小匙の書室167 ─天久鷹央の事件カルテ 火焔の凶器─
陰陽師の墓の調査に向かった大学教授らを襲う、原因不明の病と人体自然発火。
果たしてこれは、呪いなのか。それとも──。
〜はじまりに〜
知念実希人 著
天久鷹央の事件カルテ 火焔の凶器
現在刊行されているあめくシリーズの折り返しに至る一冊。ようやくここまでという思いと、もうここまで、という驚きが絡み合っています。
このシリーズは一度ハマったら抜け出せません。次はどんな謎がやってくるんだろう、次はどんなドラマが待っているのだろう、と私は積読を振り返りながら考えるのでした……。
さて。タイトルに『火焔』とあるように、統括診断部に舞い込んでくるのは人体自然発火の謎です。
それに対していかなる医学的知識を用いて『診断』を下すのか。
私は楽しみにしながらページを捲っていきました。
〜感想のまとめ〜
◯今度の敵は陰陽師の呪いと人体自然発火。前者に関しては、あめくシリーズらしいオカルト要素をふんだんに盛り込んでいました。
ミイラ取りがミイラになるように、陰陽師の墓の調査に向かった大学教授らが見舞われる事態。
まずはこの呪いの正体を突き止めることとなり、統括診断部のコミカルなやり取りが小気味よく展開を進めていきました。
診断には鷹央の執念があります。
◯呪いに診断が下されてもなお、不明なこと。それが自然発火なのです。古今東西さまざまな作品で人体自然発火を扱ったミステリがあるだけに、今作ではどのようなアプローチを見せてくれるのだろうとワクワク(不謹慎?)させられました。
密室の発火、思いもかけない発火、そして不可解な発火。
一度ならず三度も起きる現状に、果たして明快な説明が付けられるのだろうか?
こう思ってしまうのも無理からぬことでした。
◯誰が、何のために発火させるのか。調査はそう容易く進まず、あまつさえ統括診断部がのっぴきならない事態に陥り、彼らと共に私も窮地に立たされていく気分に。
だからこそ試される統括診断部──タカタカコンビの絆。
これまでの一年弱、なぜ二人は関係を解消させることなく日常を続けてこられたのか。
なんだかんだいいつつ、鷹央のために動ける小鳥は素敵なのです。そのために支払った代償はあるけれど、彼のことを見ている人が必ずいるはずなのだ。
◯一筋縄でいかない展開。謎というのは人間が絡む以上、シンプルにはいかないもの。そのことを理解していてもなお、ここまで底の深い『診断』が下されるとは思いもしませんでした。少なくとも2回は「えぇっ」となりました。
誰かのために、命を燃やすということ。
犯人の選択が将来,正しく機能することを願わずにはいられません。
◯小鳥の恋路も見どころ。毎回毎回邪魔が入って頓挫するそれですが、今回はなかなかいいところまで進むのです。まさか、ひょっとして? と柄にもなくドキドキさせられました。
〜おわりに〜
今回、小鳥の発言の中で統括診断部のこの先について気になる点がありました。初顔合わせから十ヶ月。二人の絆が強固になったことを確かめられた一冊であっただけに、それは拭い去れない印象を脳に刻んでいます。
このシリーズは、まだまだ続いていってほしい。
いやむしろ最終回なんて来なくていいとすら思います。
アニメ化でさらなる人気を獲得してほしいですね。
ここまでお読みくださりありがとうございました📚
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