見出し画像

【SH考察:030】久延鳶彦の記憶を追う(前編:物の名前の語源・由来)

Sound Horizonの『絵馬に願ひを!』の登場人物、ジャーナリストの久延くえ 鳶彦とびひこ。彼が興味を持ったものを追いかけることで、彼への理解を深めようと思う。
前後編で、今回は前編。彼が雑学として得た名前の語源・由来を調べることで、彼が面白いと感じた雑学を共有してみようと思う。
なお前後編としているが、どちらも単独で読める内容にしているので、どちらから読んでも問題ない。


対象

  • 7.5th or 8.5th Story 絵馬に願ひを!より『あるジャーナリストの記憶』

物の語源・由来・逸話

クッキーとビスケットの違い

日本においては、ビスケットの中にクッキーが内包されている。ビスケットの中の一種がクッキーなのだ。

 ビスケット
小麦粉や糖類を使って作ったサクサクしたお菓子全般のことだ。

小麦粉、糖類、 食用油脂及び食塩を原料とし、必要により澱粉、 乳製品、卵製品、膨張剤等の原材料を配合し、又は 添加したものを混合機、成型機及びビスケットオ ーブンを使用して製造した食品。

ビスケット類の表示に関する公正競争規約及び同施行規則
一般社団法人 全国ビスケット協会

biscuitビスケットの語源はフランス語のbiscuitビスキュイ
bis2回 + cuit焼いたものという意味。

 クッキー
ビスケットの中でも特に手作りっぽい見た目で、糖分や脂肪分が多いもののことだ。

(1) 「手づくり風」の外観を有し、糖分及び脂肪 分の合計が重量百分比で40パーセント以上のも ので、嗜好に応じ、卵製品、乳製品、ナッツ、乾 果、蜂蜜等により製品の特徴付けを行って風味 よく焼きあげたもの
(2) その他、全国ビスケット公正取引協議会(以 下「公正取引協議会」という。)の承認を得たもの

ビスケット類の表示に関する公正競争規約及び同施行規則
一般社団法人 全国ビスケット協会

cookieクッキーの語源はオランダ語のkoekjeクオキエ
クッキーの原型自体は昔からあったようだが、現代の甘いお菓子っぽいクッキーはわりと近年出来上がったもの。
アメリカがヨーロッパ人によって発見され、入植が進む中で、各国の食文化が混ざり合って成立したもの。

だからイギリスでは、日本のクッキーも「ビスケット」なのに対し、アメリカでは、日本のビスケットもクッキーも一緒くたに「クッキー」と呼ばれている。アメリカで言う「ビスケット」は、日本のケンタッキーで出てくるビスケットに近い。

図:左がアメリカ式、右がイギリス式のビスケット
左のやつ、ケンタッキーで見るよね
出典:Lou Sander, Public domain, via Wikimedia Commons

シャベルとスコップの違い

これが結構ややこしい。JIS規格での定義はさておき、地域で呼び名に差があるのだ。

 シャベル
JIS規格では、土砂や雪をすくい上げることができるスプーン状のものの中でも、「上部が平らで足をかけて押せるもの(ショベルとシャベルで同一)」。
発音は英語のshovelシャベルに由来する。

 スコップ
JIS規格では、土砂や雪をすくい上げることができるスプーン状のものの中でも、「足をかけられないもの」。
発音はオランダ語のschopスホープに由来する。

ただ一般にはJIS規格など関係なく、大型か小型かで呼び分けられていることが多く、しかも地域でどちらをシャベルでどちらをスコップと呼ぶかがまちまちなようだ。

西日本では大型の物を「シャベル」・小型の物を「スコップ」と呼ぶが、東日本では逆に小型の物を「シャベル」・大型の物を「スコップ」と呼ぶとされるらしいが、本当だろうか?
(筆者は東日本出身だが、小型のものをスコップだと思っていた)

おはぎとぼたもちの違い

ぶっちゃけ同じものだよね。どちらも、このようなもち米(もしくはもち米+うるち米)を丸めたものにあんこをまぶした和菓子だ。

図:おはぎでありぼたもち
出典:Tomomarusan, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

 おはぎ(御萩)
萩は秋の七草に含まれている通り、秋の植物。
一説には、同じ和菓子を季節によって呼び分て、秋はおはぎと呼んでいたのでは?という。

 ぼたもち(牡丹餅)
牡丹は一般的には春に咲く花。そのため、秋におはぎと呼ぶのに対し、春にはぼたもちと呼んでいたのでは?という説がある。

ただおはぎとぼたもちの違いは他にも諸説あるうえに、近年は使い分けがどんどん曖昧になっている。
(おはぎもぼたもちも、年中見かける名称)

ドミグラスソースとデミグラスソースの違い

図:デミグラスソース(なぜか作りかけ)
出典:rainy_bird, CC BY-SA 2.1 JP, via Wikimedia Commons

物としては完全に同一のもの。上の写真のような茶色いソースだ。
農林水産省にがっつり説明があったので、それをまとめた。

ドミグラスソース」とは、西洋料理の基本的なソースであり、褐色系ソースの一つです。「ドゥミグラスソース」、「デミグラスソース」などとも言われています。

「ドミグラスソース」とは、どのようなソースですか。:農林水産省

 ドミグラスソース
demiglaceをフランス語風に発音すると、demiの部分が「ドゥミ」とか「ドミ」みたいな発音になる。

 デミグラスソース
demiglaceを英語風に発音すると、demiが「デミ」の発音になる。

要するに、フランス語として受け取るか、英語として受け取るかの違いだ。
このソース自体は主にフランス料理で古典的によく用いられていたもの。

結論

すべて身近なもので、おはぎとぼたもちあたりは、その違いって何?というのがたまに話題になっている気がする。
だが、この中だとビスケットとクッキーの違いは特に興味をひかれた。
現代的クッキーはヨーロッパ人の食文化が混ざってアメリカで成立したから、アメリカではビスケット的なものはすべてクッキー扱いになる、というのはアメリカ成立の歴史を学ぶことにもなる。
おそらく久延くえ 鳶彦とびひこもこういった点に面白さを感じたのかな、という追体験をできた気がした。

―――

よろしければスキボタン(♡)タップ・コメント・シェアしていただけますと幸いです。
他にもSound Horizonの楽曲考察記事を書いています。

絵馬に願ひを!関連記事:
【SH考察:016】絵馬に願ひを!秋津皇国を現実と照合してみた
【SH考察:017】絵馬に願ひを!登場人物の名の由来
【SH考察:025】陽葦火山神社の歴史に関わったであろう廃仏毀釈とは
【SH考察:026】絵馬に願ひを!の中に見られる日本神話のオマージュ
【SH考察:027】絵馬に願ひを!と三種の神器
【SH考察:028】宮比と犬彦の《結末に至らない》ルートは同一時系列である説
【SH考察:031】久延鳶彦の記憶を追う(後編:取材ネタ)
【SH考察:032】姫子の願いを伝える祝詞の現代語訳
【SH考察:033】秋津を左右する神託の解釈
【SH考察:034】絵馬に願ひを!に関するアレコレ(言葉の使い方編)
【SH考察:035】絵馬に願ひを!に関するアレコレ(二人の那美編)
【SH考察:036】絵馬に願ひを!に関するアレコレ(猿田 犬彦編)
【SH考察:037】絵馬に願ひを!に関するアレコレ(天野 宮比編)
【SH考察:038】月人の"親切"から見る登場人物の死因と月人の人間性
【SH考察:039】絵馬に願ひを!に関するアレコレ(天野 御影編)
【SH考察:040】絵馬に願ひを!に関するアレコレ(八島 知美編)
【SH考察:043】二人存在する那美と二人存在するかわからない那岐
【SH考察:045】秋津国はなぜCuegeneなのか

更新履歴

2023/06/21 初稿

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?