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拷問投票

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SF長編小説。二十年後の日本、凶悪犯への厳罰化を求める世論に流され、一部の犯罪者を合法的に拷問することができる拷問投票制度が存在していた。残虐なレイプ殺人事件で娘を失った高橋実は…
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2023年10月の記事一覧

◯拷問投票62【第二章 〜重罪と極刑〜】

 好奇心をついに抑えられなくなり、佐藤は、右手のほうへ目を向けた。 そこには、グレーのシ…

山本清流
9か月前

◯拷問投票63【第二章 〜重罪と極刑〜】

 続いて、田中裁判長は、被告人を証言台の前に立たせたまま、左のほうへ目を転じた。裁判長の…

山本清流
9か月前
4

◯拷問投票64【第二章 〜重罪と極刑〜】

       ※ 「そんな言い分が通用するわけがないですよ」  谷川は、笑い飛ばすように言…

山本清流
9か月前
1

◯拷問投票65【第二章 〜重罪と極刑〜】

「まあ、こんなのは気にしないでください」  長瀬は、高橋実を元気づけるように声をかけた。 …

山本清流
9か月前

◯拷問投票66【第二章 〜重罪と極刑〜】

 さまざまなSNSを駆使している中、活動の拠点としてのホームページを開設する計画も進んで…

山本清流
9か月前
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◯拷問投票67【第二章 〜重罪と極刑〜】

 ここで重要なのは、当然のように、いかにして反対勢力を懐柔すればいいのか、というポイント…

山本清流
9か月前

◯拷問投票68【第二章 〜重罪と極刑〜】

   ※  連日に渡って裁判所での審理が続いた。全体の流れとしては、三つの事件について時系列順に追っていくようである。予定では二か月間――六月までだ。五月半ばの現在は、高橋美紀が殺害された第一の事件についての証拠調べが続いていた。  佐藤龍は、いつもどおり隅っこの席に座り、目の前で口を動かしつづける検察官を見つめている。  ふたりの検察官のうち、若手の女性しか口を開かない。女性が話したほうが印象がよくなるのでは、という戦略だろうか。ゆっくりと優しい語り方で、頭の中で整理せず

◯拷問投票69【第二章 〜重罪と極刑〜】

 第一段階の暴行行為に続いて、被告人所有のワンボックスカーに被害女性を連行したあと、第二…

山本清流
9か月前

◯拷問投票70【第二章 〜重罪と極刑〜】

 ワンボックスカーが進んでいるときは、被告人は小型ハンマーを手にしたまま、被害女性を監視…

山本清流
9か月前
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◯拷問投票71【第二章 〜重罪と極刑〜】

 法廷においては大型ディスプレイで流すことは裁判長の判断で控えることになり、傍聴席からは…

山本清流
8か月前
1

◯拷問投票72【第二章 〜重罪と極刑〜】

 わずかな休憩を挟んでから三十分後に審理が再開された。高橋実はもう傍聴席に現れなかった。…

山本清流
8か月前

◯拷問投票73【第二章 〜重罪と極刑〜】

 被告人側の主張によれば、被告人は、幼少期の家庭環境の劣悪さによってトラウマを抱えている…

山本清流
8か月前

◯拷問投票74【第二章 〜重罪と極刑〜】

「M2ロボットの歩行についてですが、近年は、歩行制御の技術はかなり進歩しているという話が…

山本清流
8か月前
1

◯拷問投票75【第二章 〜重罪と極刑〜】

「声を上げるようなことはしませんか?」 「初期設定では、声を上げることはないと思いますが、さきほども言ったように学習によって……」 「ああ、けっこうです。ありがとうございます」  検察官の女性は、繰り返しを避けるためか、エンジニアの発言を遮った。  日本において運用されている人型ロボットの九割はM2ロボットの類型種であり、また残りの一割もM2ロボットと性能の違いはほとんどない。  M2ロボットを基準に考えるならば、被告人側の主張はどうだろう。そもそも人間か人型ロボットかについ