素粒社

2020年に創業した出版社です|連載、ためし読み、書評等|【新刊】川井俊夫『金は払う、…

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2020年に創業した出版社です|連載、ためし読み、書評等|【新刊】川井俊夫『金は払う、冒険は愉快だ』、古賀及子『ちょっと踊ったりすぐにかけだす 』、高遠弘美編『欧米の隅々 市河晴子紀行文集』、小津夜景『いつかたこぶねになる日』など https://soryusha.co.jp/

マガジン

  • 【ためし読み】川井俊夫著『金は払う、冒険は愉快だ』

    関西某所のとある古道具店。その店主は、かつてブログが登場する以前のインターネットで多くの読者を魅了した伝説のテキストサイトの著者だった――中卒、アングラ水商売、アルコール依存症、ホームレスなど破格の経歴をもつ道具屋店主による、金と汗と汚物と愛にまみれた“冒険”の数々を唯一無二の文体で綴った痛快私小説。

  • 【書評シリーズ】「『欧米の隅々 市河晴子紀行文集』を旅する」

    素粒社刊『欧米の隅々 市河晴子紀行文集』(高遠弘美編)について、俳人の小津夜景さん、翻訳家の斎藤真理子さん、書評家の渡辺祐真さんに書評をご執筆いただきました。

  • 【ためし読み】上田信治[著]『成分表』

    有名漫画『あたしンち』共作者にして俳人である上田信治さんによる初のエッセイ本『成分表』のためし読みです。

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    『金は払う、冒険は愉快だ』川井俊夫【著】(サイン本あり)

    文芸|小説|私小説「俺はこの町で一番頭が悪く、なんのコネやツテもなく、やる気も金もないクソみたいな道具屋だ」関西某所のとある古道具店。その店主は、かつてブログが登場する以前のインターネットで多くの読者を魅了した伝説のテキストサイトの著者だった――中卒、アングラ商売、アルコール依存症、ホームレスなど破格の経歴をもつ道具屋店主による、金と汗と汚物と愛にまみれた“冒険”の数々を、唯一無二の文体でつづった痛快私小説。「俺だけのルールがある。俺専用のやつがな。誰だってそうだろ? 俺たちは世界のすべてを全員で共有してるわけじゃない。たまに交錯したり、部分的に共有してるだけだ。だから自分の世界を生きるのには、自分だけのやり方がいる。他のやつのやり方じゃダメなんだ」【推薦】古物のみならず人間の本質を見抜く確かな目。群れない。他人の評価に無関心。クソをクソのまま描く作者の口の悪さと無類の筆力に圧倒された。――こだまさん(作家)溢れ出す悪態、自分流儀の厳守、ときに逡巡なき暴力、そして猫。ハードボイルドさながら、古道具屋の日々をタイトなビートで描く、こんなクールな「業務日誌」が、かつてあっただろうか。――books 電線の鳥 原山聡矢さん世間、社会そして自分自身に対して悪態をつきまくりですが、その底にある優しさや愛、その在り方が滲んでいて読みながら愛おしくなってくるから不思議です。この人に後始末をしてもらえるなら成仏できそう。――湘南 蔦屋書店 八木寧子さん三途の川を渡れない品々を汗みずくでかき集める因果な稼業の秘密を川井さんは見事に物語化してしまった。漂白の果ては乱暴で温かい世界だ。――平井の本棚 津守恵子さん川井さんの言葉ざまが好きだ。ロクでもないし、本物だ。というか、マジで面白い。噓じゃない。残念ながら、最高だ。川井俊夫を読まないという選択肢があるひとが羨ましい。ぼくにはなかった。ありえなかった。――紀伊國屋書店 国分寺店 猪股康太さんこの「途方もなくデカい肥溜め」という世界の中で、何かを、誰かを、見つけたいと思っているあなたへ。――BOOKS青いカバ 小国貴司さん読み始めは荒々しい言葉に少し身構え、自分には縁のない世界だな…なんてことを思っていました。読み進めていくうちに何だか憎めない、さらには愛おしさすら感じてしまう不思議な魅力がありました。破天荒な人生を歩んできた川井さんにしか書けない唯一無二の作品。すでに次作が待ち遠しくすらあります。――紀伊國屋書店 吉祥寺東急店 徳光のぞみさん【著者紹介】川井 俊夫(かわい としお)1976年横浜生まれ。中卒、水商売、ヒモ、放浪、アルコール依存症、ホームレス、会社員、結婚を経て、現在は関西某所で古道具店を経営。1990年代後半より2000年代にかけて「川井俊夫」の筆名で「スヰス」などのテキストサイトを運営。電子書籍に、テキストサイトの文章をまとめた『羽虫』(2014年、elegirl publishing)がある。【仕様】四六判変型208ページ上製カバー装ISBN978-4-910413-11-2装丁:川名潤写真:佐伯慎亮
    ¥1,980
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    『ちょっと踊ったりすぐにかけだす』古賀及子【著】

    文芸|日記|エッセイ【内容紹介】ウェブメディア「デイリーポータルZ」編集部員・ライターの著者による大人気ウェブ日記を書籍化。書き下ろしを含む2018年から2022年までの日記より、103日分をあつめた傑作選がついに刊行!母・息子・娘、3人暮らしの愉快で多感な〈日記エッセイ〉生活の、愛おしい機微【推薦文】実験室みたいな、RPGみたいな、部室みたいな親子の時間。あー、今からでも古賀さん家の子に生まれたい!――岸本佐知子【著者紹介】古賀 及子(こが ちかこ)1979年東京生まれ、神奈川、埼玉育ち、東京在住。ライター、編集者。2003年ウェブメディア「デイリーポータルZ」にライターとして参加、2005年同編集部に所属。「納豆を1万回混ぜる」「決めようぜ最高のプログラム言語を綱引きで」「アイドルの話はプロレスの話に翻訳できるか ~文化にも通訳が必要だ~」などを執筆。2018年10月はてなブログで日記の毎日更新を開始し、2019年からは同人誌としての頒布も行う。日記は現在もnoteに不定期で更新している。【仕様】B6判320ページ並製カバー装ISBN978-4-910413-10-5ブックデザイン:鈴木千佳子
    ¥1,870
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    • 【ためし読み】川井俊夫著『金は払う、冒険は愉快だ』

    • 【書評シリーズ】「『欧米の隅々 市河晴子紀行文集』を旅する」

    • 【ためし読み】上田信治[著]『成分表』

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    『金は払う、冒険は愉快だ』川井俊夫【著】(サイン本あり)

    文芸|小説|私小説「俺はこの町で一番頭が悪く、なんのコネやツテもなく、やる気も金もないクソみたいな道具屋だ」関西某所のとある古道具店。その店主は、かつてブログが登場する以前のインターネットで多くの読者を魅了した伝説のテキストサイトの著者だった――中卒、アングラ商売、アルコール依存症、ホームレスなど破格の経歴をもつ道具屋店主による、金と汗と汚物と愛にまみれた“冒険”の数々を、唯一無二の文体でつづった痛快私小説。「俺だけのルールがある。俺専用のやつがな。誰だってそうだろ? 俺たちは世界のすべてを全員で共有してるわけじゃない。たまに交錯したり、部分的に共有してるだけだ。だから自分の世界を生きるのには、自分だけのやり方がいる。他のやつのやり方じゃダメなんだ」【推薦】古物のみならず人間の本質を見抜く確かな目。群れない。他人の評価に無関心。クソをクソのまま描く作者の口の悪さと無類の筆力に圧倒された。――こだまさん(作家)溢れ出す悪態、自分流儀の厳守、ときに逡巡なき暴力、そして猫。ハードボイルドさながら、古道具屋の日々をタイトなビートで描く、こんなクールな「業務日誌」が、かつてあっただろうか。――books 電線の鳥 原山聡矢さん世間、社会そして自分自身に対して悪態をつきまくりですが、その底にある優しさや愛、その在り方が滲んでいて読みながら愛おしくなってくるから不思議です。この人に後始末をしてもらえるなら成仏できそう。――湘南 蔦屋書店 八木寧子さん三途の川を渡れない品々を汗みずくでかき集める因果な稼業の秘密を川井さんは見事に物語化してしまった。漂白の果ては乱暴で温かい世界だ。――平井の本棚 津守恵子さん川井さんの言葉ざまが好きだ。ロクでもないし、本物だ。というか、マジで面白い。噓じゃない。残念ながら、最高だ。川井俊夫を読まないという選択肢があるひとが羨ましい。ぼくにはなかった。ありえなかった。――紀伊國屋書店 国分寺店 猪股康太さんこの「途方もなくデカい肥溜め」という世界の中で、何かを、誰かを、見つけたいと思っているあなたへ。――BOOKS青いカバ 小国貴司さん読み始めは荒々しい言葉に少し身構え、自分には縁のない世界だな…なんてことを思っていました。読み進めていくうちに何だか憎めない、さらには愛おしさすら感じてしまう不思議な魅力がありました。破天荒な人生を歩んできた川井さんにしか書けない唯一無二の作品。すでに次作が待ち遠しくすらあります。――紀伊國屋書店 吉祥寺東急店 徳光のぞみさん【著者紹介】川井 俊夫(かわい としお)1976年横浜生まれ。中卒、水商売、ヒモ、放浪、アルコール依存症、ホームレス、会社員、結婚を経て、現在は関西某所で古道具店を経営。1990年代後半より2000年代にかけて「川井俊夫」の筆名で「スヰス」などのテキストサイトを運営。電子書籍に、テキストサイトの文章をまとめた『羽虫』(2014年、elegirl publishing)がある。【仕様】四六判変型208ページ上製カバー装ISBN978-4-910413-11-2装丁:川名潤写真:佐伯慎亮
    ¥1,980
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    『ちょっと踊ったりすぐにかけだす』古賀及子【著】

    文芸|日記|エッセイ【内容紹介】ウェブメディア「デイリーポータルZ」編集部員・ライターの著者による大人気ウェブ日記を書籍化。書き下ろしを含む2018年から2022年までの日記より、103日分をあつめた傑作選がついに刊行!母・息子・娘、3人暮らしの愉快で多感な〈日記エッセイ〉生活の、愛おしい機微【推薦文】実験室みたいな、RPGみたいな、部室みたいな親子の時間。あー、今からでも古賀さん家の子に生まれたい!――岸本佐知子【著者紹介】古賀 及子(こが ちかこ)1979年東京生まれ、神奈川、埼玉育ち、東京在住。ライター、編集者。2003年ウェブメディア「デイリーポータルZ」にライターとして参加、2005年同編集部に所属。「納豆を1万回混ぜる」「決めようぜ最高のプログラム言語を綱引きで」「アイドルの話はプロレスの話に翻訳できるか ~文化にも通訳が必要だ~」などを執筆。2018年10月はてなブログで日記の毎日更新を開始し、2019年からは同人誌としての頒布も行う。日記は現在もnoteに不定期で更新している。【仕様】B6判320ページ並製カバー装ISBN978-4-910413-10-5ブックデザイン:鈴木千佳子
    ¥1,870
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【書評シリーズ】「『欧米の隅々 市河晴子紀行文集』を旅する」③/渡辺祐真

文人学者・高遠弘美に導かれ、名文に出会う はじめに  戦後を代表する文芸評論家・中村眞一郎による高遠弘美氏に対する賛辞である。この度そんな美の探究者の手によって発掘された最高の秘宝が『欧米の隅々 市河晴子紀行文集』である。  本稿では、本書について、その編者である高遠氏から考えることを主眼としている。訳者としても編者としても黒子に徹される高遠氏には、いささか申し訳ないと思いながら、さりとて私には高遠氏を抜きにして本書を考えることは、小林秀雄無きランボオ、畠中尚志無きスピノ

    • ただあなただから愛したい、そんな日記 ~古賀及子×花田菜々子 『ちょっと踊ったりすぐにかけだす』 刊行記念トークイベント@蟹ブックス ~【ダイジェスト】

      この日記は短歌や詩に近いかもしれない 花田 古賀さんの『ちょっと踊ったりすぐにかけだす』を読むと、やっぱり「無さの美しさ」がいいですよね。何も起こらない。  遠くから見ると、ほのぼの平和で楽しいおうちって見えるんですけど、美学というか、美しさがあって。それがなんなのかっていうと、やっぱり観察眼によるもので。輝く一文に魅力がある日記です。 古賀 ありがとうございます。うれしいな。とくに意識せず、日記は日記だと思って書いてたんですが、こうして出版することになって、作品としての

      • 【書評シリーズ】「『欧米の隅々 市河晴子紀行文集』を旅する」②/斎藤真理子

        絢爛たる細部、あるいはチョコチップクッキー  読みはじめて2行めで、門司港で積荷をする起重機の様子が「ジラフが大きな稲荷寿司を啣え込むよう」と描写されていて、いきなり痺れる。8か月にもわたる長旅の、まだ、たった2行めでしかないのに。  でも、晴子さんの旅行記を読むには、こんなところで驚いていては身がもたないのだった。この描写力と表現力で、歴史、風土、文化、人情、国際情勢までが縦横無尽に書きつくされて、息つく間もなく痺れっぱなし。チョコチップクッキーなら、チョコチップの数が

        • 【ためし読み】川井俊夫著『金は払う、冒険は愉快だ』③

           宅配便屋の倉庫の仕事は日銭を稼ぐのに一番簡単な方法だ。俺のような得体の知れないおっさんでも、電話をして、倉庫へ行って、なにか書類を二枚くらい書けば、その日のうちに働ける。  ベルトコンベアに載って、荷物が次々と流れてくる。荷札を確認して、自分の担当エリアのやつを降ろし、そいつを足下に積み上げながら、隙を見てトラックの荷台に積んでいく。作業自体は単純だが、赤いビニールテープを巻いた棒切れを持って、怒鳴りながら倉庫の中をウロウロしている野郎が鬱陶しかった。 「もたもたするな!

        【書評シリーズ】「『欧米の隅々 市河晴子紀行文集』を旅する」③/渡辺祐真

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          【書評シリーズ】「『欧米の隅々 市河晴子紀行文集』を旅する」①/小津夜景

          理知と無心  すばらしい紀行文だ。著者の市河晴子は1896年、法学博士穂積陳重と渋沢栄一の長女で歌人の渋沢歌子との間に東京で生まれた。19歳で英語学者市河三喜と結婚。本書は1931年3月、日本人初の東京帝国大学英文科教授として活躍していた夫・三喜が欧米諸国の実情視察の旅に出た折、それに同行して各国のようすを夫と共著で描いた『欧米の隅々』と、1937年、日米親善の民間外交を託され単身渡米した際のできごとを綴った『欧米の旅、日本の旅』との2冊をもとに、編者・高遠弘美氏が選りすぐっ

          【書評シリーズ】「『欧米の隅々 市河晴子紀行文集』を旅する」①/小津夜景

          【ためし読み】川井俊夫著『金は払う、冒険は愉快だ』②

           店の扉を開けて、誰か入ってくる気配がした。すみませんね、ご主人……いるかな? しゃがれた爺さんの声だ。 「ハイハイ、ここにいるよ」  そう言って入り口からでも見えるように店の奥で座ったまま手を挙げる。 「ああよかった。入っていいかな。そっちかい? お願いがあるんだ。頼みごとってやつさ。聞いちゃくれないか?」  体格のいいジジイだ。少し足を引きずっているが、背筋もしゃんとしてるし、年寄りにしては身体がデカい。とっぽい格好で、麻の白っぽいスラックスにお揃いのジャケット。坊主頭に

          【ためし読み】川井俊夫著『金は払う、冒険は愉快だ』②

          【ためし読み】川井俊夫著『金は払う、冒険は愉快だ』①

           朝の7時30分に携帯電話が鳴る。番号は登録してあるやつだったから、画面には数字ではなく俺が自分で入力した名前が出る。相手は「茶道具がたくさん、早口でうるさいジジイ」だ。登録してあるということは、当然過去にこのジジイから連絡があり、依頼を受けて仕事をしたことがあるということだ。記憶を辿る必要はない。すぐに思い出した。最初の依頼は6月だ。クソ暑い中、とんでもない量の茶道具を買取るハメになった。  そのときの前置きはこんな感じだ。死んだ父親は金のかかる遊びや賭け事などもせず、真

          【ためし読み】川井俊夫著『金は払う、冒険は愉快だ』①

          【ためし読み】上田信治[著]『成分表』/③醬油

          醬油  「刺身なんて醬油の味しかしない」とか「刺身は醬油のためにある」という言い方がある。  そこには、バーバリズムというかマウンティングというか、既存の価値の引き下げによる優位性の誇示があるのだけれど、たしかに、その言葉を念頭に置いた状態で刺身を食べると、美味しさのどこまでが醬油の味か分からなくなる。  醬油というのはそれほど暴力的に美味いもので、あんなに血の味に似た調味料はない。日本人はみな醬油中毒で、キュウリの浅漬けも納豆も冷奴も、あれは醬油を啜っているのだと言われれ

          【ためし読み】上田信治[著]『成分表』/③醬油

          【ためし読み】上田信治[著]『成分表』/②定義

          定義  『幸福論』で知られるアランのプロポ(断章)は、便箋二枚に書かれた、日本語で千五百字に満たない短いコラムだ。  彼はそれを一日一つ、生涯で五千篇以上を書いた。  まったくの一発書きで、推敲どころか書きながらの訂正すらしなかったそうなので、試みに『幸福論』冒頭の一篇を、自分なりに推敲してみたら、九百字前後になった。それは、ほぼこの「成分表」の分量だ。知らずに、だいぶ影響を受けていたかもしれない。限られた紙幅で自分の考えたことだけを言い、世のできごとの観察をもって証明とす

          【ためし読み】上田信治[著]『成分表』/②定義

          【ためし読み】上田信治[著]『成分表』/①鳥たち

          鳥たち  誰もいない昼間の町で、カーブミラーの上に止まっているカラスの様子が変だと思ったのと、その下の地面に、もう一羽のカラスの死体があると気づいたのが、ほぼ同時だった。  下のカラスは、車にぶつかりでもしたか、どう見ても、分かりやすく事切れている。  上のカラスは、ただならぬ様子というのか、あわただしく脚を踏み替えながら、聞いたことのないような声で「あああああ、あああああ」と鳴いていた。  カラスは、ここで今ひどいことが起こったということを、怒り訴え続けていた。「ひでええ

          【ためし読み】上田信治[著]『成分表』/①鳥たち

          上田信治著『成分表』取扱店(2022/2/15更新)

          上田信治著『成分表』取扱店をまとめました。 弊社が出荷確認をしている店舗のみですので、在庫状況等につきましては各書店にお問い合わせください。 北海道 紀伊國屋書店 札幌本店 MARUZEN&ジュンク堂書店 札幌店 宮城 曲線 ボタン 丸善 仙台アエル店  山形 くまざわ書店 鶴岡店 くまざわ書店 山形店 福島 ジュンク堂書店 郡山店 栃木 喜久屋書店 宇都宮店 群馬 戸田書店 高崎店 未来屋書店 高崎店 埼玉 TSUTAYA レイクタウン ブック

          上田信治著『成分表』取扱店(2022/2/15更新)

          【ためし読み】小津夜景著『漢詩の手帖 いつかたこぶねになる日』/⒍旅行の約束

          2020年7月に創業したばかりの出版社、素粒社です。素粒社のはじめての本となる、小津夜景著『漢詩の手帖 いつかたこぶねになる日』が刊行されました。フランス、ニース在住の俳人・小津夜景さんがつづる漢詩のある日々の暮らしーー杜甫や李賀、白居易といった古典はもちろんのこと、新井白石のそばの詩や夏目漱石の菜の花の詩、幸徳秋水の獄中詩といった日本の漢詩人たちの作品も多めに入っていて、中国近代の詩人である王国維や徐志摩も出てきます。本記事では『漢詩の手帖 いつかたこぶねになる日』の一部を

          【ためし読み】小津夜景著『漢詩の手帖 いつかたこぶねになる日』/⒍旅行の約束

          【ためし読み】小津夜景著『漢詩の手帖 いつかたこぶねになる日』/⒌はじめに傷があった

          2020年7月に創業したばかりの出版社、素粒社です。素粒社のはじめての本となる、小津夜景著『漢詩の手帖 いつかたこぶねになる日』が刊行されました。フランス、ニース在住の俳人・小津夜景さんがつづる漢詩のある日々の暮らしーー杜甫や李賀、白居易といった古典はもちろんのこと、新井白石のそばの詩や夏目漱石の菜の花の詩、幸徳秋水の獄中詩といった日本の漢詩人たちの作品も多めに入っていて、中国近代の詩人である王国維や徐志摩も出てきます。本記事では『漢詩の手帖 いつかたこぶねになる日』の一部を

          【ためし読み】小津夜景著『漢詩の手帖 いつかたこぶねになる日』/⒌はじめに傷があった

          【ためし読み】小津夜景著『漢詩の手帖 いつかたこぶねになる日』/⒋翻訳とクラブアップル

          2020年7月に創業したばかりの出版社、素粒社です。素粒社のはじめての本となる、小津夜景著『漢詩の手帖 いつかたこぶねになる日』が刊行されました。フランス、ニース在住の俳人・小津夜景さんがつづる漢詩のある日々の暮らしーー杜甫や李賀、白居易といった古典はもちろんのこと、新井白石のそばの詩や夏目漱石の菜の花の詩、幸徳秋水の獄中詩といった日本の漢詩人たちの作品も多めに入っていて、中国近代の詩人である王国維や徐志摩も出てきます。本記事では『漢詩の手帖 いつかたこぶねになる日』の一部を

          【ためし読み】小津夜景著『漢詩の手帖 いつかたこぶねになる日』/⒋翻訳とクラブアップル

          【ためし読み】小津夜景著『漢詩の手帖 いつかたこぶねになる日』/⒊それが海であるというだけで

          2020年7月に創業したばかりの出版社、素粒社です。素粒社のはじめての本となる、小津夜景著『漢詩の手帖 いつかたこぶねになる日』が刊行されました。フランス、ニース在住の俳人・小津夜景さんがつづる漢詩のある日々の暮らしーー杜甫や李賀、白居易といった古典はもちろんのこと、新井白石のそばの詩や夏目漱石の菜の花の詩、幸徳秋水の獄中詩といった日本の漢詩人たちの作品も多めに入っていて、中国近代の詩人である王国維や徐志摩も出てきます。本記事では『漢詩の手帖 いつかたこぶねになる日』の一部を

          【ためし読み】小津夜景著『漢詩の手帖 いつかたこぶねになる日』/⒊それが海であるというだけで

          【ためし読み】小津夜景著『漢詩の手帖 いつかたこぶねになる日』/⒉いつかたこぶねになる日

          2020年7月に創業したばかりの出版社、素粒社です。素粒社のはじめての本となる、小津夜景著『漢詩の手帖 いつかたこぶねになる日』が刊行されました。フランス、ニース在住の俳人・小津夜景さんがつづる漢詩のある日々の暮らしーー杜甫や李賀、白居易といった古典はもちろんのこと、新井白石のそばの詩や夏目漱石の菜の花の詩、幸徳秋水の獄中詩といった日本の漢詩人たちの作品も多めに入っていて、中国近代の詩人である王国維や徐志摩も出てきます。本記事では『漢詩の手帖 いつかたこぶねになる日』の一部を

          【ためし読み】小津夜景著『漢詩の手帖 いつかたこぶねになる日』/⒉いつかたこぶねになる日