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ゲーム自伝5:MMORPGの原点、メイプルストーリー

以前書いたゲーム自伝4で、掲示板の仲間から教えてもらった事の一つにメイプルストーリーという名前のゲームがある。それが僕の初めてのMMORPGだった。

MMOとは、マッシブリーマルチプレイヤーオンラインの略語で、リアルタイムで大人数の人たちと遊べるのが特徴だ。当時友達と同じ部屋に集まって4人でしかゲームを遊んだことのない僕にとってとても新鮮な世界だった。

同じ掲示板の仲間たちと一緒に、同じ画面で、同じ敵を、チャットしながら倒していくのがめちゃくちゃ楽しかった。リアルタイムで離れた友達と遊ぶ楽しさを、メイプルストーリーから学ばせてもらった。
とは言っても、掲示板の仲間と遊ぶことは一ヵ月くらいで終わり、僕は初めてしばらくの間、一人で遊ぶことが多かった。

メイプルストーリーの「さくら鯖」に「プリースト」と呼ばれる職業で遊んでいた。「プリースト」はロールで言うところの「ヒーラー」にあたり、おそらくこの頃から「味方を癒したりサポートするのが好き」というのがどこか自分の中で定着していたのかもしれない。
何故「さくら鯖」を選んだのかは、その当時メイプルストーリーの攻略サイトやブログを運営していた「財前ゴウ」という有名な方がいたのが「さくら鯖」を選んだ理由だったと記憶している。ゲーム内で会ったことは一度もなかったが、ゴウさんが書くブログだったり八十八茶の冒険物語がとても面白く、いちファンとして楽しませてもらった。

当時、僕は女の子のキャラクターを使って、いわゆる「ネカマ」として遊んでいた。この手のMMOは女の子キャラの方が、オシャレに着飾ることが出来る、という理由で女の子のキャラクターを選んだのだが、なぜ「ネカマ」として遊んでいたのかは今でも不思議でしょうがない。高校生でMMOの初心者が、女の子キャラを使って男を騙してみようとか出会いを探そうとか考えもしなかったし、女の子になりたい願望もなかった。なにより、長い間一緒に遊んでいた友達は僕より5つ年上の女性だった。

きっかけは、ルディクエという6人でダンジョンに挑むコンテンツでよく一緒に遊んだのがきっかけ、その子の見た目はニューゼン髪の斬り賊。その後も同じギルドに加えてもらって、僕以外はほぼ社会人という大人なギルドでお世話になっていた。楽しかったのは土曜日の夜に開催されていたギルドクエスト。ギルドのメンバーでダンジョンに入り、謎解きや敵を倒しながら奥まで進みラスボス(確かネクロマンサー)を討伐する。オンラインゲームをやるような高性能のPCは持っていなかったので、レイドボスのジャクムやホーンテイルにはスペックが足りず行けなかった分、ギルドクエストはレイドボスの簡易版みたいなものだったので、毎週土曜日が来るのが楽しみで仕方がなかった。ネカマをしている罪悪感もなかった。高校生のJKだからと言って、女の子扱いしてくるような人はギルドメンバーの中には誰もいなかったというのもある。ゲームをやるだけなら性別を気にすることがなかった。・・・オフ会と呼ばれる話題が出るまでは。


オフ会とは、チャットや掲示板などネットワークを通じて知り合ったメンバーが、直接会って親睦を深める会合のことだ。オンラインゲームをプレイしたことがある人なら一度は聞いたこともあるワードだと思うし、リアルで会うことはリスクもあるし、マイナスな面もあるが、ゲームを通じて仲良くなり、結婚するまでの仲になるケースももちろんあるのだが、僕は当時「ネカマ」としてメイプルストーリーを遊んでいた。みんなは女子高生だと信じているが、実際は男子高生だ。オフ会なんてしたら偽りが露呈してしまう。

僕はその時初めて自分のしていることに負い目を感じてしまった。嘘をついたら嘘を隠す為に嘘を重ねる。「ネカマ」という嘘が自分を苦しめることになってしまった。・・・結局、オフ会が開催されることはなかったが、嘘をついて人を騙しているという罪悪感がどんどん増してきて、3年ほど続けていた「メイプルストーリー」を僕はやめた。交流のあったメンバーに自分のついた嘘を告げることなく、突然キャラクターを消してしまった。残された人たちがどう感じるのかを、あの頃の僕は考えることが出来なかった。自分のことしか考えてなかった。もしかしたら傷つけてしまったのかもしれないが、その後交流がなくなってしまったのでそれを知ることもできない。僕にとっての初めてのMMOの終わり方は、とてもほろ苦いものとなった。


今もMMOを遊んでいるが、僕はもう自分を偽ることはやめている。FF14にいるフレンドには、全員ではないが僕をゲイだと知っている人もいる。自分から言うつもりはないが、隠すつもりもない。そのほうが純粋に楽しめると教えてくれたのは、メイプルストーリーだったのかもしれない。

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