小匙の書室169 4月の読書振り返り
4月。
新年度が始まるひと月。
文壇では大きなイベントとして本屋大賞のある月。
ああ、桜が咲いているなあという感慨を特に抱くこともなく、私はひたすらに読書に明け暮れていました。
ここ最近は(以前にも記事に書いたことだけれど)読書スランプから脱出できて、今月は自分でも驚くほど読了することができました。
その冊数、23。総ページ数、7,000超え。
それでは簡単に振り返っていきましょう。
対怪異アンドロイド開発研究室/饗庭淵
小説を始め創作というのは、時代の移ろいと共にその表現方法の幅を広めていくものだと思っています。本作もまさにそうで、怪異と対峙するのは高性能のAIを搭載したアンドロイドなのです。
だから、そう。ホラー風味のSFといいますか。怖さはあるけれどどこか新鮮なのです。研究室そのもののバックボーンも絡めて来るので読み応えバッチリ。続編を期待したい。
余命0日の僕が、死と隣り合わせの君と出会った話/森田碧
2024年、6/27にNetflixで実写映画が配信される『余命一年の僕が、余命半年の君と出会った話。』。それを第一作目に連なる〈よめぼくシリーズ〉の4冊目。
涙を流すと命に関わる病──涙失病を患った主人公の瀬山が出逢ったのは、どんなことでもすぐに号泣するクラスメイトの星野涼菜だった。
「泣くこと」「泣けないこと」に特化した作品で、私的に「なかなか攻めた主人公だな……」と思ったのが印象的。
泣けなくてもいい。でも、泣くことの意味が少しでも広まってくれたら私は嬉しいのです。
白線以外、踏んだらアウト/田丸雅智
日常のあちこちで転がっている「あるある」や「迷信」をモチーフに、奇想天外の展開が待ち受ける〈おとぎカンパニーシリーズ〉最新作。
シリーズとはいえ各巻単発ものなので、もちろんここから読んでも大丈夫。現に私がそうだったのです。
なんといっても、田丸先生の発想力に私は舌を巻きっぱなしでした。あるあるをこうも面白く仕立て上げられるなんて!
緊張の“人”、白線の民、原稿中、ソウルスペースが特に好みでした。
あめくシリーズ/知念実希人
今年、アニメ化が決定した知念実希人先生の看板シリーズ。天久鷹央の推理/事件カルテ!
シリーズの巻数は10巻以上あり、壁が高いなと思っていたので読了が遅々として進んでいなかったのですが、「こりゃあもう読むしかないだろう」と思い立ち現在も積読減らしを頑張っているところです。
読むたびに「一つの症状から、こうも面白い謎へ膨らませることができるのか……」と感服してしまいます。非常に読みやすく、キャラクタ小説としても笑えて泣けるので、知念先生の入り口には持ってこいと断言できます。アニメ化の続報が楽しみです。
まじっく快斗1〜5/青山剛昌
こちらは普段の読了記事とは少し違います。
私は小説の他にも漫画、それもコナンや金田一少年を読んでいます。特にコナンは、ハマり始めてから毎年映画に行くほどに好きで、今年も例に漏れず初日の朝イチに行ってまいりました。
しかし恥ずかしながら「まじっく快斗」の方はそこまで明るくなく、それ故に予習復習も兼ねて一気呵成に読んだ次第。
おかげさまで映画を存分に堪能することができました。
驚愕/衝撃の1行で終わる/始まる3分間ミステリー/『このミステリーがすごい!』大賞編集部・編
難しいと思われるレギュレーションをあっさりと飛び越えてしまう、そのこと自体に驚きです。
第15〜22回までの「このミス大賞」出身者を集めたアンソロジーで、「最近この賞に触れていなかったなあ」という読者にもうってつけ。
どうせ読むなら2冊まとめ読んじゃいましょう。そうすればさらに楽しめる一篇もありますからね。
※『衝撃の〜』収録の『芋妻』に言及した私のXのポストに、著者である柏木伸介先生からコメントが届いたのは嬉しい思い出。
リアル脱出ゲームノベル The Only 1/稲村祐汰
小説史上初のラスト1ページ!
と聞いて、「またまたぁ、そんなこと言われたらネタが割れちゃうよ」と思ったあなた。安心してください。いやもう、本当に嘘偽りなく「そんな終わり方あるのか!」となりましたから。
リアル脱出ゲームノベルですからね。ただ物語を最後まで読めばいいというのではありません。そこには予想だにしない展開が待ち受けていて、読者自身の手で進めていく物語の先には、創作の素晴らしさが転がっています。
ぜひとも体験してみては?
死霊魔術の容疑者/駄犬
デビュー作「誰が勇者を殺したか」が人気を博す駄犬先生による最新作。
装画が私の大好きな遠田志帆さんが手掛けているということもあり、手に取りました。
国内の反乱軍を、大量のアンデッドを率いて潰したのは誰か? というフーダニットを用いたファンタジック・サスペンス。
魔導士を志すルナの成長と、真相に際したある仕掛けが非常に素敵な一冊でした。(後者に関しては読了から数日後に気付き、「あぁ〜!!!!」ってなりましたよ、ええ。)
永劫館超連続殺人事件 魔女はXと死ぬことにした/南海遊
館、密室、タイムループの三重奏本格ミステリ。なんて聞いたら読まない手はない。既出のタイムループ系ミステリとどのように肩を並べて来るのだろうか、私は非常に楽しみにして読み始めたのですが。
その期待に十分に応えてくれた且つ人間ドラマにも丁寧にフォーカスをあてた、素晴らしいミステリでした。
トリックはやや頭を使う部分はあるけれど、それ以上にホワイダニットが良かった。いや〜まさかこんな余韻に浸れるとは!!
創作と真摯に向き合う作家の矜持がしっかりと表れています。
小市民シリーズ/米澤穂信
今年の夏にアニメが放映される〈小市民シリーズ〉。そして4月にシリーズ最終巻が刊行されるとあって、私はようやく積読から引っ張り出してくることができました。
小市民を目指して互恵関係を結ぶ小鳩と小佐内が出くわす、日常の謎。
スイーツの甘さと米澤穂信先生らしい青春の苦味が見事にマッチした、至高の一品的作品たち。
怒涛の栗きんとん、謎解きの魅力に満ちた短編集。どちらも面白かったです! 今ならまだ間に合います、みなさんもシリーズを追いかけましょう!!
ヒトクイマジカル 殺戮奇術の匂宮兄妹/西尾維新
戯言シリーズ第5弾。
前巻から時間が空いてもいざ読み始めれば瞬く間にその世界観にのめり込んでいくことができました。
運命と縁、生と死。これにとどまらない二面性がそこここに溢れていて、シリーズの中でも個人的な共感を多く含む一冊でした。
なかなかに衝撃な展開には度肝を抜かれ、これからどうなっちゃうんだろう……という恐れを抱く私と、それでも何とかなってしまうんじゃないかそれが運命であり物語なのだからと流れに身を任せる私がいます。
分厚くてもほとんど一気読みでした。
たくさんの物語と出逢えるのはとても嬉しいことです。
先述したように読書スランプもほとんど感じられないので、5月もグイグイ読んでいけたらいいなあと思っています。
ありがたいことにゴールデンウイークもありますしね。
長編なんかに挑めたらいいな。
ここまでお読みくださりありがとうございました📚
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