小説:明日の僕らに喜びの花を贈る 前編
――その小屋には先客がいた――
雨のにおいが近づいているのはわかっていたが、まさか滝のような大雨になるとは思っていなかった僕は、この辺りに小屋があることを思い出し、雨宿りをするため記憶を頼りに森を駆けてようやく小屋までたどり着くことができた。雨でずぶ濡れになった身体を乾かすため、服を乱暴に脱ぎ捨てた後シバリングをし、水気を辺りにまき散らす。ふぅと一息ついた後周囲を見渡した。小屋のなかには家具が一式そろっていたが、時が止まったかのようにホコリが積もり乱雑に置かれていた。