愛してくれない人を好きになる病

何週間か前のこと。

大切な友人が、涙ぐみながら恋愛相談をしてきたのをきっかけに、この記事を書いている。

要約すると、

「彼氏が私のことを好きではないみたい。でも、好きだから振りむかせたい」

というものだった。

それだけに留まらず「私がもっと痩せてい、可愛かったら好きになってもらえるのかな？」とまで言い出すものだから、いやいや、それは違うだろうと。

あなたが悪いのではい。あなたを愛さない人をたまたま運悪く、パートナーとして選んでしまっただけ。

こういう「愛してくれる可能性がない人」を好きになったことが一度だけ、ある。

相手は妻子ある既婚者。こちらの一方的な片思い。

仕事でしんどいとき、話を聞いてくれる。疲れているとき、さりげなく冷えた野菜ジュースを差し入れてくれる。空腹で、真夏の気候にはピッタリ。不祥事は起こさなかったけれど、密室で数時間、2人っきりにもなった。

とはいえ、むこうは従業員のケアとして優しく接してくれていただけで、奥さんとうまくいかない時の暇つぶしになる都合のいい女。私に愛情などなく、愛してくれるはずもないと分かっていた。

なのに、なぜ好きになってしまったのか。相当、悩んだ。

その悩みにグサリと刺さるタイトルで、運命的な出会いを感じて即購入した本が「なぜ愛してくれない人を好きになるのか（著）二村ヒトシ」だった。

不幸な恋愛にはまるメカニズムを理解できた。「こんな片思いはやめよう」とまで決心できたのは、この本にある一節のおかげ。

苦しい恋にハマり中の女友だちを、想像してみてください。彼女は「彼女を愛さない男を無意識に自分から選んで、好きになっている」と思いませんか？ 私の場合は、そうじゃない！と言いたくなる気持ちもあるかもしれません。

でも、もし恋で苦しい思いをしているとしたら、その可能性は十分にあるのです。心のどこかで自分を「ダメな女だ」と思っていると、あなたのことをなかなか受け入れない男性や、あなた以外のことに夢中な男性が、とても魅力的に見えることがあります。

あなたが彼に惹かれたわけを思い出してみてください。

「私に、何か教えてくれそう」
「私をひっぱりまわして、知らない世界に連れていってくれるかも」

そんな気持ちに心当たりはありませんか？

引用元：なぜ愛してくれない人を好きになるのかP.22-23

多分、幻想に恋をしていたのだと思う。

手が届かない人だからこそ、もし愛してくれたら天にものぼるくらい嬉しいはず。とてつもなく認められた気分になるはず……という期待。

しかも、歳のはれた大人の男性。知らない世界に連れて行ってくれるかもしれない。自分を認められず自信のない私を一変させ、満たされない灰色の日々に色をつけてくれるかもしれない。

彼はわたしを本当はどう思っているのか
そもそも本当に好きなのか
妻子ある人がほかの女性にこんな風に接しているのはおかしくないか……

と深く考えもせず、「かもしれない」という幻想や、起きるかも分からない「彼との幸せな将来」を妄想するのに夢中だったのだ。

しかも、片思いをしていた当時、自信の「じ」の字もなかった。だから好意を示してくれる男性があらわれても、魅力的にみえないどころか、拒絶したくなる。嘘なのではないかと疑う。という状態によく陥っていた。

喉から手が出るほど愛に枯渇していたのに、目の前に渇きがうるおうチャンスが訪れると、肝心なところで逃げたくなる。こうなるのは、一説にある通り「ダメな女」と自分に対して思う、自信のなさ。

根底にある「こんな私を好きになってくれる人はいるはずがない」「愛される価値がない」という気持ち。

だから、こんなダメな私に、好意を示してくれる人はみんな「おかしな人」と捉えてしまう。好意を示さないドライな男性が「まともな人」にうつり、魅力的にみえるのだ。

ドライなのは、本当にこちらに興味がない証拠だというのに。

それでも恋をしてしまう。なかなか諦められず、意地でも振りむかせたくなるのは、もはや「愛してくれない人を好きになる病」と言ってもいいだろう。

〈余談〉
夫と結婚をしてしばらく経ち、片思いをしていた記憶すら忘れかけていた頃。

「また会いませんか」というLINEがあった。

愛する妻と子供がいるのに、裏で信頼を損なうようなことを相変わらずしているのかーーと、シンプルに引いた。　

幻想に恋をしていると、幻想の恋が消える「都合の悪いところ」はみえなくなり、「都合の良いところ」ばかり強調されてみえる。恋は盲目とは、こういうことなのかな。

なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか (文庫ぎんが堂)

▲本当は愛されたくて仕方ないのに、不幸な恋愛ばかりしてしまう人は一度、目を通してみてほしい。

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