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セルフラブに学ぶ、幸せのヒント

いつも愛読ありがとうございます。今回は、読者の方からお題をいただきました。テーマは、セルフラブ(self-love)です。

皆さんは、セルフラブって聞いたことありますか? 僕は昨日このお題をいただくまで、セルフラブという言葉を知りませんでした。さっそく調べてみたところ、最新の心理学研究やスピリチュアルなムーブメントとして今注目を集めている言葉のようです。一言でいえば、「もっと自分を大事にしようよ」ということでしょうか。家族や友人を労わるのと同じように、ちゃんと自分も労わってあげようよ、というのがメッセージのようです。そのためのスキルや方法論が確立されていて、それを教えてくれる専門の講師の方もいらっしゃいます。

セルフラブという言葉を聞いた時、「あ、僕が持っていた感覚を説明してくれる言葉だ」という直感がありました。頭の中にあるモヤっとした感覚が、新しい言葉を知ることでハッキリとした輪郭を持ち始める。そんな経験ありますよね。今の世の中を生きるために必要な考え方だ。そう思いました。

嫁が不機嫌になった

僕と嫁は、6年前にライフスタイル最優先でハワイへ移住しました。家も買ったし、子供もできた。会社もうまくいっている。傍目には幸せな生活を送っているはずなのに、いつからか嫁が不機嫌な日が多くなりました。

あまり言うとのろけ話になってしまうが、ひかえめに言っても僕の嫁は超優秀です。先ずMBAを持っていて僕よりも高学歴です。出会った頃は、嫁の方が稼いでいたし貯金もあった。当時は大手生命保険会社でマーケティングの仕事をしながら、アート系の学校でファッションを学んでいました。お金をかけずに流行りのファッションを着こなすのも得意でした。趣味は中国琴(グーチェン)の演奏です。今は子育ての傍ら、テキサスとベトナムで民泊ビジネスを経営しています。凄くないですか?

そんな嫁が、すごく不機嫌なんです。最初は「仕事のストレスかな?」と思っていました。嫁は仕事熱心で、完璧主義者です。昔も今も、嫁が仕事に費やすエネルギーは凄まじい。当然ストレスもあるでしょう。

でも仕事が忙しいのは今に始まったことではない。出会った頃も仕事はバリバリやっていたけれど、今よりよく笑っていました。何でだろうと考えて、子供が生まれたから変わったかもしれない、と思いあたりました。

息子が生まれたのは3年前です。思い起こせば、嫁の様子が変わったのは妊娠してからでした。彼女の優先順位が、「自分」から「子供」に完全にシフトしたのがわかりました。母親としては当然のことなのかもしれませんが、家庭内の全てが「子供」を中心に回り始めました。オシャレな服は、おなかが大きくなるにつれてダボダボのパジャマのような服になり、いつの間にか趣味の中国琴も売ってしまった。この傾向は、出産してからさらに加速していきました。僕は、彼女の入れ込みかたに危うさを感じるようになっていました。

夫婦の関係が最優先

僕の両親は、子供が自立するのを待って離婚しました。それまではいつも喧嘩していた。喧嘩の理由は、子育てについての不満が多かった。僕たち兄弟は、両親が自分たちのことで喧嘩するのが嫌で嫌でたまらなかった。

子育ての考え方が合わずに衝突することが多くなっていた僕と嫁の関係も、このままいくとヤバいなと思うようになっていました。息子が生まれて3か月目くらいの時に、嫁と話し合いました。

幸せな両親無くして、子供の幸せはあり得ない

僕が嫁に伝えたかったのは、これです。わが家の軸は、あくまでも僕と嫁の関係です。子供が関係の軸になってはいけない。先ずは両親ありき。この優先順序を間違えてはいけない。そう思いました。

僕は嫁に、自分を犠牲にしすぎないよう、もっと自分を大切にするようお願いしました。僕はコミュ障だから、一回でうまく伝えることができなくて、何度も喧嘩になりました。でも3年かけて同じメッセージを送り続けました。

最近、ようやく嫁に少し変化がありました。先ず買い戻した中華琴を、ケースから出していつでも弾けるようにしました。次にジムのクラスに通い始め、そして油絵のクラスに行き始めました。そんな時は、よろこんで息子の面倒を見るようにしています。

エゴが蔓延する時代を生きるヒント

SNSが広まって、自分を愛しすぎる人と、自分を愛せない人に二極化しているような気がします。フェイスブックも、インスタグラムも、ツイッターも、承認欲求というエゴを満たすサービスという意味では同じサービスです。これらを駆使してエゴを肥大化させる人がいる一方で、他人の眩しいばかりの生活を自分と比較して自己嫌悪してしまう人も大勢います。

インスタ映えのためにお金を使いすぎて、借金を抱えてしまった女の子の話がありました。SNSでエゴを肥大化させた人は、他人の目や評価を気にするあまり自分らしさを失います。インスタの世界でのフィクションを作るために、自分を失ってしまうのは悲しすぎます。

一方で、そんな他人のフィクションと自分の現実を比較して、自分の存在価値を見出せなくなってしまうのも、悲しいですよね。

セルフラブは、この両方に回答を与えられるのかなと思います。セルフラブは、自分を世界の中心に据えて世界を再構築することを教えてくれます。大事なのは、先ず自分です。自分が何者で、何を欲しているのか。まずはそれを自覚し、そして行動します。自分というブレない軸を持つことで、自分の立ち位置と目指すべき方向がわかります。他人の評価や意見は、気にならなくなります。

自己中とはちょっと違う

セルフラブと聞くと、自分さえ良ければいいという教えかなと思う人もいると思います。ちょっと違います。セルフラブは、他人にやさしくするためには、先ず自分が幸せになる必要があることを教えてくれます。

何でもそうですが、自分が不安定な状態のときには、他の人を助けてあげる余力はありません。不機嫌な人が人を笑わすことはできないし、貧乏な人が貧乏な人を救うことはできないのです。

セルフラブは、先ずは自分の幸せを考えましょうよ、と教えてくれます。自分が笑顔になれば、他の人にも良い影響を与えます。コンビニの店員さんの笑顔が素敵で、その日一日自分も笑顔になったなんてことありませんか? セルフラブを持っている人は、周りの人にも良い影響を与えます。

自己中な人は、自分のために他人を犠牲にします。セルフラブな人は、自分の内面を見つめて幸せの種を見つけます。だから自己中な人とは、幸せのベクトルがちょっと違うんですね。

セルフラブは、ビジネスでも有効

ビジネスの世界でも、セルフラブは有効です。アメリカのビジネスマンの間では、「マインドフルネス」が流行しています。瞑想とセットで語られることも多く、瞑想の有料アプリが20万回ほどダウンロードされるくらい、大人気です。マインドフルネスはセルフラブの第一歩とされていて、非常に近いコンセプトです。

ビジネスマンは毎日忙しくタスクをこなしているので、次から次へと思考が目まぐるしく変化して定まりません。瞑想の時間を10分とると、脳がリセットされて思考が整理されます。優秀なビジネスパーソンの毎日のルーティンを調べると、瞑想を取り入れている人が多いことがわかります。個人として高いパフォーマンスを発揮する人は、セルフラブに近いことを取り入れているのだと思います。

個人のレベルでももちろん有効ですが、企業としても有効な考え方であることがわかっています。会社がミッションを掲げたり、企業文化を育むのは、本質的にセルフラブを企業の単位で行っているのと同じだと思います。企業が自社の存在意義を再確認して、目指すべき方向性を決めているのです。

組織行動学の専門家であるダイアナ ドスィックさんは、なぜ自社の社員を、顧客と同じくらい大切に扱わなければいけないのか」というテーマについて、TED Talkで話しています。

企業は、顧客満足の向上のために業界全体で年間1兆円以上の投資をしますが、従業員の満足度の向上にはその1000分の1も費用をかけていないそうです。毎日顧客と接しているのは、従業員です。従業員の満足度が低いと、顧客へのサービスの質が下がるのは必然です。この頃はビジネスの世界でも、従業員満足(Employee Satisfaction/ES)という言葉が注目されています。

グーグルのような先進企業では、従業員の満足度を高めるための投資を惜しみません。グーグルでは、自社の女性社員の不満や悩みの種を分析して、育休を12ヶ月から18ヶ月に延長しました。この結果、出産後の女性従業員の定着率を50%上げることに成功しています。これは決して会社の利益を度外視した施策ではありません。従業員の満足度を上げることが、会社の利益になることを理解しているのです。

今日本で話題の働き方改革も、従業員の満足度を上げることによって企業の生産性をあげることが本来の目的です。残念なのは、本質を置き去りにして形だけ導入しようとしている企業が多いことです。国主導で企業が強制的に導入させられているので、逆に現場にストレスをかけている例もあるようですね。大切なのは、社員の満足度を上げることです。

今を生き抜くヒント

嫁はジムに行くようになって、ちょっとスリムになりました。コミュ障の僕は褒めるのが苦手ですが、ビミョーな笑顔でも褒めてあげると喜びます。家の壁には、嫁の油絵の作品が増えてきました。中華琴は相変わらず居間に放置されていますが、いつかまた弾いてくれるでしょう。

嫁との一連のコミュニケーションは、今考えるとセルフラブのお話だったんだなぁ、と思います。子供の幸せを考えるなら、先ずは自分が幸せになって見せなければいけません。ギスギスした両親が子供のために何をしても、子供は不安になるだけでしょう。

セルフラブは、情報化で雑音の増えた現代を生き抜くヒントを与えてくれます。自分の幸せの軸は、自分の中にしかありません。自分がどんな人間で、何を求めているのか。ちょっと立ち止まって考えてみる余裕が、必要なんだと思います。自分の幸せの軸が見つかれば、他人からの目や評価にブレない芯の強さが得られるはずです。あなたも自分のセルフラブを考えてみては、どうでしょうか?


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