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小匙の書室158 ─死霊魔術の容疑者─

 誰が反乱軍を鎮めたか。
 調査を始めた騎士団は容疑者と目される屋敷の主の元へ向かうのだが、一人の少女と出会い──。


 〜はじまりに〜

 駄犬 著
 死霊魔術の容疑者

 『誰が勇者を殺したか』が話題沸騰中の駄犬先生。その待望の新作がこちら、『死霊魔術の容疑者』になります。
 普段あまり手に取らないジャンル且つはじめてのレーベル様であり、「じゃあ何に興味を惹かれたのか」と問われたら、私が真っ先に差し出す答えはただ一つ。
 装画を手掛けているのが遠田志帆さんなのです。
 で,実際にあらすじを読んでみたところ『ファンタジック・サスペンス』とあるので、いつもミステリばかりを読み漁っている私でも楽しめそうだなと思っているのです。
 たまには異世界へ足を運ぶのも良いでしょう。

 さあ、果たして。赤い瞳の少女はどんな風に物語に絡んでくるのか──。

ぺらり

 〜感想のまとめ〜


◯なかなかあっさりした読み口。これはファンタジーに慣れていない私にはピッタリでした。
 サスペンスよりかは、メインキャラであるルナの成長記録に重きが置かれていたように思います。
 彼女は装画から感じ取れる雰囲気とは裏腹に、快活な性格をしていました。ルナのCVが高橋李依さんであるのも納得です。

誰がアンデッドを使役し、反乱軍を鎮めたのか。この所謂フーダニットを大きな謎としているのですが、それが宙ぶらりんのまま先述した成長物語が始まるので、「いったいどこへ着地するのだろうか、きちんと真実は明らかになるのだろうか」と正直不安に思いました。
 しかし、真実のためにはどれもこれも必要なことだったのです。それにより犯人の動機が非常に理解しやすくなっているのでした。

所々で問われる価値観。(あくまでも私なりに)ざっくりわけると三つです。第一に『魔法』、第二に『』、そして第三に『人生』。
 文字だけを見るとその壮大さ故に怯みそうになりますが、実際には自然な会話のテンポで綴られていくので、すんなりと私ごととして呑み込むことができます
 個人的に魔法は現実世界においても利用することができる点が好みでした。『命』や『人生』にまつわることは、是非とも本編を読んで感じてほしいです。

さりげなく貼られている伏線。事件の真実、もそうだけれど、ルナの機微を読み解くにあたって見逃せない伏線に私は膝を叩きました
 あのページは良い演出だと思います。
 商品として売られた少女が、様々な人との巡り合わせでいかに生まれ変わるのか。ぜひとも見届けてほしいです。

読み終えたあと、実は私は物語の奥深くまで潜っていたということに気付かされました。それはきっと構成の巧さが成せるワザなのでしょう。
 遠田志帆さんによる挿絵も重要人物を押さえて描かれているので、ルナと彼らの関係性がよりわかりやすく伝わってきます
 ルナの成長物語と群像劇を存分に楽しんでほしいです。


 〜おわりに〜

 駄犬先生初読みでした。文体はとてもあっさりしていて読みやすく、あれよあれよという間にページを捲っていました。
 ちなみに。対象店舗であるTSUTAYAさんで本作を購入すると、オリジナルオーディオドラマカード『ルナの魔法(CV高橋李依)』がついてきます!
 また帯のアンケートに答えるとアナザーエピソードも読めます。

 一冊でもたくさんの楽しみ方があるのは嬉しいですよね。これはもう、アニメ化するしかないのでは?

 ここまでお読みくださりありがとうございました📚

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