【SH考察:036】絵馬に願ひを!に関するアレコレ(猿田 犬彦編)
Sound Horizonの絵馬に願ひを!の、猿田 犬彦について……というか、主に猫と腎臓について、気になったことや調べたことをあれこれまとめた。
……そう、これまた小ネタ集のような記事だ。
対象
7.5th or 8.5th Story 絵馬に願ひを!Full Edition
考察
猫と腎臓病
犬彦の愛猫スズは腎臓病に苦しんでいる。
猫は腎臓病になりやすい。
猫と一緒に暮らしている人にとっては、もしかすると常識的な話も含まれるかもしれないが、そうではない人も多いと思う。
そのため、猫と腎臓病について調べたことをまとめておく。
猫の年齢と寿命
猫は人間の年齢に置き換えると、人間よりも格段に早く年を取っていることになる。
猫は最初の2年で24歳、3年目からは1年に4歳ずつ年を取っていくそうだ。
人に直せば米寿、つまり80歳ということは、犬彦の愛猫スズは猫としては16歳。百寿、つまり100歳になるのは猫としての21歳。
猫の寿命は15歳前後(人に直すと76歳前後)と言われているから、スズはこの時点でかなり長生きしている方であることがわかる。
猫の慢性腎不全
猫は腎臓病になりやすい生き物と聞く。
あくまで一説によると、猫の祖先は砂漠地帯で生きていたため、少ない水でも生き延びられるよう、腎臓が頑張って少ない水を吸収しようとし、その結果腎臓に負荷がかかりやすい構造?性質?をしているのではないか、という話がある。
人間に飼われると野生よりも危険が少なく長生きするだろうから、腎臓への負荷がより長期間にもなるのだろうというのは、なんとなく素人でも想像はできる。
以下は腎臓病の度合を確認するのに役立つ指標だ。
いずれも歌詞中に登場する。
《血中尿素窒素濃度》
慢性腎不全の診断に使われる指標の一つ。
尿素窒素はタンパク質が利用された後にできる老廃物。
本来は腎臓でろ過され尿中に排泄されるが、腎機能が低下するとろ過しきれずに血液中に溜まるため、血液中の尿素窒素の値が高くなる。
そのため数値が高いほど良くないと判断できる。
《血中クレアチニン濃度》
こちらも慢性腎不全の診断に使われる指標の一つ。
クレアチニンは筋肉に含まれているタンパク質の老廃物。
本来は尿素窒素と同様に腎臓でろ過され尿中に排泄されるが、腎機能が低下するとろ過しきれずに血液中に留まるため、血液中のクレアチニンの値が高くなる。
そのため、やはり数値が高いほど良くないと判断できる。
マクロファージ活性化蛋白質
マクロファージとは白血球の一種で、免疫細胞。
体内に病原体が侵入した際にまず反応し、その病原体を食べて死滅させる役割を担う。
そして、AIMとはこのマクロファージを死にくくするタンパク質。
東京大学の研究で、このAIMを活用することで猫の腎臓をケアし寿命を延ばせるのではないか、というものがあるそうだ。
《抗体免疫グロブリン》
免疫グロブリンは、血液や体液中に存在しており、免疫に関わるタンパク質の総称。病気にかかると増減する。
IgG、IgA、IgM、IgD、IgEの5種類があり、そのうち歌詞中では「IgM」と言っているはず。(IgMかigAか怪しいが、意味合い的にIgMのはず)
前述のAIMは普段はIgMとくっついているが、老廃物が溜まるとIgMから離れて、AIMが自ら老廃物にくっつき、マクロファージに「これを食べてー」と知らせるのだ。
しかし、猫は先天的にAIMがIgMから離れにくいため、老廃物が処理されにくい。
「稼働過度なIgM」というのは、AIMを手放しにくいという意味かな?
※素人の表現につきご容赦ください
ちなみに、いずれも人間にも言える話で、人間も腎臓を悪くすると上記指標が悪くなる。定期的に健康診断を受けよう!
猫の寿命を延ばす腎臓病研究
余談だが、上記で引用した記事にも登場する宮崎 徹氏は、東京大学で人の腎臓病に関する研究をしていた。その過程で猫が腎臓病になりやすいことを聞き、猫の腎臓病治療方法を研究し、その成果を人に応用することを思いつく。
だが、研究中にコロナ禍に入り、活動が厳しくなった企業から経済的援助が打ち切られ、研究が止まってしまう。
それがニュースで報じられ瞬く間に寄付が集まる。
すると、大学では素早く創薬につなげることは難しいからと、宮崎氏は退職して研究機関を立ち上げ、今はそこで研究を進めているそうだ。
猫と一緒に暮らす人にとっては、きっと犬彦同様、その猫は家族同然だろう。
そして、愛する家族が病に苦しむ姿は誰だって見たくはないものだろう。
しかし現状、猫の腎臓病は極めて高確率で起こる事象。この研究が進んで、大切な家族とより長く過ごせる未来ができると良いなと思う。
2つの腎臓を1つにすると?
腎臓は体の中に2つある。これは猫も人間も同じ。
もし片方を失ったとしても、1つでも生きていくことはできる。
例えば、八島 知美役の歌手ピコさんは、腎不全だったが、お母様から移植を受けたそうだ。
腎臓移植のドナーとなった場合、当然2つあるうちの片方をレシピエント(移植される側)にあげるため、ドナーの腎臓は1つだけになる。
ただ、残ったその1つが1つだけでも問題ないよう、時間をかけて血流を増やしたり肥大化し、最終的には2つ揃っていた時と比べて70~75%くらいの機能に落ち着くそうだ。
この程度であれば、日常生活は問題ないそうだ。
そういう意味で、2つある腎臓の片方を失っても何とかなる、というのは誤りとは言えない。
が、そもそも臓器売買は法律で禁止されているので、スワタケのいうこれはアカン。
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他にもSound Horizonの楽曲考察記事を書いています。
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更新履歴
2023/07/02
初稿
2024/04/24
一部歌詞引用について「※ルビは書き起こしのため誤差がある可能性あり」の注釈追記
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