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【SH考察:027】絵馬に願ひを!と三種の神器

Sound Horizonの『絵馬に願ひを!』には、現実の日本神話に登場する三種の神器のようなものが登場する。
そこで、神器自体とそれに関わる神の情報から、『絵馬に願ひを!』にどのような影響を与えているのかを確認した。


対象曲

  • 7.5th or 8.5th Story 絵馬に願ひを!全曲

考察

三種の神器とは

図:三種の神器のイメージ図
出典:菊竹若狭, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

天照大御神アマテラスオオミカミが孫の邇邇芸命ニニギノミコトに対して、葦原中国あしはらのなかつくにに降りる(これを天孫降臨てんそんこうりんという)際に授けた、八咫鏡やたのかがみ草薙剣くさなぎのつるぎ八尺瓊勾玉やさかにのまがたまという3種類の宝物。

 八咫鏡やたのかがみ
名前の通り鏡。形は円形。
あた」は長さの単位だったため、「八咫」のサイズ感の鏡だったか、単に「とにかく大きい」という意味のどちらか。どちらにせよそのまんまのネーミング。
神話では、天津麻羅アマツマラ伊斯許理度売命イシコリドメノミコトが作ったとされる。

 草薙剣くさなぎのつるぎ
名前の通り剣。ちなみに刀は刃が片側、剣は両側。これは剣なので両刃。
神話では、須佐之男命スサノオノミコトがヤマタノオロチを対峙した際に、その尾から見つけ、後に天照大御神アマテラスオオミカミに献上したとされる。
草薙剣くさなぎのつるぎという呼び方は古事記での表現に即している。天叢雲剣あめのむらくものつるぎとも呼ばれるが、これは日本書紀に登場する表現。
名前の由来は、草を薙ぐ(切って払う)ことで野に放たれた火を払ったからとか、クサい蛇(ナギに蛇の意がある)から出てきたからとか諸説ある。

 八尺瓊勾玉やさかにのまがたま
大きな勾玉、もしくは長い緒に繋がれた勾玉。
さか/しゃく」もまた長さの単位だったため、「八尺」のサイズ感だったか、単に「とにかく大きい」という意味のどちらか。
」は美しい玉や赤色の玉のことなので、美しい赤い大きな勾玉であることが推測できる。
神話では、玉祖命タマノオヤノミコトが作ったとされる。

絵馬に願ひを!では、ジャケ絵の中央、杵瀨きせ みことの正面に3つまとめて置かれている。曲中では『私/我が繋ぐは新しき神話』に登場する。
鏡が地面に置かれ、その後ろに剣が立っており、そのつかあたりから紐に繋がれた勾玉が下がっている。

神器を作った/見つけた神と絵馬に願ひを!との関連性

日本神話では前述の通り、神器を作ったり見つけたりした神は以下の通り。

  • 八咫鏡やたのかがみ  :天津麻羅アマツマラ伊斯許理度売命イシコリドメノミコト

  • 草薙剣くさなぎのつるぎ :須佐之男命スサノオノミコト

  • 八尺瓊勾玉やさかにのまがたま玉祖命タマノオヤノミコト

このうち絵馬に願ひを!では、伊斯許理度売命イシコリドメノミコトの名を模している八石やついし 許理こりが登場している。
しかし八石やついし 許理こりは作中は一介の女子高生で、神器とは関りがない。

神器に添えられた神三柱と絵馬に願ひを!との関連性

日本神話では天孫降臨の際に、天照大御神アマテラスオオミカミは三種の神器に神を三柱添えた。
(ちなみに人間を一人ひとり二人ふたりと数えるように、神は一柱ひとはしら二柱ふたはしらと数える)

  • 思金神オモイカネノカミ

  • 天手力男神アメノタヂカラオノカミ

  • 天石門別神アマノイワトワケノカミ(別名:櫛石窓神クシイワマドノカミ

このうち絵馬に願ひを!では、天手力男神アメノタヂカラオノカミ天石門別神アマノイワトワケノカミの二柱の名を模している天野あめの ちから天野あめの 石窓いわまどが登場している。
ただやはり両者とも神器とは関りがない。

結論

絵馬に願ひを!では、三種の神器と関連性の強い神の名前を模した登場人物が複数人登場する。
しかし、神器とかかわる描写がほとんどない。コンサートでは『我/私が繋ぐは新しき神話』で登場したものの、それ以外ではまったく登場しなかった。

また、名前を出した登場人物同士で見ても、同じ場面に登場することはなく、関係性がほとんどないように見える。
天野あめの ちから天野あめの 石窓いわまどは血縁関係があるようだが、両者ともに同時に登場するシーンがない)

以上の点から、作中で登場する神器と八石やついし 許理こり天野あめの ちから天野あめの 石窓いわまどは、神話の世界とは異なり、さほど関係を気にしなくても良さそうだ。

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他にもSound Horizonの楽曲考察記事を書いています。

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更新履歴

2023/06/16 初稿

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