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拷問投票

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SF長編小説。二十年後の日本、凶悪犯への厳罰化を求める世論に流され、一部の犯罪者を合法的に拷問することができる拷問投票制度が存在していた。残虐なレイプ殺人事件で娘を失った高橋実は…
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2024年3月の記事一覧

◯拷問投票213【第三章 〜正義と正義〜】

「いや……」  適切に意図を汲み取ってもらえなくて、佐藤は、少し動揺した。拷問に反対する…

山本清流
3か月前

◯拷問投票214【第三章 〜正義と正義〜】

 その途端、目に飛び込んできた。  なんだ、これは、と佐藤は息をのむ。  ひとつの投稿が、…

山本清流
3か月前

◯拷問投票215【第三章 〜正義と正義〜】

 細かい事情はわからない。ともかく、添付されている音声データをタップした。イヤホンをしな…

山本清流
3か月前

◯拷問投票216【第三章 〜正義と正義〜】

『わたしだって、サイコキラーを、かばいたくはないですよ。殺人鬼の涙なんてのは、フィクショ…

山本清流
3か月前

◯拷問投票217【第三章 〜正義と正義〜】

 少しの無言ののち、音声データの中で川島の声は言った。 『わたしは、ただ空気を読みたいだ…

山本清流
3か月前
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◯拷問投票218【第三章 〜正義と正義〜】

 佐藤は、言い訳をするように、フェイク情報だと見抜けなかった原因を探した。すぐに見つかっ…

山本清流
3か月前

◯拷問投票219【第三章 〜正義と正義〜】

   ※  それから引き続いた怒涛の展開の本当の意味をしっかりと理解していたのは、もしかしたら、長瀬と川島だけかもしれない。あの夜の長瀬の自宅リビングでふたりだけで交わされた言葉たちはあの時空に取り残されている。  SNS上で拡散した音声データについては、多くの国民からフェイクだろうとみなされた。平和刑法の会としても、これといった反応は見せなかった。 そのうち静かに忘れ去られていくかに見えたが、まったく違った。時を置かずして、今度は、平和刑法の会の幹部たちが裁判員の買収計画

◯拷問投票220【第三章 〜正義と正義〜】

 どうあれ、わざわざ川島が真の活動目的を打ち明けた理由については、長瀬にも、確信的な想像…

山本清流
3か月前

◯拷問投票221【第三章 〜正義と正義〜】

 幸いにもと言うべきか、国民に深く遵法精神が行きわたっている。  元を辿れば、拷問投票法…

山本清流
3か月前

◯拷問投票222【第三章 〜正義と正義〜】

 拷問投票に向けての最後の障害として残されているのは、あとひとつだった。なによりも障害と…

山本清流
3か月前

◯拷問投票223【第三章 〜正義と正義〜】

「信じるしかない、というのが実情だ」  こっちだって信じきってるわけじゃない、というニュ…

山本清流
3か月前
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◯拷問投票224【第三章 〜正義と正義〜】

 さまざまな活動を展開してきたが、どこまで精いっぱいに手を伸ばしても、制御できる範囲は狭…

山本清流
3か月前

◯拷問投票225【第三章 〜正義と正義〜】

    ※  被告人の事情を最大限に酌むことができた、とは思っていない。もしかしたら………

山本清流
3か月前
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◯拷問投票226【第三章 〜正義と正義〜】

 テレビの電源を入れると、公共放送のチャンネルで、この一日に起きた出来事をまとめたニュースが流れている。ディスプレイ上には、『17:56』との時間表示があった。背後のレースカーテンのむこうからはまだ闇が流れてこない。 「もう? ちょっと待ってよ」  理子は、慌てた様子でリビングに駆け込んできた。その両手で、タブレットをひとつ握りしめている。 「まだ、やってる途中なんだけど」  どうやら、アップデートが終わっていないらしい。べつに、完了するまで監視する必要はない。 「そんなの、