短編小説:きみの無くしたもの
島で生まれたのにボクだけが泳げないから、波止場で遊ぶのはいつも嫌いだった。みんなが海に飛び込んでいるのに、ボクだけ飛び込めない。
「ふーん、だったら違う遊びをしようぜ!」
そうボクに声をかけてくれたのがケンちゃんだった。クラスの違ったケンちゃんとそのとき話したのが初めてだったけど、それからボクたちは一緒に遊ぶことが増えた。ケンちゃんは泳げるのに飛び込まず、ボクと一緒に絵を描いたり、砂浜できれいなガラス玉を集めたりしていた。波止場に行っても、ケンちゃんと一緒なら泳がなくても楽し