書いたが、インターネット広告費がマスコミ4媒体の広告費を上回るのは、ネット広告の総額を推定し始めた1997年以来、初めてのことだ。

2020年は新型コロナウイルスの影響で、2019年と比較しても約8,000億円程度の減少という大打撃を受けた広告業界だが、2021年は2020年の水準に戻したといえる。

広告費の推移と媒体の変化

広告費全体の回復を押し上げているのは、インターネット広告費の成長だということは、ほとんどの人が理解しているだろう。

広告費の過去15年の歴史を振り返るとこんなイメージだ。

15年ほど前までは、テレビと新聞が広告メディアの2トップだった。

1975年にテレビ広告費が新聞広告費を抜いた後も、この2トップは広告キャンペーンを支え合って成長してきた。

テレビCMが派手なアイデアで世の中を賑わせ、新聞広告では同じタレントとキャッチコピーを使いながら詳しい情報を伝えていくというのが潮流だったわけだ。

2000年代前半、テレビ広告費2兆円に対し、新聞広告費1兆円という、1兆円差のコンビだった。

転機は、2008年のリーマンショックだといっていいだろう。

企業が広告費を減らしてマスメディアが一様に大打撃をくらった後に勢力図に変化が起きた。

まず、2009年にインターネット広告費が新聞広告費を超えた。

そして、10年後の2019年にはマス広告の本拠地であるテレビ広告費をインターネット広告費が超えてしまった。

残りの雑誌、ラジオ広告費は金額が小さいので当然だが、それからたった2年後の2021年に、インターネット広告費はマスコミ4媒体全体より大きくなったというわけだ。

マスコミ4媒体に関する誤解

こうやって書いていくと、マスコミ4媒体である、テレビ、新聞、ラジオ、雑誌は完全にオワコンだと思ってしまう人も多い。

誤解してはいけないのが、2018年から電通の調査報告には、マスコミ4媒体由来のデジタル広告費という項目が儲けられている点だ。

テレビでいえば、TVerのような番組の見逃し配信、ラジオでいえば、radiko、新聞や雑誌のデジタル版といった具合に、デジタル化が進んでいるという実態があるということだ。

2021年版のマスコミ4媒体由来のデジタル広告費では、テレビ254億円、新聞213億円、ラジオ14億円、雑誌580億円となっている。

注目して欲しいのは雑誌で、紙媒体としての雑誌広告費は1,224億円ということは、紙:デジタル=2:1(1,224億円:580億円)というところまで来ているということだ。

つまり、雑誌はマスコミ4媒体の中で、最もデジタル化が進んでいるといっていい。

その理由は、インターネットは同じ興味の者同士が自然と引きつけ合う傾向があり、上手くいけばコミュニティを形成するという特性がある。

メディアとして成立するためには、特定のこういう人たちが集まっていると企業向けにアピールしやすいのが、まさに雑誌だといえるだろう。

雑誌と書くと、漫画やファッション誌をイメージする人もいるかもしれないが、経済誌、ニュース、趣味まで幅広く展開できることもしっかりと把握した方がいい。

このあたりのデジタル化は、今まさに業界全体で試行錯誤している状況だと思っていいだろう。

今後の動きに注目していきたい。

デジタル化が進むCMの変化

ここからは最近チェックしたCMの中からいくつか気になったものについて、個人的な意見を書いていこう。

まず、最近見たCMでクオリティとストーリーのズレを感じた事例だ。

長澤まさみ、未来が見える八百屋の店員に でも計算苦手?子供に突っこまれおちゃめな姿 クボタ新CM

※ リンクをクリックすると音が出るので注意

(出典:MAiDiGiTV)

クボタのCMなので、撮影規模やキャスティングについては申し分ないというか、かなり力を入れていることがわかる。

その内容もサスティナブルというバズワードを使い、生産者と消費者を繋ぐスマートアグリソリューションという、いかにも近未来っぽい企画だ。

クボタという企業のIRやCSRを全面に出したいという意図も理解できるし、CMとしてはとてもキレイにつくられている。

ただ、最後のオチの部分に違和感をなぜ覚えなかったのだろうか。

おそらく、クボタほどの大企業なので、どこかの大きな代理店が企画を考えて提出をしているのだろうが、私がクボタの担当者や代理店だったら、こんな企画には絶対にしないだろう。

その違和感は、現金のお釣りを多めに子どもに渡すというシーンだ。

サスティナブルとかスマートというワードで近未来的な世界観を描いている中で、なぜ現金というアナログ過ぎる演出をいれるのだろうか。

キャッシュレスが標準化していく時代に、クボタ側の主演の長澤まさみが現金を渡すということの違和感を覚えないことへ、ストリーの弱さと考え抜かれていない企画だという印象を覚える。

笑いを最後に持ってきたかったのだろうが、この詰めの甘さが興冷めするというか、逆にクボタという企業のミッションやビジョンが弱いと感じてしまうのだ。

一方で、非常に優れたCMを出しているのが、日清だ。

少し前になるが、8分割された画面で一気に8種類のカップヌードルのCMを出すというのは、とても面白いと感じた。

CMというのは数回見れば飽きてしまう。

そもそも、人の脳裏に刷り込んでいくのがCMを出すポイントの1つなので、またこのCMかと思われるのはある意味で成功なのだが、そこに嫌悪感が勝ってしまってはダメだ。

この8種類のCMを同時に出すというのは、最低でも8回はしっかり見せられるCMがあるという効果が含まれているのが秀逸だと感じたのだ。

ただ、盤石ではなく、これはあくまでテレビCMにおける場合だ。

モバイルシフトしている時代に、小さな画面のスマホでこのCMを見るのは適していない。

あくまで、媒体をTVにしたときの話をしていることには注意をして欲しい。

日清は、この8分割CM以外にも、攻めているCMが多く、万人受けを狙っていないことが明確なので、いつもついつい確認してしまう企業の1つだ。

まとめ

個人的に思うのが、営業 = 広告に近い感覚になっているということだ。

いかに広告を上手に使うかで、前時代的な人に依存した営業が必要なくなっているということだ。

営業力、影響力、広告などの企画力が総合的に必要になっている時代、我々、stak, Inc.もその都度、いろいろと動き回ろうと思っている。


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植田 振一郎 Twitter

株式会社stakは機能拡張・モジュール型IoTデバイス「stak(すたっく)」の企画開発・販売・運営をしている会社。 そのCEOである植田 振一郎のハッタリと嘘の狭間にある本音を届けます。